第4話 死に神の能力
太陽が眩しい。どうやら俺にとっての波乱万丈の始まりの夜は明け、新しい一日が始まろうとしているようだ。何時だろうかと周りを見るが時計が見当たらない。途中で捜すのを止める。どうせ俺は死に神だ。
「……はぁ、何時でも関係ないか……」
結局あの後。この部屋に戻るなり、ドロシーは『疲れた』『眠い』の二言で、帽子とローブを脱ぎ捨てベッドに横になると、そのまま『詳しくはあしたね~』とあくびながら言い、すぐに寝息が聞こえてきた。眠くはなかったが、仮眠のつもりで隣のベッドに横になると――、
気付くと今に至った。睡眠の欲求がなくても寝れるんだな。隣を見てもそう思う。
「……すぴー、すぴー」
死に神は睡眠の欲求が薄い的なことをドロシーは言っていたが、よだれを垂らしながら寝ている彼女のようすを見る限りでは、ほとんど爆睡だ。
ベッドから起き上がるが、彼女が起きなければ話は進まない。どうしよかとあぐねていると、脱ぎ散らかしたローブと帽子が目についた。それを拾い上げ彼女のベッドの柵にかける。
そこで、ふと、ドロシーの寝姿に目がいく。ローブを脱いだ姿も、真っ黒の服に身を包んでいた。とても綺麗な金髪。そしてあどけなさの残る美しい寝顔。まるで、何かの映画のワンシーンのようだ。
「すひー、すー」
一定のリズムを刻んでいた寝息が乱れ始めた。これはそろそろか?
「……ん……ん、んん!」
見えているのかいないのか、数回の瞬きの末、目の前にいた俺を見つめる。誰か分かっていないのか? 俺を見つめたままの時間が止まる。
「……ああ、そっか。一人じゃなかったわね。ふわぁ――」
上半身を起き上げ欠伸をひとつ。寝起きは悪そうだ。
「……おはよう、リン。ごめんさいね。あたしの能力……使えば使うほど……頭が疲れるから、気が抜けると一気に眠気が……ふわぁ……きちゃうのよ……まだ眠いわ……」
ふらふらとベッドから起き上がり、そのまま出口に向かっていく。
「ふわぁ……顔……洗ってくる……」
短く目的を言って、振り返ることなく部屋を出ていった。死に神は睡眠の欲求があまり無いと言っていたので、彼女の眠さは能力による理由ってのは本当なのだろう。現に、俺は全然眠くない。
そんなことを考えていると、足音が近づいてくる。帰ってきたみたいだ。
「ただいま~」
眠気眼で出て行った彼女は、完全に覚醒しているようだ。
「いや~、昨日はごめんね。能力について思わせぶりなことを言ったのに、結局あのまま寝ちゃって……」
そう言って俺の横を通り過ぎ『ちゃんと教えるからね~』と言って、ベッドにかけてあったローブを羽織る。トンガリ帽子は被っていないが、魔女――もとい、魔法使いらしく見えるようになった。
「さて、それじゃあ話そうかしら、能力について……ふわぁ」
……大丈夫だろうか?
「能力の説明の前におさらいよ。死に神は、自殺しようとしている人間を見つけることが出来る。そして死が近い人間にはあたしたちが見える。この二つは、昨日教えたから大丈夫よね?」
一つ目については、実際に自殺しようとしている人を感じることが出来たんだ、充分に理解している。二つ目の視認についても、あの場で説明されたので大丈夫だ。死が近い人間には俺たちが視認出来るが、普通の人間――つまりは、死ぬ予定に無い人間には俺たちは見えない。
うん、大丈夫。ドロシーに肯定する。
「大丈夫そうね。それじゃあ教えてあげる――死に神の能力について」
軽く微笑むと、さっそく本題に入ってくれた。
「あたしたち死に神には、現実世界ではありえないような能力を、この世界で身に付けることが出来るの。分かり易いので言えば、昨日のぼーやの炎。あれは死に神の能力によるものよ」
最初に見たときは『これは現実か?』なんて信じられなかったが、そもそも現実ではなく、死後の世界なのだから受けいれざるをえない。
「死に神一人につき一つの能力を身につけるわ。もちろん、あなたも」
俺にも、炎や拳銃を出したり出来る能力があるのか。
「……そういえば一回使ったわよね? あたしがぼーやからの炎を防ごうとした時に」
ドロシーと初めて会った時のことか、だけどあの時は……。
「あれはドロシーが助けてくれたんじゃ……」
銀色の大きなカーテンのような物を広げて。
「最初はそのつもりで、耐火コーティングされたカーテン――ありたいていに言えば、消防士が着るような防護服で防ごうと思ったんだけど、防ぐ必要もなく炎が分かれたのよ。あたしは何もしていないから、リンの能力で防いだ筈よ」
俺の能力で防ぎ、炎が分かれた。……一体何の能力なんだ?
「……一体何の能力なのかしら?」
ドロシーも俺と同じ見解らしく、首を傾げている。
「能力が分かる方法は無いんですか?」
そう聴いても、『う~ん』とうなだれている。……無いのか?
「自分の能力が何かは使ってみて分かる物なのよ。……一応、能力を使えば手は発光する筈だから、もう一度使ってみたら? そしたら、分かるかも……」
あまり自身なさげにそう言った。一度見た時に分からなかったから、自信が無いのだろう。まあ、使わなければ分からないのだったら、分かるまで使えばいいだけだ。
「何の能力か分からないのなら、変に何か考えたりせず、手に力を込めるだけでいける筈よ」
俺は立ち上がり、左手の平を上に向け力を入れる。『何も考えずに』と言われたが、その姿はフレアが炎を見せた時と同じポーズになった。すると――、
左手は、目が眩むほどに強い光を放ち始める。
「っ、眩しい。こんな光、初めて見るわ。一体、何の能力なの?」
驚き期待するかのように見てくるドロシー。だが俺は、どうすればいいのか分からず、フレアのように壁に向かって手の平を向け能力が――発動する。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます