第29話
『禁色の恋に生きる
最近の若いものは、なにを考えているんだ』
馬に姿を変えた
「仕方ないじやない。
緊急事態よ」
『おまえは、それでいいのか?』
「なかなか骨のある
心当たりの彼を思い浮かべ、
理由はなんであれ、初めて
「禁色ということは、もしかしたら女嫌いかもしれないけれども、そうじゃなかったら友達にくらいなれるかもしれないし」
『……女心は複雑だな』
「そういうのじゃなくて」
『まあ、いい。
それで、この間の、あの逢い引きの場所に行けばいいのか?』
「ええ」
今日は、
正確に言うと、彼の逢い引きの現場を押さえるためだ。
あの橋のあたりで、また忍び会っていてくれるといいけど。
本当に進退窮まった
男の恋人がいるらしい、彼に結婚を申しこむ。
そうすれば、いわゆる夫婦生活をしなくてもいいのではないだろうか。
彼にとっても、いつまでも妻がいなければ、世間がうるさくて厄介なことになるはずだ。
禁色の恋に生きる男にとって、
それに彼は、臣籍降下したとはいえ元皇族。
まだ位階はそれほど高くないけれども、出自は
名案っていうか、自棄っぱちかもしれないけど。
でも、他にどうしようもないもん。
溺れるものは藁をも掴むのよ。
思いついたときには名案だったような気がしたが、冷静になってみると、そうでもないような気がしてきた。
しかし、
これは、挑戦してみる価値がある、というような気がしてきた。
生まれてもいない東宮は、なおさらだ。
でも、
彼のなにがそんなに特別なのか、よくわからない。
でも、鶴に立ち向かった姿をりりしいと思ったし、まるで目が見えていないみたいに太刀を振り回しながらも、それでも絶対に逃げなかったところに、何か感じたものはあったのだ。
胸がときめいたと言うのは、気恥ずかしいけど。
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