第2話 会社でイヤホン外してみた
「佐竹さん。珍しいですねイヤホンつけてないなんて。何かあったんです?」
彼は仕事中も作業をしているときにはイヤホンをつけていることが大半なためイヤホンを忘れた理由を尋ねる。
「いやー、ちょっと寝坊してしまって、少し急いで準備してたら、ホント偶然に忘れちゃったんですよね。」
「いつも早めに来ているからてっきり忘れものとかしないタイプなのかと思ってました。」
「全然そんなことないですよ。朝は基本的にはバタついちゃうから、1,2本早い電車で来ているんです。最近だと節約のために自炊しようとしても、どうにもうまくいかないしでホトホト困ってまして今日はまたコンビニ弁当です。」
普段喋ることがなく、話しかけるにも集中していて話しづらい彼が軽快に話をしているため、次第に職場のメンバーが集まってきた。
「へぇ、自炊頑張ろうとしてんだ。男飯の本でよかったらあげようか。俺ももらったもんだけど。」
「私、こう見えて昔飲食の経験あるから困ってたら教えてあげられるかも」
「ちょっと遠いところだけどあそこの道の駅の野菜が結構質もよくて、安いんだよ。」
彼を中心として話がひとしきり盛り上がり、本人も有用そうな話を聞けて、とても嬉しそうにしている。
お昼時になり、彼はコンビニでのり弁当を購入しオフィスに戻るためのエレベーターに乗った。
ちょうど利用者も多く、すぐにエレベーターいっぱいに人が乗り彼はぎりぎり階数が押せるところに流れ着きオフィスのある8階のボタンを押した。
「6階お願いします。」
入ってからボタンを押せずにエレベーターの奥に入り込んでしまった男性がそう声を上げた。ボタンの直前に立っている男性は両耳にイヤホンを入れているようで、全く気付いていないようだった。少し体をねじ込むようにして佐竹は6階のボタンを押し、声をかけた男性に向かってオッケーとハンドサインをした。
午後の仕事も終わり、彼は帰宅しようする。
「佐竹さん。今日空いてます?よかったらどこか寄り道してから帰りません?」
「あーっと…。はい、ちょうど少し散歩してから帰ろうかと思っていましたし。ただ、飯とかは…ちょっと金欠なんでまたの機会って感じでいいなら…。」
「やった。ほんのちょっとだけ遠回りしてから帰りましょう。」
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