第27話 決着

 アレン様の背から降り、立ち上がる。


「なんだと!? エンジェル・ダストの束縛から自ら脱したというのか!?」


 驚くラグエルに向けて、剣を抜く。


「くくく、エンジェル・ダスト。面白き技だ。だが、種さえ割れてしまえば、ただの児戯だがな」


「ふぁ~、まだねむい~」


「こほん。先ほど、夢の中で衝撃的なことがあった気がしましたけれど、今は忘れて差し上げますわ」


「天使長ラグエル、幸せな夢をありがとうございます。でも、今のわたし達に、そんな夢はもう必要ありません!」


「ふん。一度、技を破ったからといって調子に乗るな。今再び、貴様らを幸福な仮初に堕としてやろう。やれ!!」


 ラグエルが手で合図する。


 四方にいた天使が、一斉にエンジェル・ダストを放つ。


 無数の光の花びらが舞う。


 光が体に触れ、瞼が落ちる。


 ピコーン!


 一瞬で瞼を開ける。


「みきった!」


「なにッ!?」


「紅龍波!」


 トノカちゃんが手のひらから炎を纏った紅い龍を繰り出し、四方を囲んでいた天使を焼き尽くした。


「「「「ぎゃああああああ―――っ!!」」」」


 天使達の断末魔を聞きながら、剣をラグエルに向ける。


「あとは、あなただけです」


「ふんっ。仕方ない。この天使長ラグエル様が、貴様らを直々に断罪してやろう!」


 ラグエルが槍を構える。


「勇者ティナ、参ります」


 地面を蹴り、間合いを詰める。


「ふんっ、槍相手に剣で挑むとはな。武器の相性すら知らぬ愚か者が。死ねっ!」


 槍。


 迷わず突っ込む。


 貫かれる。


「ふはははは! 雑魚が!」


 貫かれたわたしが、闇に変わる。


「なにっ!?」


 貫かれたわたしの影から飛び出し、ラグエルの背中へ、刀身に氷魔法を付与した一撃を叩き込む。


「雪影衝!」


「おごぉ!?」


 吹き飛ぶラグエル。


 体制を立て直そうとしているところへ、追撃。


「月火浪漫剣!」


 大上段からの火炎大撃。


「一度喰らった技など、すでに見切っているわ!」


 槍で弾かれる。


 至近距離。


「雷迅一華閃!」


 雷を纏った、最速の一撃。


「ククク、勇者の剣技など、見切り済みだ!」


 かわされる。


 間合いを取り、再び構える。


「ククク、残念だったな。雪影衝。覚えたぞ。もう二度と、その技は私には通じない」


「そうですか。一度しか、技が通じない。少し、困りました。それなら、この技があなたに通じるか、試させていただきます」


「何?」


 ピコーン!


 雪影衝、月火浪漫剣、雷迅一華閃。


 一瞬にして、3つの技を繰り出す奥義。


「乱れ雪月華!」


「ぐああああああーーーッ!?」


 一瞬でラグエルの四肢が吹き飛び、首が飛んだ。


「ばかな!? この私が、勇者ごときにぃいいいい!?」


 ラグエルの全てが凍り、燃え、雷撃を受けて粉々に崩れ落ちた。


「わたしは勇者ティナ。勇者とは、自らの可能性を超えていく者のことです」


 剣を収めて、アレン様を見た。


 満面の笑みの拍手に、丁寧にお辞儀を返す。


「すっごい、すっごい! あの天使をひとりで倒すなんて!」


 トノカちゃんに抱きつかれる。


「ありがとうございます。でも、まだ終わりじゃありません」


「アガリア様、ですわね?」


「はい。この神殿の何処かにいます。行きましょう、アレン様」


「うむ。アガリアの気配が近い。征くぞ」


 アレン様の後を追って、神殿を上階へと登っていく。




魔王アレン  Lv651→Lv653

勇者ティナ  Lv380→Lv423

竜人トノカ  Lv296→Lv320

聖女エルミア Lv99→Lv103



天使長ラグエル Lv668→☓

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