第17話 人外な女
サタンはその双眸を見た瞬間にしばし逡巡した。この広大な漆黒の背景から一瞬でサタンの姿を見つけたこともさることながら、またその目には人ではない邪悪なものが宿っていると感じたからだ。
この佐藤優子という女は大門鈴鹿に関係する女、もしくはその本人と考えていた。だがこの奸悪な目を見た瞬間この女が人ではない何かと定めるのにそう時間はかからなかった。
明らかな人外、こちら側の何か。
ビルデが天谷神二に抱いたその感覚と同じものをサタンは覚える。
サタンと橋の距離はおよそ五十メートル、それは同時に佐藤優子との距離を表していた。
時間にして二人が目を合わせていた時間は三秒もなかったが、サタンの体感ではそれ以上だった。
一瞬、ただの一瞬だった。その一瞬で、サタンは知る。戦いとは目を合わせた時点で始まっているということを。
まばたき。はたから見れば仮面をかぶったサタンの目など見えない。目を閉じたかどうかなんて確認なんてできない。
だが必然か偶然かその一瞬のスキを突かれた。
瞼を再び開いたとき、そこに女はいなかった。
消えた。そう思う間もなく後頭部に衝撃が走り、勢いよく流れていた下方の濁流はモーゼがどん引きするほどの割れ方を見せた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます