第49話 安らかな眠り
「どういうことだ……」
中庭で特殊部隊の誰かが呟いたそんな言葉はそこにいる全員の意見でもあった。
校舎が崩れた音。
そんな音を聞いたのは初めてだったがあそこまでの大きな音だ。それを校舎が瓦解した音と推察するのにそう頭を使うことはない。
だからこそ中庭に突入して周りをぐるりと見回して、すべての校舎が綺麗な建物の形をしていたことに驚いた。最初に崩れたと思っていた部室棟は安普請ながらも歴史ある貫禄をそのままにしていた。他の四校舎は貫禄こそ適わないものの同様に平然と建っていた。
中庭の草木も毎日水と肥料を惜しげもなく使われているように生き生きとしている。
そしてその自然あふれるその場に不自然なものが一つ。
「あれは……」
隊員の一人が指差したそこには仰向けに倒れている人間が一人いた。目を閉じ、緑のベッドで日向ぼっこをしているようにその死体は安らかに眠っていた。両腕はマリア様に祈るように胸の前で組まれていた。
五体満足なその死体がこの事件の首謀者ハンニャと分かるのには幾ばくかの時間を有した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます