第5話
その日の夕方、遠足の行事反省として先生は集められた。
「ネガー先生のことは残念でしたが、フォンス君の評価はどうしますかな?」
初めに議題を出したのは、胸まで伸びた髭を持つ老人であった。この学園の学園長であり、高位貴族から金を貰っている。
「かのA級冒険者バルフォトに見られている以上、ちゃんと評価をする必要があるのではないですか?」
「しかし……Eクラスの落ちこぼれが一番よい成績というのも外聞が悪いでしょう?」
「バルフォトに見られてさえいなければどうにかできたんですけどね……」
議題に対し、先生たちは口々に意見を言う。しかし、あのCクラスの先生だけはその輪に入らなかった。そんなことよりもネガーを倒した実力の方に考えがいっていたのだ。
「イーゼン先生はどう考えますかな?」
「……はい。やはり評価はそのまま付けるべきではないでしょうか?ここでフォンス氏に低い評価を下し、それがバルフォト氏に伝わると問題があるかと」
「そうですな……今回は仕方がありませんなぁ」
会議の結果、フォンスの実技の点数は満点となった。
次の日、Eクラスに臨時教師が入った。ネガーの怪我が意外に深刻で、数カ月は入院せざるを得なかったようだ。
「今日からしばらくの間Eクラスの教師をすることになったグルマナ・ヴォーテンだ。私は身分で差別はせん、覚悟しておくんだな」
グルマナの姿を見たフォンスを除くクラスの皆は恐怖した。
グルマナ・ヴォーテンの名を知らぬ者などこの国にはおらず、類い稀なる身体能力とスキル『戦鬼』を活かして50の戦争に勝利した怪物であった。
190㎝の肉体と、左の眼を覆う眼帯、教師の格好とは思えない軍服で弱者は見ただけで恐怖状態に陥るのだ。
「そこのお前がフォンスか。軍でも様々な噂を聞いていたが、実際に会ってみるのとでは感じ方が変わるものだな」
グルマナはフォンスを見て、苛立ったような表情を一瞬する。
「このテストだが、フォンスのみ満点であった」
「そんな!?」
「嘘だろ……?」
グルマナはフォンスに難癖付けることなく評価をしているようで、午前中の授業でフォンスの知力が初めて評価された。
午後の授業でも勿論難癖付けることなくフォンスの評価を付けるので、今までの評価がゴミだった分雀の涙ほどだが成績は上がっていく。
その日の夕方、グルマナは学園長室に呼ばれていた。
「グルマナ先生困りますぞ!フォンス君の評価は下げるように言っておきましたでしょう!」
「下らない。あんな怪物をEクラスで飼い殺しにするなど勿体ないでしょう。そんなにあの生徒がいらないのであれば軍が貰ってもいいのですよ?」
グルマナの言葉に学園長は黙った。学園長も欲深いカスだがフォンスの実力には気づいている。
そのため、軍と名が付いているものの傭兵に近いグルマナの軍にあれを渡すなど許してはならなかった。もし仮にあの戦力が王国に向くことがあればフォンスは躊躇なく王国を消し炭にすると分かるのだ。
「しょうがありませんな……」
学園長が私腹を肥やすにはこの国が必要だ。学園長は嫌々ながらグルマナがフォンスを正当に評価するのを黙認するのであった。
フォンスが正当評価されるようになって1ヶ月が経ち、次の行事である闘技大会の出場受付が開始された。
フォンスは出るつもりはなかったのだが、グルマナに説得されて出場することにした。
この闘技大会の優勝者には家とは独立した爵位が与えられる。その爵位があればフォンスはもうダイラム家に帰る必要はなくなるのだ。領地は与えられないので土地なし貴族だが、それでもメルティとの結婚を邪魔する要素が一つ消えるので得だった。
フォンスが頷いたその日から、グルマナによる修業が始まった。本来、グルマナがそこまでする必要はないのだが、グルマナ自身が自分の軍に引き入れたいと考えているので恩を売るついでにまだ対人戦をそこまでしていないフォンスに人と戦う抵抗感を無くしておきたかった。いくら強くても抵抗感があるままでは負ける可能性があるためだ。
修行開始から1カ月、闘技大会の開幕が宣言された。
出場者は全学年合わせて300人、一回戦では50人で戦いを行って生き残った5人が二回戦に出場できる。
フォンスを応援するためにメルティは勿論、バルフォトを含めた冒険者も観戦している。
やはり裏では賭けが行われているが、フォンスは前評判が貴族の間ではよくないのでオッズが179.8倍となっていた。銀貨1枚から賭けが出来るが、銀貨1枚が銀貨179(金貨17枚と銀貨9枚)枚にもなる大穴だ。バルフォトを含めたフォンスを知る冒険者たちは当然ながらフォンスに全賭けだ。
金の亡者と自身の息子たちが活躍するのを楽しみにする貴族たちの思いを乗せて、闘技大会は開始されるのであった。
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