第4話
そんな授業の日々が何日も続いていたが、フォンスはそこまでダメージを受けていなかった。
自室に戻ればメルティがいるためだ。今年で18になるが、フォンスにずっと着いてきてくれているメイドである。一応メルティの両親とは会っており、卒業後はメルティと結婚する許可をもらっているので、事実上の婚約者ともいえる存在だ。
本来、公爵家が男爵家の娘と結婚するなどあってはならないが、フォンスはウノームが当主になったら追放されるだろうためフォンスもメルティも気にしなかった。
「この学園も腐りきっていますね……男子生徒は私を見る目が嫌らしいですし」
「やっぱそうだよな。メルティは美しいから仕方がない部分はあるが」
こうしてメルティと会話をするだけで、フォンスとしては精神が回復していく。こんな掃き溜めのような学園における癒しであった。
入学から1カ月半が経ち、一年生の初イベントである遠足が行われる日となった。
場所は学園から数キロ離れた草原で、授業の一環なのでちゃんと実習が行われる。
今回は、弱めだが魔物が出てくる草原なので討伐実習になる。
学園に入っての初めての討伐実習なので、どのクラスもドキドキしているようだ。
学園から歩いて数時間程で草原に到着したが、今日の実習は危険があるため冒険者も何人か草原で待っていた。
Eクラスと行動する冒険者は1人だが、その人物はフォンスもよく知る者であった。
「フォンスか?Eクラスとは……なるほどな」
「バルフォトさんよろしくお願いします」
それは逞しく発達した筋肉と美しい肢体を併せ持つ、元伯爵家でありながらA級冒険者となった女性冒険者バルフォトであった。
フォンスも度々パーティーを組まされたので、双方がお互いを覚えていた。
そうとは知らないネガーはバルフォトに挨拶をし、この演習における注意事項などを説明し始める。
フォンスや他の生徒が去っていくと、ネガーはバルフォトを会話をし始めた。
「フォンスって生徒は問題児でして……演習の度に他の生徒の取得物を奪って提出しようとするんですよ!」
「……なるほど。悲しきことですね」
「そうでしょう!」
ネガーはバルフォトの内心を察することもなく、にこやかにフォンスの悪評について話し続けるのであった。
それを聞くたびにバルフォトの表情が苦いものに変わっていくのを気づかないままに……。
バルフォトとネガーが話し合っている時、フォンスは勿論討伐対象であるリーフフロッグを倒していた。
リーフフロッグは木の葉に擬態しているカエル型の魔物で、獲物が近づくと飛び上がって体勢を崩して弱毒性の粘液をかけて弱らせる。
しかし、フォンスには『浄化』があるため、自身の周囲を浄化の膜で覆うことでリーフフロッグの奇襲を無効化する。
そして現れたリーフフロッグを剣で切りつけて仕留める。この世界では魔物は死亡すると素材を落として消滅する。
リーフフロッグが消滅したのを確認し、フォンスはリーフフロッグの皮を拾う。
そうして10分ほどで討伐対象であるリーフフロッグ5体を討伐したフォンスは集合場所に戻った。今回はバルフォトがいるので手が抜けないのだ。
「バルフォトさん確認をお願いします」
「ああ、個数は揃っているし問題はないな。合か……「お待ちください!」
バルフォトの言葉を遮り、ネガーがフォンスに詰め寄った。
「フォンス君……先生は悲しいです!あなたのような無能がこんなに早くできるわけがない!つまり他の方から奪ったのですね!」
「ネガー先生、それは無いでしょう」
バルフォトはネガーの言葉に苛つきながらフォンスを引き寄せた。
「フォンスは私の知り合いですが、人から何かを奪うような奴ではないです」
「知り合いなので庇うのは当然のことですからあなたの意見に意味はないです!ずるばかりして恥ずかしくは無いのですか!」
「フォンス、こいつ頭おかしいだろ……」
バルフォトの直球の悪口を聞き、ネガーは罵詈雑言をわめきながら腰に差していた趣味の悪い剣を抜いた。
その瞬間、フォンスはネガーの剣を掴んだ。触れた部分から刃が溶け落ちる。
「ネガー先生、剣を抜くのはやりすぎです」
「私の剣が……!金貨1枚もしたのですよ!」
ネガーは自分の剣が溶かされたのを見て発狂したようで、フォンスに殴りかかってきた。
フォンスはその拳をわざと受ける。フォンスの顔に当たった拳は破壊音を鳴らしながら砕けていった。フォンスの頑丈さにネガーの拳が耐え切れなかったのだ。
「教員による生徒への暴力を見つけました」
それを見ていたバルフォトは瞬時にこの遠足の担当をする先生に魔道具で知らせた。
すぐに担当であるCクラスの女教師がやってきて、バルフォトに聞き込みをする。
「そうですか、それはネガー先生が悪いですね。こちらで回収します」
女教師はネガーを魔力で掴むと、一瞬だけフォンスを見てそのまま連行し始めた。
そして遠足が終了し、フォンスは入学して初の満点を獲得したのであった。
ネガーが回収されている頃、ウノームはリーフフロッグと未だに戦っていた。
「クソ!当たらねぇ!」
ウノームは自身のスキルである『聖剣士』の効果で剣に光を纏わせてリーフフロッグを攻撃するが、まともに鍛えていない体では両手剣の重さに耐えきれないため速度が死んでいる。また、体力がないので数回剣を振るっただけで息切れする程だ。
そのため、リーフフロッグというF級の魔物にすらまともにダメージを与えられないのだ。
こうしてウノームが休憩しながら剣を振るうこと1時間が経った。
「ウノーム様、貴方様の分も用意しているので終わりにしましょう!」
「はぁ……はぁ……そう……だな」
そんなウノームに声をかけるのは、婚約者でもある伯爵令嬢カロー・オテモだ。
汗まみれになりながら、ウノームはカローから渡されたリーフフロッグの皮を受け取ると報告に行くのであった。
勿論、公爵家からの圧力でウノームの成績は最高になる。
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