第27話

 目を覚ますと、隣で寝ていたはずの葵がいなくなっていたのだ。

 もう日が高い。いくら休日でも寝過ぎたか。そう思って伸びをする。葵はもう起きて、きっとお昼の用意をしているころだ。今日は葵も休みの日のはずだった。

 服を着て、部屋を出る。台所に葵がいるかと覗いてみたら、そこには母白妙だけが立ち昼食の準備をしていた。

「母さん、おはよう」

「あら、碧人。もうおはようの時間じゃありませんよ。あなた、いくら夫婦でも少しは落ち着きなさい」

「そんなこと、母さんに言われる筋合いじゃないでしょ」

「そうですけれど、こんな時間まで葵さんが起きて来れないではないの」

 コップに水をくもうとしたが、碧人は思わず母の顔を見直した。

「葵が、起きてない?」

 不思議に思って家じゅうを探しまわってみたが、葵の姿はどこにもない。だんだんと不安になってきて、二人の寝室に戻って葵の姿がないか確認する。やはりいない。

 隠れているのか。でもそんなことをする必要がどこにある。

 碧人は押入れのふすまを開けた。

 そこには葵の持ち物や洋服が入っていたはずだった。碧人の持ち物は子供のころから使っていた部屋に置いてある。

 開けて、愕然とした。

 中身がない。葵の持ち物が何も残っていない。

 そこにはただ、封筒が一つ、置いてあるだけだった。

 どういうことだ。答えがほしくて、碧人は封筒の封を切った。指が震えている。何かとても嫌なものが入っているような予感がした。

 入っていたのは、離婚届だった。

 すでに葵のサインと捺印が入っている。葵の文字に間違いなかった。

 もう一度全ての部屋を確認する。

 葵、葵、葵。

 呼びかけても誰も返事をしなかった。

 □

 署名が入った離婚届を見た両親も驚いていた。葵は、碧人の両親と良好な関係を持っていた。少なくとも碧人や両親はそう思っていた。

 滝人も葵がいなくなったことに不安になっていた。だが、碧人は何も言えない。

 葵がいなくなって三日ほどは冗談だと思って街中を探し回った。

葵がいない。街のどこにもいない。

 そばにいない。

 一緒にいるだけで幸せだった。

突然からっぽになったようだった。

 葵が勤めていた病院に行ってみると、もう一ヶ月も前に退職したということだった。

 嫌われた覚えがない。金品がなくなったわけでもない。

 何かきっと、理由があるんだ。

 そう考えて無理やり自分を納得させる。だが、その理由を聞かなくては、葵と別れることなどできない。離婚届は一番目使わない机の引出しにしまった。

 それからは仕事の休みを使って、葵を探す日々が続く。葵の写真を片手に、近くの町を探した。

 五年が過ぎた。もうすぐ冬に入ろうという、木枯らしの吹く日。もう諦めようか、諦めてたまるか、そんな気持ちになっていた。

 そのときは寒さもあって、どこから探そうか迷っていた。どうせなら店に入って目撃情報を聞くのが一番いい。家々を回るのはそれからだ。不審な顔をされるのは辛いから、少しでもその時間を遅らせたい。適当なパーキングに車を止めて、飲食店に入ろうとした。昼過ぎで、ちょうど腹も減ってきた。

 大きな道路を歩き、道なりにいくつもファーストフードやファミレスがあるが、特に食べたいものもない。

 風が冷たい。マフラーをしてくればよかったと思いながらコートの前をかきあわせる。

 前から、四、五人の子どもが歩いて来る。それぞれ年齢はバラバラだが、小学校低学年から幼稚園生以下ほどだろう。一人がサッカーボールを持っていて、みんなで遊びに行くようだ。寒さなど感じていないかのような薄着で、それなのにみんな元気いっぱいだ。

 すれ違う瞬間、碧人は目を疑った。

 滝人がいる。

そう思うほど小さい頃の滝人によく似た少年が、そばを通りかかった。滝人ではない。滝人はもう十四歳の中学生だ。少年はまだ幼く、集団の中でも一番小さいようだ。

 幼いころの滝人によく似た少年。しかし、彼の瞳はなぜか青空のように青い。

 後ろ姿を呆然と眺めていると、不意に少年が立ち止まって振り返った。

 青い瞳と視線がぶつかった。ちょっとつり目の、可愛らしい顔立ち。群を抜く美貌。

 一緒にいた少年たちも立ち止まって、少年に声をかける。

「どうしたんだよー、アオトー」

「アオト、早くサッカーやりに行くぞ」

「あ、まって!」

 アオトと呼ばれた少年は、遅れたぶんを駆け、仲間に追いつく。

「…アオト」

 その名前が口から零れおちる。

 アオトのアオは、葵の「アオ」。

 アオトのトは、碧人の「人」。

 確信があった。

 あの子は俺の子どもだ。


 そのまま少年たちの後をつけた。小さな公園に着いた彼らはさっそくサッカーを始めた。アオトは体が小さいせいで、なかなかボールに追いつけない。しかし年長の少年が思いやってパスを回してやる。アオトは嬉しそうにボールを蹴り、またパスを回す。

