第7話
それから3ヶ月後。
アキはオーストラリアへと戻る事となる。
ナツキとは飲みに行っていたみたいだが、俺とは時間が合わなかった。
いや、きっとお互いが合わせなかったのだろう。
「見送りなんていーのに」
アキのおばさんは本当は見送りに来たかったけど、どうしても仕事が抜けられなかったそうだ。
「送ってやったのに、何言ってんだよ!」
「あはは、助かった。ありがと」
「アキちゃぁん!!今度いつ戻ってくるの?」
「えー、まだ決めてないけど」
「今度は絶対、連絡ちょーだいよ!」
「分かった、分かった」
アキが涙目になるナツキの頭に手をポンと乗せた。
「ハルキ」
ニカッと歯を見せてアキが俺を見上げる。
「ナツキはいい子だよ」
「知ってる」
「あんたなんかには勿体ないけどさ」
「知ってるよ」
「絶対、いい嫁になる!」
「ちょっと、アキちゃんやめてよ」
「知ってるって」
「え、と、ハルキ!?」
「2人とも、バイバーイ!!!」
大きなキャリーケースをひきずって、アキが右手を大きく振る。無邪気に笑顔を見せて、搭乗口の人混みの向こう側に消えていった。
「あれ、あの飛行機かな?」
「いや、流石にまだだろ」
空港から駐車場に向かう時、空に飛行機が飛んでいくのが見える。
「そっか」
「ナツキ、さっきのアキが言ってたのさ」
「えっ」
「"嫁"っての」
「あー。もー、アキちゃんったら気が早いって、ねー!!」
「……だな」
「……」
「まぁ、結婚……とか考えてみる?」
「え!?」
「いやならいーけど」
「や、やじゃないけど…」
「……ほら」
腕を伸ばせば、戸惑いながらもナツキは俺の手をとった。
「ナツキ、好きだよ」
「な、なに急に?」
「最近、言ってなかったなって思って」
「わ、私も好き……」
俺達は手を繋いで歩調を合わせて歩き出した。
きっと、これからも変わらない――。
この小さな町で空を見上げれば、あの時のことを思い出す。
夏の夜空に火を灯し消えていく花火のように。形がなくて消えてしまっても、時がたって色褪せても、確かに存在した形の記憶。
叶うことの無かった、交わることの無かった思いだからこそ、綺麗なまま記憶の中に刻まれるんだ。
────夏の夜空に消えてく花火────
夏の夜空に消えてく花火 みかんの実 @mikatin73
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