プロローグ「ラドリア湖編」

 広大な海を舞台に繰り広げられた“魔魚討伐”から、幾日か――。

 無事にエルダ港の危機を救い、漁村の人々に感謝されながらも、岸井 守(きしい まもる)たちは港を後にして再び旅へと踏み出した。ガーランの体調も戻り、リーリアは相変わらず穏やかな笑みを湛え、そして守は“釣りバカ魂”をさらに燃え上がらせている。

 目的地はギルドの本部が置かれた都市──途中の宿場町を経由しながら馬車と徒歩を組み合わせて向かう道のりだ。道中ではマリナや漁師仲間の想いを胸に、新たな出会いや依頼が待ち構えている。


 しかし、彼らはまだ知らない。

 黒い魔石、黒装束の謎、そして各地に棲む凶暴な魔魚――この世界の暗部に根ざした災厄が、ゆっくりと牙を研ぎ、次なる舞台を用意していることを。

 守のチート釣具はその胎動を察するように、旅路のさなかで小さく輝きを帯び始める。果たして、彼らを待ち受けるのはさらなる深淵か、それとも新たなる釣りのロマンか――。

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