第8話

「京太郎兄ちゃん、どこ…」


今日はCDを壊したお詫びとして那偉人兄ちゃんの好きなプーさんのぬいぐるみを買いに来た。けれど、まだ5分も経っていないのに京太郎兄ちゃんが迷子になった。


京太郎兄ちゃん頭もいいし、強いのになんでこんなポンコツなんだろ…。限度っていうものがあるじゃん…


とりあえずここに居ても会える気がしないので、私はもと来た道を戻った。


戻っていると男3人組が女の人に話しかけている。


(ナンパされている人がいる…。これって助けに行くべきなのかな?でも、嫌なことはされてないさそうだし…)


私が悩んでいると女の人が叫んだ。


「離してください!」


私は間に入ると、女の人の手を掴んだ。


「私の友達に触れないでください」

「おっ!友達もいるのか」

「手、離してください」


男は手を離そうとしなかった。


私は京太郎兄ちゃんにもしものときの為に教わった技、関節キックをしようと思った。


(いや、でもこの人倒せたとしても他の2人は無理に決

まってる…)


「痛いっ」


悩んでいたら、女の人が小さな声でそう言った。


私は男の膝を後ろから思いっきり蹴った。


「あぁっ!」


男は尻もちをついて膝を抑えた。


「お前…!」


他の2人が私たちの手を掴む。


「誰か!助けて!」


私は必死に叫んだが歩いている人は見向きもしない。

きっと、巻き込まれるのが嫌なんだろう。


誰か…!そう思いながら必死に抵抗していると男の1人が私の手を離した。


「俺の妹に何してる」


京太郎兄ちゃんが男の首を締めていた。


締められている人は必死に抵抗するが、やがて気を失う。もう1人も京太郎兄ちゃんに襲いかかろうとする。お兄ちゃんは綺麗に背負い投げをした。


膝を蹴った人が襲いかかってきたので、私はその人の足のかかとをすくう。予想通りかかってくれてその人はまた尻もちをついた。


さすがにやばいと思ったのか、誰かが警察を呼んでくれて私たちは事情聴取された。


「本当にありがとうございました」


女の人は深々と頭を下げる。


「時間潰してしまってごめんなさい」

「いえ、ありがとうございます。実は今日、指輪を買おうと思ってたんです」

「指輪!?結婚するんですか?」

「はい。相手が高校を卒業したらですけど…。

その人指輪が嫌なようで…。だからネックレスに指輪さげようかなと思ったので」

「うわ〜いいな、羨ましい…」


「あ〜やっと終わった」


私たちが話していると京太郎兄ちゃんは事情聴取が終わったようで戻って来る。


「じゃあ、お先に失礼します」

「お幸せに!」


私が女の人に向かって手を振ると、女の人も小さく手を振り返してくれる。


「ありがとうございます」


優しい人。華奢で礼儀正しくて大人しい人。

いつかまた会いたいな、そう思った。


「桜花、迷子になるなよ」


迷子になったのそっちでしょ!

そう思ったけど京太郎兄ちゃんはポンコツだから絶対に言わない。


「プーさん、買いに行こ」

「えっ?もう買ったけど」

「さすがに自由すぎ…」


つい京太郎兄ちゃんに言ってしまう。その後は色々と質問された。

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