第30話
背筋が、ぞっと震えあがる。
この感覚は。
前向きに楽しい夜步きを楽しんでいた
そして
『気づいたか』
尋ねられ、
「近いわ。
怪異ね」
『ああ。
……大物だ。
水気がねっとりと……。
女だな』
「そういうの、差別っぽい……」
『そうか?
素直な感想だ。
水のあやかしは陰、女に通じるしな』
「……なんでもいいわ。
なぎ払うだけだから」
「右です!」
少年の、澄んだ声がする。
つられて、
しかし、なにもいない。
何事?
怪異の気配は、
弓のつるが鳴る音がしたと思うと、向かって右に矢が飛ぶ。
しかし、そこにはなにもない。
すっと矢は川に落ちるだけだ。
なにやってるの、あれ。
弓をつがえているのは、
そして、傍らに華奢な少年がいる。
おそらく、
彼が方向を指示し、そのとおりに
その繰り返しを続けているようだが、
まったく矢の無駄だ。
「ねえ、
あの人たち、なにしてるんだと思う?」
『橋姫退治だろ』
そういう
『しかし、絶望的に弓が下手だ』
「違うわ。
方向を指し示している
橋姫がいるのは、橋の上だ。
ぼうっと白く輝いた彼女は、
発光しているせいで、顔かたちもはっきりしない。
力が強い怪異のようだ。
おそらく、普通の人間には見えないようにしている。
そして、姿を隠したまま、通るものを川に引きこむこともできるだろう。
それにしたって、この世の外を見る力があれば、気配は感じるだろうし、決して方向を見間違ったりはしない。
危ないっ!
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