 碧人は公園の場所を覚えて、パーキングの場所に戻る。遮るものがないところでは、監視することが難しい。変質者と思われて少年たちに警察に駆け込まれても困る。

 公園の近くに車を駐車し、たまに少年たちがまだサッカーをしているか確認する。他に入口があっては大変だ。アオトを見失ってしまう。

夕日が落ちかかる四時過ぎ、少年たちが公園から出てきた。アオトもその中に混ざっている。

 碧人は車を降り、少年たちを尾行した。車はどうぞレッカーして下さい状態だが仕方がない。

 少年たちに気づかれず、何とか目的地までたどり着いた。

 たどり着いた先は、古びたアパートだった。少年たちは、「またなー」と挨拶を交わした後、それぞれ違う部屋に入ってゆく。アオトは二階への階段を上り始めた。

 ところが、アオトはふっと振り返った。塀の陰から見守っていたが、目が合った。アオトはたんたんと階段を下りてくる。

 尾行などしておきながら、いまさら碧人は怖くなった。しかし逃げるわけにはいかないだろう。逃げればアオトに不信感を与えることになる。

 アオトは碧人の前に立った。

「ねぇ、おじさん、ずっと僕のこと見てたでしょ?」

「…うん」

 碧人は自分の腰よりも背の低いアオトの目線を合わせるためにしゃがんだ。

「どうして? おじさんは、だあれ?」

「君の名前を、教えてくれないかな?」

「え、でも、お母さんが知らない人には教えちゃダメって言ってたよ」

 アオトは困ったように眉を寄せた。強引に疑問を変えられたことに気づいていない。

「じゃあ、お母さんの名前は? それも教えられない?」

「え? う~ん、それは…」

「お願い、どうしても知りたいんだ」

 一度うつむいてしまったアオトだが、顔を上げて言った。

「僕は、かんだあおと。お母さんは、かんだあおい」

「お父さんは?」

「お父さんは…いないよ」

 まるでそれが恥ずかしいというように、アオトは顔をしかめた。

「ねぇ、おじさんの名前はなんていうの?」

「…次に会った時に教えるよ。今日、俺に会ったこと、お母さんには言わないでくれるかな」

「う~ん、いいよ。でも、僕の知らないうちにお母さんのこと、どこかに連れていっちゃいやだよ」

「絶対にそんなことしないよ」

「ぜったいだよ! 約束!」

 アオトは小さい小指を突き付けてきた。碧人はそれに自分の指を絡めた。

 愛おしい。

 そう思った。

 □

 次の日、碧人は無理やり休みをねじ込んで、再びアオトと葵の住むアパートに向かった。すぐに行動しなければ、葵がどこかに行ってしまう。時間を与えないことが肝心だった。

 アパートの近くに車を止め、しばらく様子をうかがってから車を降りた。ちょうどその時、ある部屋から少年が一人サッカーボールを持って出てきた。彼が他の部屋のドアを叩くと、次々と少年たちが顔を出し、昨日と同じ面子がそろった。もちろんアオトもその中に含まれる。

