第12話
みぞれ混じりの雪が履き慣れたブーツの表面を濡らし始めたころ、私たちはタクシー乗り場に向かって歩いていた。かなり話も弾み、2人ともかなりお酒を飲んでいた。どうも由梨枝の方は、ちょっと飲み過ぎたようで私が手を引いてないと、電柱か何かを私だと思って喋りつづけてしまうかもしれないくらいの状態だった。なんとかお水を飲ませつつ、タクシー乗り場に到着した私は、由梨枝の家の場所は知っていたので、タクシーの運転手さんに申し訳なさそうに由梨枝の住所を告げ、由梨枝を押し込んだ。
由梨枝はうんうん言いながら大人しくタクシーに乗り込み、私に何かを言った。その内容があまりにもショックだったので、雑踏に降りしきるみぞれで聞こえなかったフリをして、由梨枝に手を振りタクシーを見送った。見送ったつもりだったが、もしかしたら立ち尽くしてしまっていただけなのかもしれない。
翌週は仕事に行けなかった。カーテンを閉め切った部屋から一歩も出ることが出来なかった。
ずっと由梨枝から言われた言葉が頭の中を駆け回っていた。
「イントネーションが少しだけ変わったね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます