第3話



「じゃぁ、私こっちだから」


駅前でナツキと別れる頃には、かなりアルコール濃度が上がっていただろう。


本当は、飲んだ後すぐ家へ帰る予定じゃなかったんだけどな。

流石にコイツ……アキがいるのにホテルとか寄れねーし。ナツキもそう思ってるだろうしな。

ちらりとアキに目を向ければ、ニヤリと口元を緩ませて視線を返される。


「ごめんね~、2人共。本当はホテルとか寄る予定だったんだろうけど~」


ぎくり。

顔に出てたか?


「えー、やだ!アキちゃん!そんな予定ないよ~!」


無かったのかよ。

俺は2週間ぶりにヤル気満々だったんだけどな。


「あたしが~、責任を持って、コイツを送り届けるから!!」

「ハルキ、アキちゃんの事、襲わないでよね~」

「安心して!襲ってきたら、脛蹴りしてやるから、こんな奴!」

「いってぇ、まだ何もしてねーだろ!」


もの凄く余計なお世話だが、こんな冗談さえも言い合える。

なんだかんだいったって、2人は仲が良いのを知っている。


「じゃナツキ。また後で」


「うん、じゃーねぇ」


2人が、パチンと音をたてて手を合わせた。

アキと連絡が取れなくなって――。

ナツキが凄く落ち込んでいた事を知っているから、また2人並ぶ姿を見れて本当に良かった。



「さーてと、あたし達も帰りますか」

「はいはい」



俺の数歩前を歩くアキが、両手を上げて背伸びをしながら振り返る。


「あんたとナツキって、大学の時からだから……えーと、4年だっけ?」

「5年目だよ」

「うわ、信じらんない!あたしそんな続いたこと無い!」

「知ってる」

「でも、まぁ。高校の頃から本当にナツキは良い子だからねー」

「知ってる」

「あんたにはほんと勿体無い」

「知ってる」

「泣かせたら、マジで蹴る」

「もう蹴ったじゃねーか」

「あはは」


1歩1歩、家路を歩き出す。

久しぶりに見るアキの背中は小さくて、凄く遠く感じた。


「じゃさ、もー結婚とか考えてんの?」

「俺、まだ24だし」

「えー?全然、考えてないのー?」

「いや、うん。まぁ、すぐじゃないけど……」


気恥ずかしさから口ごもってしまったのは、コイツと結婚の話するとは思わってもいなかったから。


「ふーん。昔は誰とも続かなかったのにね」

「昔の話だろ」

「……」

「……」


街頭の少ない薄暗い河原道。

満月と時々通り過ぎる車のヘッドライトだが辺りを照らし出す。

家から駅までのこの道程は、昔、アキと並んで歩いた時と変わらない。


「ふっ、あは、あははは!!!」


沈黙を壊したのアキの笑い声で、しんみりとした空気が一瞬で軽いものとなった。


「な、なんだよ?」

「ハルキ!も少し飲んで昔話しよ~」


一瞬、ナツキの顔が浮かんだけど、コイツが子供みたいに無邪気に笑うから。俺はアキに引かれかながら歩き出した。


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