「あっ、昨日のおじさん!」

 アオトが碧人に気がついた。近くまで寄ってくると、こんにちはと挨拶をされた。

「こんにちは。今日もサッカーかい?」

「うん。サッカーができると幼稚園でもてるんだって。だからいっぱい練習するの」

「そんな理由で練習しなくても、アオトはもてると思うぞ。ま、頑張れよ。ところで今日、お母さんはお家にいる?」

「うん、いるよ。どうして?」

「ちょっとお母さんにお話があるんだ」

「…お母さんのこと、つれていかないでね」

「昨日約束したじゃないか。大丈夫だよ」

「ほんとう? でもお母さん美人だから…」

 アオトが不安そうな目で見つめてくる。

「アオト、早く来いよ!」

「あ、うん」

 少年たちから声がかかり、アオトは慌てて駆けて行く。

「知らない人と話しちゃだめだぞ」

「そうそう、アオトはかわいいから、すぐにユーカイされちゃうだろ」

 そんなことをアオトに教え込みながら、少年たちは昨日と同じ公園の方向に走って行く。

 その小さな背中を見送りながら碧人は、よし、と呟いた。

 錆びついた階段を上り、昨日アオトが入っていった部屋の前で立ち止まる。インターフォンなどはついていない、今どき珍しいボロアパートだ。

 自分を落ち着かせるように息を吐き、躊躇しつつもドアを叩いた。

 中から「はーい」という声がする。懐かしい、葵の声だ。胸がどきりと鳴った。

 かちゃりと鍵の開く音。内側からドアが開いた。

 葵は笑顔で顔を出した。

「やあ、葵」

 笑顔が徐々に固まってゆく。大きな瞳がさらに見開かれた。

「…へき、と、さん…!」

 葵は呟き、その場で腰を抜かした。


 蒼人がお腹にいることがわかったのは、あなたのところを出て行く二ヶ月前のことです。その時にはもう、三ヵ月でした。そして検査をして、わかってしまったんです。私も、感染していることに。言えなかったんです。碧人さんを傷つけたくなくて、私が碧人さんを傷つけることなんて許せなかった。それだけです。それだけなんです。


 小さなテーブルをはさんで、葵はそんなことを言った。俯いて嗚咽を我慢する彼女は、少し痩せたように見えた。

 出されたお茶を一口飲んで、カップを置く。

「本当にそれだけ?」

「…はい」

「本当に、それだけ? 俺が、嫌いになったんじゃないの?」

「違います! 私は今だって碧人さんのことが大好きです。でも、一度離れてしまったら、戻るなんて考えませんでした。碧人さんも私を愛してくれたから、碧人さんが、自分が愛する人を殺してしまうなんて考えてしまうんじゃないかと思って」

 ぐすっと鼻をすする音がした。しかし葵は泣いていない。

「実家に一度帰ったこともあったんですけれど、事情を話したら子供を下ろしなさいって言われて。怖くなって逃げました。だから一人でも蒼人を産んで、育てていこうって思ったんです。幸い、看護師ですから、お金にはあまり困りませんでした。…私、馬鹿ですね。もしちゃんと碧人さんに相談していたら、傷つけはしてももっと一緒にいられたのに。でも自分を責める碧人さんなんて見たくなくて。もしかしたら私の病気の原因が蒼人だなんて言われたらと思いもしたんです。実際に、父と母はそう言いました。そんな子供を作ったから、病気が移ったんだって。やっぱりお前はあんな男と結婚するべきじゃなかったなんて言われたら、私も頭にきて、それ以来実家に帰ったこともありません」

 葵は淡々と語った。それがまるで義務かのように。まるで他人になってしまったように。

「ねぇ、碧人さん、どうして離婚届を提出してくれなかったんですか? 勝手に出て行った私のことなんて、切ってくれてかまわなかったのに」

「理由が知りたかっただけだ。だからずっと探した。何か理由があるんだって、それだけを思って。葵にまた会いたかった。さっき葵が言った理由で出ていったのなら、俺が、葵を嫌いになったと思う? 理由を聞いた今でも、やっぱり葵が好きだよ」

 葵が顔を上げた。その瞬間、葵の両眼から涙が落ちた。葵もそれに気づいて、すぐに涙を拭う。

「…あ、ごめ…」

「葵、泣かなくてもいいんだよ。ちゃんと理由はわかったから」

「違う、ごめんなさい。やっぱりそれだけじゃないんです」

「え?」

「私、あのまま碧人さんのそばにいて、碧人さんを嫌いになりたくなかったんです」

 葵の頬に触れようとした手が、思わず固まった。

「碧人さんの病気なんて些細なことだなんて言っておきながら、恐怖に負けて、碧人さんを罵ってしまうかもしれなかった。もっと酷いやり方で、碧人さんを傷つけてしまうかもしれなかった。そうならなかったかもしれないけれど、ならない保証なんてどこにもなかった。口では悪いのは病気だなんて言いながら、心の中で碧人さんを嫌いになったかもしれなかった。そんなの嫌。だって私は碧人さんが好きなんです。出会った時よりも、ずっとずっとあなたが好き。誰かを好きになって碧人さんから離れたわけじゃない。碧人さん以外の人にすべてを許すくらいなら、死んだ方がまし。そう思うくらいに碧人さんが好きなのに、嫌いになんてなりたくなかった」

 また葵の頬に涙がつたう。碧人は葵のそばに寄って、彼女の体を抱きしめた。

 何と言われても、この人が好きだ。病気にさせてしまったのに、ずうずうしくもやっぱり好きだった。

「葵、一緒にいてくれ。葵がいないなんて、嫌なんだ。それに、蒼人は俺の子なんだろう。あの子の父親っていう名前を、他の誰にも渡したくないんだ。葵の夫も、やめたくない。他人になんてなりたくないんだよ」

