第4話 海
むかしむかし、広い海の中に、ひときわ大きなシャチの群れが住んでいました。その中で一番力強く、優しいシャチの名前は「ミナモ」といいます。
ミナモは群れの中でも特に愛情深いシャチでした。彼女は、仲間が困っているとすぐに駆けつけ、力を貸してあげました。ある日、ミナモは小さなシャチの「ユウ」と出会いました。ユウは、まだ群れと離れて一人で海を泳ぐことができなかったのです。
ユウはミナモにこう言いました。「私はまだ海の広さに怖くて、みんなから遅れてしまいそうなんです。」
ミナモは優しく微笑みながら言いました。「心配しないで。私が一緒にいてあげるから、何も怖がらなくていいんだよ。」
そして、ミナモはユウを自分の背に乗せ、海の中をゆっくりと泳ぎました。波の音や風の音が心地よく響き、ユウは少しずつ勇気を出して泳げるようになりました。ミナモが側にいると、ユウはどんなことでもできるような気がしたのです。
ある日、大きな嵐が海を襲いました。強い波と風が吹き荒れる中、ユウは恐怖で震えていました。ミナモはすぐにユウのところへ駆けつけ、彼女を抱きしめるようにして言いました。「私が守るから、何も怖くないよ。しっかりと信じて。」
ミナモはユウをしっかりと支えながら、嵐が過ぎるのを待ちました。嵐が去った後、海は再び穏やかになり、ユウは感謝の気持ちでいっぱいになりました。「ミナモさん、ありがとう。あなたがいてくれたから、私は怖くなかった。」
ミナモは優しく微笑みました。「愛とは、怖い時に支え合うことだよ。私たちシャチは、みんなでお互いを守り合って生きているんだ。」
それから、ユウは成長し、他のシャチたちと一緒に広い海を泳ぎながら、ミナモの教えを胸に刻んで生きていきました。彼女は今度は自分が、誰かに愛と優しさを届けられる存在になっていったのです。
そして、ミナモとユウは、海の広さと深さのように、愛と絆がどれほど強く広がるかを感じながら、いつまでも仲良く暮らしました。
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