第9話 セバスちゃん
「あ、セバスちゃん!」
鈴鹿は校門前でマネキンのように礼儀正しく麗華を待っているセバスに声を掛けた。
「おや、これはこれは鈴鹿お嬢様。お久しぶりでございます。麗華様は一緒ではないのですか?」
セバスはだいぶ年下の鈴鹿に丁寧にそう訊いた。
「いいよ、そんな堅苦しい喋り方。『お嬢様』は重い。麗華ならまだ教室にいたよ。もうすぐ来るんじゃない?」
「そうでございますか、ありがとうございます。鈴鹿様」
「んじゃ、私帰るね」
鈴鹿はそう言い、その場を立ち去ろうとした。だがセバスが「鈴鹿様」と言って引き止めた。
「ん?」
「今の麗華様があるのは鈴鹿様のおかげです。昔の麗華様は日々レッスンに明け暮れて、子供らしさや純粋さを失っていました。ですがあなたと出会ってからの麗華様はいろいろなことに目を向け、まるで毎日が楽しそうに見えます。先日のコンクールで金賞を取れたのも鈴鹿様の――」
「いいって、長いよ、固いよ、重いよ」
鈴鹿がセバスの言葉を遮った。
「私は友達として接してきただけだし、なんかほんとに適当な感じだったからそう言われると恥ずかしいよ。まあ、そう思ってくれたんならありがとね。じゃあね、長生きしなよ」
そう言うと鈴鹿は手を振った。
セバスは、
「ありがとうございます」
と、慇懃に礼をしてそれを見送った。
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