第6話
お酒も外で飲めない。花火も出来ない。
アキが悪いが、簡単に強制退国されてしまっても。
それでも、コイツはここより自由で良い場所だと話す。
アキにとっては日本は狭くて物足りないのだろうけど。
「最後の1本いっとく?」
「お、おう」
導火線に火が付いて、最後の花火が飛んでいく。オレンジ色の光は派手な音を出して一瞬で消えた。
2人の笑い声も話し声も、次第に小さくなって、辺りが静けさが広がる。
真っ黒な空に浮かぶ三日月と数少ない星が並ぶ。じっとりと湿った空気がを熱帯夜を感じさせた。
おかしいな、さっきまでこんなに暑いと思わなかったのに。
「本当は、強制退国させられる前にね」
隣で膝をかかえるアキがぽつりと言葉を落とした。
「シェアしてる人が何とかしてくれようとしたんだ」
「へぇ……?」
「あたしの事、気に入ってくれててさ。永住権くれるって」
「は?シェアの相手って男?」
「そうだよ」
「それって結こ…」
「でもさー!!その時……。なんだろう」
いつもふざけてるアキが、じっと俺の顔に目を向ける。
「ハルキの顔が浮かんだ」
「え?」
「あんたにもう一度会いたかった」
「……おい」
「あたしさー」
「おい、待てって」
「あたし、本当は」
「言うな、言うなよ!」
「あは、あたし今酔っ払いだから。あたしの後悔は、あんたにナツキをお勧めした事だー!!」
――あんた、いい度胸してんね
――は?お前ほどじゃねーよ
はじめて会った時だって、近所の上級生とやり合ってた位だ。
アキは俺なんかが手におえる相手じゃなかった。
「……ばっ、か。お前」
思わずアキの背中に回した手が、指先が震えた。
その小さな背中に力を込めても、夢の中のようで現実とは思えなくて。ゆっくりとコイツの肩に手を置いて距離をおく。
アキは自由奔放で、俺なんか置いてかけ出すから。
凄く眩しくて止める事なんて出来ないと思ってた。
「ハルキ、あたしあんたのこと好きだったよ」
「な、なんで今更、」
「今更だからだよ」
「……そしたら、俺だって、お前のこと」
"好きだった"──。
全てはお互いに過去の話だ。
「いって、今度は頭突きかよ!?」
「あはは!襲うんじゃねーよ」
「違うだろ?お前が……」
「よし、じゃぁさ!家の近くの、うーん、自動販売機まで競争しよ」
「え?いや、無理だって。俺、もうふらふら…」
目の前のコイツが走り出すから、慌てて追いかけた。
アキは綺麗で手の届かない存在だったから。
制服姿のアキが俺のことを「おせーよ、バーカ!!」と舌を出す。
もし、過去に戻れるのなら。
あの頃に戻れるのならば、俺達は今も並んで歩けただろうか。
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