第49話 安らかな眠り

「どういうことだ……」

 中庭で特殊部隊の誰かが呟いたそんな言葉はそこにいる全員の意見でもあった。

 校舎が崩れた音。

そんな音を聞いたのは初めてだったがあそこまでの大きな音だ。それを校舎が瓦解した音と推察するのにそう頭を使うことはない。

だからこそ中庭に突入して周りをぐるりと見回して、すべての校舎が綺麗な建物の形をしていたことに驚いた。最初に崩れたと思っていた部室棟は安普請ながらも歴史ある貫禄をそのままにしていた。他の四校舎は貫禄こそ適わないものの同様に平然と建っていた。

 中庭の草木も毎日水と肥料を惜しげもなく使われているように生き生きとしている。

そしてその自然あふれるその場に不自然なものが一つ。

「あれは……」

 隊員の一人が指差したそこには仰向けに倒れている人間が一人いた。目を閉じ、緑のベッドで日向ぼっこをしているようにその死体は安らかに眠っていた。両腕はマリア様に祈るように胸の前で組まれていた。

 五体満足なその死体がこの事件の首謀者ハンニャと分かるのには幾ばくかの時間を有した。

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