 葵の涙が止まらない。

「…いいんですか。私は一度、碧人さんを裏切って…」

「裏切られたなんて思ってない。もし葵が、俺と一緒にいるのが嫌だというのなら、諦めるけれど」

「嫌だなんて、思いません。私、私は…」

 碧人さんが大好きです。

 葵ははっきりと呟いた。


「お母さーん、ただいまー」

 そんな可愛らしい声と、こんこんとドアを叩く音。

 二人とも、それではっと目を覚ました。

「はっ、今何時っ?」

「四時半」

 腕時計でそれを確認すると、葵は悲鳴を上げた。

「お母さーん? どうしたの、いないの?」

 外からはそんな不安げな声がする。

「へ、碧人さん、早くちゃんとした格好して下さい!」

「うん、わかってるわかってる」

 二人で急いで服を整え、葵は慌てて玄関の方へ行った。

 蒼人の「お母さん」と呼ぶ声は、悲鳴に近くなっている。

「蒼人、おかえり」

 玄関のドアを開けると、勢いよく蒼人が葵に飛びつくのが見えた。

「ただいまっ! ねぇ、お母さん、今日僕ちゃんとパスまわすことできたんだ! ひー君にほめられちゃった」

「そう、頑張ったのね」

「うん! 僕おなかすいた」

「そ、それなんだけど…」

「あっ、おじさん!」

 蒼人がテーブルの前に座っている碧人に気がついた。靴を脱ぐと母の横をすり抜け、早足で駆けて来る。

「僕、おじさんの名前きくの忘れてた。次に教えてくれるっていってたのに」

 碧人の足の近くに蒼人はチョンと座った。

「俺はね、神田碧人っていうんだ」

「かんだ、へきと? へきと…あおと… ねぇ、おじさん、僕のお父さん?」

「えっ? どうしてそう思うの?」

「お母さんね、僕にこっそり写真見てるときあるの。僕、気になってこっそり見てみたの。そしたらね、おじさんと僕にそっくりの男の子がうつってたの。だれなのかわからなかったけど、おじさん見たとき、写真の人だと思ったの」

 そっと葵を振り返ると、葵は顔を真っ赤にしていた。

「こら! 蒼人! そういうこと言わないの!」

「だってぇ。ねぇ、お父さんなの? 僕にもちゃんと、お父さんがいたの?」

 碧人は蒼人を膝に乗せ、抱きしめた。

「そう、そうだよ。俺は、蒼人のお父さんだ」

「何で今まで、いっしょにいなかったの? 僕が嫌いだったの?」

「いいや、嫌いじゃないよ。大好きだ。ただ、難しい事情があるんだ。蒼人がもっと大きくなって、その事情が理解できるようになったら、ちゃんと教えるからな」

「うん! じゃあ僕、ひー君たちにお父さんができたって言って来なくちゃ」

 いそいそと立ち上がろうとする蒼人。

「いやいやいや、今はいい、今はダメ!」

 子どもの口からそんなことを言われても、大きな誤解を生むだけだ。

 碧人を葵は全力で蒼人を引き止め、何とか思いとどまらせた。

 その後は三人でファミレスでご飯を食べた。

 今度はお兄ちゃんを連れてくる。

 そう言うと、蒼人は目を輝かせて喜んだ。

 □

 葵が神田家に戻り、蒼人が初めて神田家に訪れたのは、冬が終わって春になろうという、まだ肌寒い季節だった。蒼人は幼稚園も家の近くの幼稚園に通うことになって、それまでの友達と別れることとなってしまったが、こちらにも友達がいないわけではない。葵は両親とは顔を合わせていないが、妹とはよく連絡を取り合っていて、妹の息子である総一郎と蒼人は同じ年でもあってか親友の様に仲が良かった。

 次に来るときはお兄ちゃんを連れてくると約束したが、結局準備や滝人の都合が悪いことが重なって、蒼人はまだ兄と顔を合わせたことがない。

 家に着くと、家屋から滝人が飛び出してきた。

「母さん!」

 泣きそうな顔で叫んだ滝人は、葵に抱きついた。すると、まだまだ頼りない細い肩が震え出す。

「う…あ、あいた、かったっ! 母さん」

「ごめんね、滝人君。おっきくなったね。私の身長越えるほど、放っておいて、ごめんね」

 葵が滝人の頭をなでる。滝人はぶんぶんと頭を振った。

「いいんだ、ちゃんと、理由、知ってるから。また、会えたから」

 一度母を亡くした滝人だ。二度目に母がいなくなったことを知ったとき、何を思っただろう。

 碧人は後部座席から蒼人をおろして抱き上げる。

「滝人、俺の前で葵に抱きつくとはいい度胸してるな」

「いいじゃん、久しぶりに会ったんだから!」

「滝人はマザコンだって、薫ちゃんに言いつけちゃうぞ」

「それはやめて! …って、その子?」

 滝人が蒼人を見た。碧人は蒼人を地面に下ろして滝人に近づける。滝人は葵から離れて初めて会う弟に視線を合わせようとしゃがんだが、蒼人は母の足の陰に隠れてしまった。

「こら、ちゃんと挨拶しなさい」

 母に言われて、蒼人はもじもじしながら口を開いた。

「あ、あおと、です」

「俺は滝人。蒼人のお兄ちゃんだ」

 蒼人がうんうん頷く。こんなに人見知りする子ではなかったはずだが、滝人に対してはなぜか人見知りが激しい。

「蒼人、こっち来いよ。一緒にゲームやろう。あ、その前におばあちゃんとおじいちゃんに挨拶だな」

「…うん」

「父さん、俺が蒼人のことおばあちゃんのとこに連れて行くよ」

 もじもじしつつも蒼人は滝人に手を取られると、一緒に家の中に入っていった。

「よかった、滝人と蒼人は仲良くできそうだ。な、葵」

 肩を抱き寄せると、葵はちょっと慌てたように「ええ、そうですね」と返事をした。

「どうかしたか?」

「いえ、何でもないです」

 葵が昔と同じく幸せそうに微笑んだ。

 □

 葵が倒れたのは、家に帰って来てから三年目の夏だった。

 最初に葵の様子がおかしいことに気がついたのは、母だった。朝からどことなく具合が悪そうだったが、無理に家事を行って、碧人が仕事に行っている時に酷い貧血を引き起こして倒れたのだ。

 病院に駆けつけるまでは、大したことはないだろうと思っていた。そう思おうとした。

 しかし葵は一般病棟ではなく、ICUに入っていた。輸血を受けている葵に、意識はなかった。

 小さな部屋で葵の状態を聞くと、医者は悔しそうにうつむいた。

「先ほど、血液検査をしたところ、赤血球捕食細菌が爆発的に増えていました。赤血球捕食細菌は患者に体力があるうちは程よい数を保つようになっているのですが、神田さんの場合、赤血球値が異常に下がって…」

「大丈夫なんですよね」

 医者の言葉を切って、碧人は聞いた。

「葵は、死にませんよね」

 医者は言葉に詰まった。

「…残念ですが、回復の見込みは薄いかと。神田さんも知っているでしょう、生まれた時から免疫をつけている患者とそうでない患者は寿命が全く違うと」

 体から力が抜けた。椅子に座っていなければ、床に座り込んでいたところだ。

 奥さんの具合がちょっと悪いみたいで、と仕事場から抜けてきたときには予想もしなかった宣告だった。

 もって半年でしょう。

 医師の声が遠くで聞こえた。

 この気持は、なんというのだろう。

 こんなのは、こんな気持ちは、知らない。


 葵の目が覚めるまでそばに付き添いたかったが、ICUには家族でもなかなか入ることができない。葵の目が覚めて数日するとようやく状態が安定した。ベッドも一般病棟に移された。

 碧人はずっと病院に泊まりっぱなしだった。仕事に行かなくてはと思ったが、連絡を取ると従業員全員の意見の一致で碧人はしばらく休んでもよいことになった。

 葵の病室は個室にしてもらった。病室に行くと、葵は起き上がって頭の横で髪を結んでいるところだった。近くには看護師がいて、体を拭いたところだったのだろう。

「あら、おはようございますー。神田さん、旦那さんが来てくれましたよ」

「おはようございます」

「碧人さん! あーっ、また髪が…」

 髪を結んでいる途中で手を放してしまったために、長い髪はばさりと背中に落ちてしまった。葵はあまり髪を結ぶのが得意ではない。葵は結局看護婦に櫛とゴムを渡して髪を結んでもらった。

「すみません、いつも…」

「いいえー、旦那さんの前でぼさぼさの髪でいるわけにいかないじゃないですかー。いいですよね、かっこいい旦那さんでー。うらやましいです」

 親しみやすい口調の看護師がうふふと笑った。若い彼女は葵も看護師だと聞いて、ときに「先輩」など呼んで親しげに話しこんでいたりする。看護師は話が終わるとすぐに病室を出ていった。碧人に気を遣ったのだろうか。

「碧人さん、毎日来なくてもいいんですよ? 滝人も蒼人も、面倒見てくれないと困っちゃいます。母がいないときは」

「母さんも父さんもいるし、滝人は勉強と薫ちゃんとのデートで忙しいし、蒼人は同じクラスのさらちゃんに追いかけられる日々で大変みたいだし。七歳にしてモテモテとは、さすが俺の息子」

「でもきっと父親に似て恋愛下手なんでしょうね。碧人さんの息子ですから」

「…恋愛下手で悪かったね」

「下手じゃなきゃ困ります。私に知られずに浮気し放題じゃないですか」

「浮気なんてしないよ!」

「私が死んでも?」

 葵がなんともなく聞くものだから、碧人は思わず「当り前だよ」と答えるところだった。

「縁起でもないこと、言わないで。葵だけが俺の奥さんだよ」

 おどけようとした笑顔は、悔しくも引きつってしまった。

「はぐらかさないで下さい。私の寿命が少ないなら、知りたいんです。残された時間で、やらなくちゃ死ねないことがあるんです」

「でも…」

「ドクターもナースも教えてくれなくて。インフォームド・コンセントっていう言葉を知らないんですかね?」

 葵は唇を尖らせた。碧人は葵を引き寄せて、尖った唇に自分の唇を押しつけた。

「聞いたら、絶望するよ」

 唇を離し、そっと葵の顔を覗き込む。そこには意思の強そうな瞳があった。彼女はこんな目をしていただろうか。命の限りを予期して、強くなったのか。

「俺は絶望したよ」

 葵の命の期限を話すなんて、碧人には辛すぎることだった。葵にも自分にも嘘をつきたかった。日本人の平均寿命をまっとうして、ずっと先の未来で死ぬまで、二人は一緒に生きられるのだと。ずっとずっと、幸せだと。

「それでも。私は碧人さんと、滝人と蒼人と、お義母さんとお義父さんと一緒にいたい。こんなところで、時間を無駄にしたくないんです」

「そんなこと、言わないで。まるで葵が死ぬみたいじゃないか」

 みたいではない。葵はきっと、碧人の見ている前で死ぬのだ。碧人はそれを知っている。

 葵が頬に触れてきた。いつの間にか、碧人は泣いていた。

「出会わなければ、よかったなぁ。そうすれば、葵はこんなことにはならなかった」

「私は碧人さんに会えてよかったですよ。だってこんなに幸せだもの」

 ゆっくりと葵は微笑んだ。

 本当に幸せそうに。

 碧人は細い体を抱き寄せた。

 彼女の耳元で声を絞り出した。

「先生が言ったのは…もって半年だって」

 □

 退院許可が出て葵と一緒に家に帰った。

 葵は蒼人と滝人に自分が近い未来に死んでしまうことをきちんと説明した。滝人は衝撃を受けた顔をしていたが、蒼人はわけがわからないという顔をしていた。人はいずれ死ぬということは知っているが、母親に死が訪れるという実感がわかないのだろう。

 碧人は葵と少しでも一緒にいられるように、マンションを買った。そこで親子四人で暮らすことにした。

 初めは家で十分に家事をこなせていた葵だが、五ヶ月もするとついにベッドから起き上がるのも辛くなり、自発呼吸だけでは酸素の供給が足りずに自宅で酸素療法が行われることとなった。

「やりたくないです」

 自分で酸素ボンベとマスクをチューブで繋ぎながら、葵は唇を尖らせた。

「えっ、どうして」

 葵のネガティブな発言に、食事をテーブルに並べていた碧人は思わず振り返った。葵のベッドはリビングに置いてある。一番日当たりがいい部屋だし、常に一緒にいられる。碧人もそのベッドで寝るのだから、ずっと一緒であることは間違いない。

「酸素療法って、苦しいんだって言う人が多いんですよ。酸素を無理やり入れるわけだから、苦しいのは当たり前なんですけれど」

「でもやらなくちゃ…治療なんだから」

「わかってますよ。ちょっとしたワガママです」

「何でわがまま?」

「だって、碧人さんとすぐにキスできなくなっちゃうじゃないですか」

「…可愛いから、抱きしめてもいいですか?」

「いや~ん、いくら滝人と蒼人が学校だからって~」

「だからこそでしょうが! 今がチャンスでしょうが!」

「今はご飯が優先です。碧人さん、本当に料理上手になりましたよね」

 今日の昼ご飯はミートソーススパゲティ。碧人はマンションに移ってからは葵と一緒に家事をするようになったのだが、自分でもびっくりするほどの才能があった。今ではレシピさえあれば難しい料理だって作ることができてしまう。

 葵の手を取ってベッドから立たせて、テーブルの前に座らせる。食事をしながら、葵は何度も溜息を吐いた。食事が美味しくないということではない。食事するという動作だけでも酸素を消費するために、苦しくなるのだ。結果、溜息やあくびが多くなる。

 こんなふとした時に、罪悪感がつのる。

 碧人は口をもぐもぐしている葵の頬に触れた。

「葵」

「なんですか?」

「ごめん」

 葵はフォークを置いて、碧人の方を向いた。

「そんなこと、言わないで下さい。言ったでしょう、私は幸せなんだって。幸せだったんじゃなくて、幸せなんですよ。可愛い子どもが二人もいて、大好きな人は私を好きでいてくれる。こんな幸せなこと、ありませんよ。まるで奇跡です。私、痴漢に遭った時、碧人さんに助けてって言ってよかったって、今でも思うんです」

「でも俺と出会わなかったら、葵はこんなことにはならなかった。俺じゃない、違う男と出会っていれば、もっともっと長い時間を幸せに生きられた!」

「そうならなかったかもしれません。ただなんとなく好きだなぁって思う人と結婚して、子どもを産んで、やがては夫婦仲も冷めて子どもにも嫌われちゃったりもして。ただおばさんになって、夫はきれいで可愛い女の子と浮気なんてことになって。その逆をいく私は幸せ者だと思いませんか?」

 そんなことを言われれば、碧人に反論の余地はなくなってしまう。

 しかし今伝えられなければ、葵はもうすぐいなくなってしまう。

「でも、葵、俺はもっと葵と一緒にいたかったよ。歳をとっても手なんか繋いじゃって、素敵なおじいちゃんとおばあちゃんなんて呼ばれて、同じ時間を過ごして、それから安らかに死にたかった。葵が死ぬなんて嫌だ。頼むよ、おいて行かないで。死なないでくれよ」

 葵が優しく微笑んだ。

「碧人さんたら、泣き虫」

 白い指が頬に触れてくる。その指の白さまでが悲しい。彼女は死にませんとは言わなかった。

「もっと、気をつけるべきだった。自分が葵を死なせる病気だってこと、もっとちゃんと自覚しておくべきだったのに。感染させるなんて…」

「そんなこと、言っちゃダメです」

 葵がちょっと怒った顔で、両手で頬をはさんでくる。

「それは蒼人を否定する言葉です。碧人さんは蒼人が生まれたことは、嫌でしたか?」

「そんなことっ…あるわけない。蒼人のことは、滝人と同じくらいに愛してる。蒼人を恨んだり、そんなことはないよ。恨んでいるとすれば、俺自身だ。葵が死ぬのは俺のせいだ。俺のせいだ!」

 自分のせいで葵が死ぬ。その事実で押しつぶされてしまいそうだ。

「自分を責めちゃ、だめです。そんな風に自分を責める碧人さんを見たくなくて、私はあなたから離れたんだって言ったでしょう」

「じゃあ、誰を責めればいいんだよ!」

「誰も責めないで。もし責めるなら、死んでしまう私を責めて下さい」

「そんなこと…」

 できるわけがなかった。

 それをわかっている葵は、ちょっと意地悪く笑った。

「大好きです。私に未来をくれた人」

「俺は葵から奪ったんじゃないか。未来なんて、もう、葵には」

「蒼人と滝人が、私の未来です。未来はつながっているんですよ。その未来は、碧人さんと一緒に築いた。あなたとの未来が、私にはあるんです」

「そんな、でも、俺は葵と一緒にいたいよ。一緒に、二人でいる、そんな未来がよかった」

 嗚咽が殺せない。葵がその嗚咽を優しく塞いだ。

 長い口づけ。

 葵が死んだのは、昔に戻ったようなキスをした一ヶ月半後のことだった。

 □

 葵はベッドでぐったりとし、目を開いてぽつぽつと言葉を紡いでは、また深く眠ってしまう。その繰り返しだった。

 碧人はずっと葵のそばにいた。いつも手を繋いで、毎晩一緒に眠った。


 ねえ、ずっと碧人さんが大好きですよ。

 みんなのこと、忘れませんから。

 きっと遠い未来に、また会えます。


 幸せ、です。


 それが葵の最後の言葉だ。

 それを口にした三日後に、葵は死んだ。

 昏睡に陥って、数日間意識のない状態が続いていたというのに、息を引き取る直前にふっと目を覚ました葵は碧人の目を見て、笑った。

 まるで本当に幸せだとでも言っているように。

 そんな風に笑って、葵は死んだ。

 曖昧な微笑みを顔に残して、死んだ。

 碧人をおいて、死んだ。


 独りになってしまった。


「父さん!」

 そんな慌てた言葉のすぐ後に、後ろから羽交い絞めにされた。

 振り返ると、滝人が真っ青な顔で碧人をベランダの柵の上から引きずり下ろした。

「なにやってんだよ!」

「滝人…おかえり」

「お帰りじゃないっ! 今、飛び降りようとしてただろ!」

 滝人と蒼人は葵の意向で、学校を休むことはしていなかった。しかし最近は滝人が蒼人の終業に合わせて学校を早退することにしていた。

 滝人が必死に何かを叫んでいるが、言葉が耳に入ってこない。

 ベッドの上には、葵の冷たい亡骸。

 その近くには蒼人がいる。母の白く冷たい頬に触れ、揺さぶってみるが、葵は目を覚まさない。お母さん、お母さん、と何度も呼びかけるが、返事をしない。朝にはまだ息をしていた母親が、もう目を開けない。

