第28話 天使

 神殿の離れの部屋。


 アガリアの気配がある。


 ラグエルを倒したことで、天使達の抵抗は一時的に弱まっていた。


 アガリアと接触するなら今だろう。


 離れの部屋の扉を開ける。


「⋯⋯」


 椅子に腰掛けながら、本を読むアガリア。


 我に気づくと、本に落としていた視線を我に向けた。


「やあ」


「くくく、驚かぬのだな」


「自分でも、不思議な気持ちなんだ。キミと初めて出会った時から、初めて会った気がしなくてね。キミたちがここへ来たということは、天使長ラグエルは敗れたということかな?」


「うむ。ラグエルは、我が勇者が討ち取った」


「そうか。ボクを盾にするような、あまり良くない上司だったね。それで? キミはボクに何か用があったんだろう? ラグエルに割り込まれてしまったけれど、改めて、用件を聞こうか」


「くくく。ああ、手っ取り早く教えてやろう」


 アガリアに近づく。


 アガリアに触れようとして、手が止まった。


「? どうしたんだい?」


 このアガリアに、我の知るアガリアの記憶は無い。


 このアガリアに伝承法で記憶を受け継ぐことは、我のエゴであり、ただの自己満足であろう。


 それだけのために、このアガリアの可能性を歪曲することが許されるのか。


「アレン様、ためらわないでください」


「ティナ?」


「わたしがアレン様なら、アガリアさんをどのような手を使おうとも、必ず手に入れてみせます」


「くくく、それは少々、強欲過ぎではないか?」


「アレン様なら、知っておいでのはずです。勇者とは、図々しい者なのだと」


「ふっ、そうであったな。迷う必要は無い、か」


 アガリアの頬に手を添える。


 アガリアが自然と眼を瞑る。


 口付けた。


「んっ⋯⋯」


 唇を離すと、アガリアの吐息が漏れた。


 アガリアがゆっくりと眼を開き、我を見ていたづらっぽそうに笑う。


「やれやれ、ボクの勇者は大胆だね。いったい、どこでそんな手管を覚えたんだい?」


「汝が死んでから、我も色々あったのだ。もっとも、既に汝も知っているはずであろう?」


「クス。あえて、知らないということにしておくよ。キミのことを、これからもっと知っていきたいからね」


「良かろう。天使アガリア、我の仲間になれ」


「うん。ただいま、ボクの勇者」


「ああ。おかえり、俺の魔王」


 天使アガリア が仲間にくわわった!!




魔王アレン  Lv653→Lv453

勇者ティナ  Lv423

竜人トノカ  Lv320

聖女エルミア Lv103

天使アガリア Lv110→Lv310

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