幼馴染とボクと幼馴染 - 4
講義の後は夕方までまた図書館で時間を潰し――。
「お待たせーっ。ごめんね、遅くなっちゃって」
高校の正門前へと着いた頃に、丁度千穂も校舎から出てきた。
「随分と遅かったんだな? オマエ、部活とかやってたか?」
「ううん、二者面談ってやつ。進路のこととか色々聞かれてたら、長くなっちゃった」
「ああそうか、そういえば、千穂もそんな時期だったな」
普段から遊びまくってるせいであまり意識しないが、コイツ受験生なんだよな。
やっぱり千穂も大学に行くつもりなのだろうか?
「進路っていうと、進学か?」
「そのつもりだよ。できれば竜郎と凛姉と同じ大学に行きたいかな~。すぐ近所だしね」
「……なあ、それ……大丈夫なのか?」
「え? 何が?」
千穂の成績はお世辞にも良いほうだとは言えない。
ボクら幼馴染の学力を高い順に並べると、凛花・ボク・千穂ってところか。
それに対して、うちの大学に入るにはそれなりの学力が必要――真ん中のボクが結構ギリギリだったレベルだ。
だから、千穂はもっと絶望的だと思うのだが……。
「受験勉強はちゃんとやっているんだろうな?」
「いや? 全然やってないけど?」
「……よくもまあ、そんなにあっけらかんと……。恋人ごっこなんてしてる場合じゃないんじゃないか?」
「大丈夫だって、なんとかなるなる! 二学期になったら凛姉に家庭教師頼むつもりだし!」
「オマエなぁ……」
「凛姉ならワタシの成績なんてグングン上げてくれるから大丈夫だって。高校受験もそうだったんだから!」
相変わらず千穂はお気楽というか、考えが甘いというか……。
「あまり凛花に負担掛けるなよ」
「いや、それ言うなら竜郎のほうがよっぽどじゃん」
「っ……、それは……そうだが……」
他力本願な幼馴染をたしなめるハズが、ブーメランがグサリと刺さってきた。
まあ……うん。ボクが言えたコトではなかったな。
ボクだって、炊事洗濯掃除の何から何まで凛花の世話になりっぱなしなんだからな……。
昔から両親が家を空けることが多く、隣に住んでいる凛花の家族に面倒を見てもらっていたのがキッカケではあると思うけど……いつの間にこうなってしまったんだ?
なんにせよ、凛花に頭が上がらないのは間違いない。
凛花だって片親で大変だろうに――。
「竜郎もさぁ、少しは自分で家事とかしたらどうなん?」
「失礼だな。ボクだってやろうと思ったことくらいあるんだぞ」
「へぇー……で、何したの?」
「カレーを作った――いや、カレーを作ろうとしたんだ」
その昔、自分の飯くらい自分で用意するべきだと思い立ち、料理に挑戦した時のことだ。
「結果、余計に凛花の仕事を増やしただけだった……」
「なんで? 一体何やらかしたのさ?」
「ボクはちゃんとカレーを作ったハズなのに、どうしてかダークマターが生成されたんだよ」
肉、野菜、ルウ……どれもおかしなものを使った覚えはない。
レシピだって、ルウの箱の裏に書かれているヤツをキッチリ守って作った。
ボクが手を入れたところといえば、隠し味で入れると良いとネットに書いてあった食材を全部入れたことくらいなんだが……。
「なんで……カレーとか雑に作ってもそこそこおいしくできるでしょ……。竜郎は料理とかしないほうがいいよ、絶対」
凛花にも同じ事を言われたぞ。
「それにしても……そのダークマターをカレーだって言い張るような舌が無くて、本当によかったね」
受験勉強の話をしていたハズなのに、なぜボクが呆れられなきゃいけないんだ。
そんなやり取りをしつつ、目的地である千穂の家を目指していった。
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