「どうしよう、滝人、蒼人…葵が、死んじゃった。死んじゃったよ、俺を、残して」

 体を引きずるようにして、葵の亡骸のそばに近づく。蒼人がすでに葵の枕元で泣いていた。

 碧人は何度も葵の名を呼んだ。冷たくなった彼女の唇はもう開くことがない。話すことも、触れることも、一緒に同じ幸せを味わうこともできない。

 葵。葵。葵。

 返事をしてよ。

 俺のせいで、死なないで。

 一緒にいさせて。

 幸せは、ずっと続くと思っていた。

 思っていただけだった。

 葵は死んでしまった。

 葵のいない世界では、息をするのも辛かった。

 葵。葵。葵。

 何度呼んでも返事をしない。

 最愛の妻は本当に、碧人の前からいなくなったのだ。

 □

 どんなふうに葵の葬儀が行われたのか、よく覚えていない。覚えているのは、みんなが本当に同情しているという顔で形式的な挨拶だけして、そっとしておいてくれたということだけだ。喪主がそんな様子だったから、かわりに滝人が随分苦労をしたようだった。

 葬儀が終わった後は、ずっとマンションに引きこもりだった。

 葵の香りが残るベッドに横になって、窓から空を眺める日々。

 このまま死んでしまいたい。

 仕事にも行かずぐうたらに毎日を過ごす父親に、一ヶ月もするとついに滝人がブチ切れた。

 父が手を出さないせいで遅々として進まない母の遺品を整理していた時のことだ。

「いい加減にしてよ!」

 と言いつつ、滝人は父をベッドから引きずり下ろした。

「いって! 腰打った!」

 非難がましく言ってみたが、見上げた滝人の瞳は悲しみと怒りに燃えている。

「せめて一ヶ月はそっとしておけって薫さんに言われたからそっとしておいたけどさ、もう言うよ、もう言ってやるよ。母さんがいなくなって、辛いのは父さんだけじゃないんだ。俺も、蒼人だって辛いんだよ。せめて蒼人には、ちゃんと話してあげて。あいつ、母さんが死んだこと、自分のせいだって思ってるんだ。俺じゃ何を言っても嘘くさくなっちゃって…… 蒼人の父親は父さんだけなんだ」

「蒼人…」

 そう言えば、蒼人と最後に話したのはいつだった?

 どのくらい、蒼人を放っておいた?

「蒼人は、どこだ?」

「父さんが落ち着くまで何も聞かないって。まったくいい子だよ。今は部屋にいる」

 碧人は立ち上がり、滝人と蒼人に与えられた部屋に向かった。

 ドアに向かって呼びかける。

「…蒼人」

 そっとドアを開けると、机に向かっていた蒼人が振り返った。

「お父さん! …もう、大丈夫?」

 蒼人が駆け寄ってきて、大きな瞳で心配そうに見つめてくる。

 ああ、なんてことだ。こんな小さな子どもに、碧人は支えられていた。

 まだ小学三年生。まだまだ親に甘えたい年頃の子どもなのに、父が立ち直るまで待っていてくれた。

 碧人は膝を折って、蒼人を抱きしめる。

「ごめんな、蒼人。こんな、情けない父さんで」

「ううん。お母さんは、お父さんにとって、とっても大事だったから、死んじゃって辛かったんでしょ? 涙も出ないくらい、辛いんだって、お兄ちゃんが言ってたよ。僕、大丈夫だから。もう、いっぱい泣いたから。だから…」

 ぐじゅ、と鼻をすする音の後、蒼人の目が押しつけられた肩が熱くなった。

 この子を守らなければいけなかったのに。

 碧人は蒼人の涙が止まるまで、蒼人の頭を撫でていた。

 しばらくして涙が止まってくると、蒼人は体を離して、言った。

「お父さん、聞いてもいい?」

「なんだ?」

 目を拭う蒼人は、葵にそっくりだ。特に目は、葵そのものと言ってもいい。

 愛しい子。

 まだ、守るものがあったじゃないか。

 蒼人と滝人を守る。これからの人生は、きっとそのためにあるんだ。

「…お父さん、どうしてお母さんは死んじゃったの?」

「え…」

 蒼人には、ただ純粋に母の死の原因を問うている表情しかないように見えた。

 とっさに、何も返せなかった。

 葵は碧人が殺したも同然だ。

 それを蒼人に言うのか。

 そんなことを言えば、母親が大好きだったこの子は何を思うだろう。

 葵によく似たその瞳に、憎悪の感情が灯るのか。

 その瞳で、ずっと見つめられるのか。

 蒼人に、嫌われるのか。

 葵と愛し合った証に、葵の未来に、お前などいなければよかったと思われ続けるのか。

「お父さん?」

 蒼人が不安そうな顔で見つめてくる。

 碧人は何とか笑顔を作って、蒼人の頭をなでることしかできなかった。

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