第7話

5時間目は、体育でバレーだった。


「5時間目の体育ってきつくない?」


不一郎の言葉に対し、湊人は


「そう?午後に体育の方が良くない?」


そう言って笑った。


湊人、めっちゃ食べてたけどね。


男女合同にチームを作って試合をする。私は湊人と同じチームだった。


湊人の活躍ぶりは凄かった。けれど、他の人にも活躍させようとサポートをしていた。


湊人はモテる。顔はもちろん性格・運動神経は良いし、優しいし、かわいいし、礼はいつも90度だし、頭は良いわけではないけど、それもかわいい。


シュッッ

「桜花!危ない!」


私の方にボールが飛んできた。気づいたときにはもう遅くて“ぶつかる!”そう思って目を塞いだ。


バンッ

どこも痛くなくてボールが当たっていないと気づく。

それと同時に湊人の体重がかかって私は湊人の身体を支える。


「湊人!ごめんなさい!怪我…」

「全然大丈夫。手痛めただけ、桜花は大丈夫?」

「私はなんとも…」


「桜花が怪我してないなら良かった。先生、保健室行ってもいいですか?」

「連れていきます」


私は湊人と一緒に保健室に向かった。


「湊人、ほんとにごめん」


私がそう言うと湊人は私の目を見て言った。


「ごめんじゃなくて、ありがとうって言って!」

「…ありがとう」


「ふふっ、桜花あのレシーブナイスだったよ!」

「頭で取ったやつ?」

「うん、さすが桜花!って思った」

「頭痛かったけど」

「桜花と同じチームで良かった」

「私も。湊人かっこよかったよ!」

「…こーやって桜花のこと守れたし」


頬が熱くなって胸が高鳴るのが分かった。


(好きにならない訳ないじゃん…)


保健室のドアを開ける。


「桜花ちゃん、湊人くんどうしたの?」

「ボールが手に当たって」

「折れてないから冷やしてテーピングしましょう」


すると保健室の電話がなった。


先生は電話に出ると、

「ごめんなさい。急用ができたから自分でテーピングしてもらってもいい?」


そう聞いた。


「はい、分かりました」


湊人はテーピングを巻き始めた。右手に巻くのはちょっと苦戦してるようだった。


「こういうとこは不器用だよね」

「左手だから」


少しふてくされて言う。


「やるよ」

「自分でやる」


湊人の負けず嫌いが発動してるw


「やるよ。友達でしょ?」


そう言うと湊人は黙ってテーピングを渡してきた。


自分の発した言葉が自分の首をキリキリと締める。




ただ加湿器の音だけが保健室に広がった。

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