第6話

 フォンスは6戦目に出場することになった。

 闘技会場にフォンスを含め50人もの出場者が出てくるが、どの参加者もフォンスを見ている。一応Eクラスなので弱いと思われているのだろう。

 ピー!と甲高い音が鳴り、乱戦が始まった。

 周囲にいた参加者はフォンスを狙い撃ちしたが、それをフォンスは軽く回避して剣で首を斬り飛ばす。

 首が切断された瞬間、その参加者は消滅していった。この闘技場では致命傷を負った場合、死なずに場外へ転移させられる。勿論首が切られた痛みはあるので地獄の苦しみを味わうことになるのだが。


「あいつ強くないか?」

「殺しに躊躇が無さ過ぎるだろ……」

 観客は躊躇無く、首を切断したフォンスに恐怖した。強さ以前にそういった荒事に慣れすぎているのだ。

 そのままフォンスは近づいてくる参加者を一撃で仕留めていき、5人の生き残りの一人となった。

 この1回戦で、300人の参加者は30人に減っている。ウノームも生き残っている。


 2回戦目からは1対1の真っ向勝負であった。フォンスは軽々と倒していき、遂には準決勝までコマを進める。

「お前意外と強いな。だが、俺の方が強いぞ!」

 準決勝の相手は入学初日に絡んできたデブ、サクセアだった。フォンスは名前を思い出せない。

「ぶひゃひゃ!死ね!」

 開始の合図とともにサクセアは斧を振り回してフォンスを攻撃する。

 それをフォンスは片手で受け止め『溶解』を使用して溶かす。

「何だそれは!」

 サクセアは自身の自慢の斧を溶かされて驚いていた。その隙をついてフォンスは剣でサクセアの右腕を切断した。

「俺の右腕がぁ!!!殺してやる!」

 サクセアは自身の腕が切断されたことに絶望ではなく怒りをもって襲い掛かって来た。戦士としての素質があるのかもしれない。

 しかし、武器もないのと贅肉で動きが鈍いためにフォンスに掠らせることも出来なかった。

「当たらねぇ……!クソクソクソ!」

 サクセアは更に攻撃を重ねるが、遅すぎてフォンスに当てることが出来ない。

 遂には疲労で立てなくなって倒れてしまった。

「哀れだな……」

 フォンスはそう一言サクセアに声をかけると、剣で首を切り落とした。


 ようやく決勝戦となり、敵はウノームに決まった。

「フォンス様、お飲み物です」

「ありがとうございます」

 闘技場に行く前に、スタッフの人に水を渡されたので飲んで出た。

「正々堂々勝負しよう!」

 ウノームは外面の良さを発揮し、そんな綺麗事を言う。

 そして試合が開始された瞬間、フォンスの体が痺れた。動けない程ではないのだが、戦闘力は格段に低下する。

 フォンスが困惑した隙に、ウノームは輝く剣をフォンスに叩き込んだ。

 フォンスは2m程吹き飛び、倒れ伏した。


 決勝戦までウノームが勝利した理由、それは毒であった。

 弱体化させる毒を入れた水を2回戦目からの対戦相手に飲ませ、弱体化させて倒していたのだ。

 その後、転移した対戦相手にウノームの父親がスキル『煽動』を使用してフォンスがウノームを勝たせるためにしたと言うことで、怒りの矛先をフォンスに向けさせる。

 『煽動』は洗脳系スキルであり、対象がフォンスのことをよく思っていない場合には簡単にフォンスへと怒りの矛先を向けさせることが可能であった。

 これこそがダイラム家現当主であるラーク・ダイラムの戦い方であった。ラークが誰かに情報を伝えた際、その情報を受け取った相手を煽動できるといった効果であり、フォンスの悪評を自身が手紙や会議で他家に伝えることでフォンスに対する評価を低下させることが出来たのであった。


「卑怯な……奴だな」

 フォンスは自身に『浄化』をかけて弱体化毒を無力化すると立ち上がった。

 弱体化していると言っても鍛えてもいないウノームの剣術では軽い切り傷と火傷をする程度でしかなかった。

 そして今、自身にかかった毒は浄化された。ここからが真の勝負といったところだ。

「邪魔をするな!」

 フォンスが立ち上がった瞬間、観客に紛れていたダイラム家の暗殺者がフォンスに毒矢を放ってきた。しかしそれを風魔法を利用して自分の味方がいない方に吹き飛ばす。

 毒矢はフォンスの味方以外のランダムな観客に突き刺さり、観客席は阿鼻叫喚となった。


「ウノーム!」

 フォンスは生まれて初めてウノームの名を呼び、斬りかかった。

 ウノームの肉体性能では本気のフォンスの動きなど見ることは叶わず、四肢が吹き飛んだ。

「無様だなウノーム」

 フォンスは嘲るように言うと、ウノームの胸に剣を叩き込むのであった。


「優勝はフォンス・ダイラムに決定しました!」

 流石に目の前で起きた事実を捻じ曲げることなどできず、優勝はフォンスになった。

「フォンス、君はこれからダイラム家から独立して男爵家を名乗ることが許される。土地は無いが頑張りたまえ」

 フォンスの祖父である国王は苦々しい思いを胸に秘めて堂々と男爵の位をフォンスにあげるのであった。



 それから卒業まで時間は経ち、フォンスは進路を決める時期へとなっていた。

 1年時の闘技大会で『聖剣士』を倒した実力は誰もが認めざるを得ないもので、それから皆は少しずつ手を平を返したようにフォンスに取り入るようになってきた。しかし、フォンスとしてはもう男爵家であるため取り入られる理由が分からなかったので、すべてを拒否していた。

 そして色々考えた末、フォンスはグルマナの配下として軍に所属すると決めた。グルマナ自身の熱心な勧誘も決め手だったが、一番は土地がない貴族なので何かしら武功を上げないといけないためだ。

 もちろんメルティとは卒業後すぐに結婚した。メルティもそこそこ強いので、ダイラム家から送られてくる暗殺者なら『溶解』のスキルでほぼ無効化できるのもあって自衛できる点も良い妻だった。


 こうしてフォンスはたった数ヶ月で評価が良くなり、卒業後はグルマナ軍で多くの戦争に参加するのであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

フォンスの短いお話 季節風 @monsun

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