【深海の瞳の少女 -1-】
その人の目が見えないことは、すぐに分かりました。瞳には見るからに傷が入っていましたし、光彩も白く変色していました。
波打ち際に、人の形が見えたときはまた死体かと思ったものでした。だって昨晩の嵐は深海にまで物が落ちてくるほど強かったようですし、あんな嵐で生きられる物がいるなんて思えなかったからです。事実、これまで生きられたものはいませんでした。
ここは私達の島でした。ここは私達以外の生き物が来ることの出来ない島。
嵐を抜ければこの島に辿り着けることは出来るよのですが、あの嵐を抜けることの出来る船は中々ありませんでしたし、辿り着いたところで生物が生きて来られることはほとんどありませんでした。あっても虫や小動物くらい。人間は来たとしても、物言わぬ遺骸だけ。
だから、生きた人間というものが本当に珍しかったのです。
好奇心が大きかった。
元気に生きている人間を見てみたかった。
幸い死にそうな人間を生かす方法を私は知っていました。物知りで長生きのクジラが教えてくれたのです。人間という動物がどういうものであるかということと、私達との関係を。きっと他の仲間は知らないでしょう。私は好奇心が旺盛で、色々な生物と関わりたかった。
それにおあつらえ向きに、酷い火傷をしましたし。
人の熱というものは、魚にとっては大変熱いのです。手と尾びれは魚と同じ体温でした。利き手の右手はもう使い物にはならないでしょう。
ーーねぇ、私を食べて。
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