第11話
東京に帰る週末も、何も毎回1人で過ごしているわけではない。研修でずっと隣の席だったこともあり仲良くなった由梨枝とは2ヶ月に一度くらい会っていた。
「高知の生活はどう?っていってもよくこっちにきてるんだよね?」
「うん。やっぱり私東京の方が好き。由梨枝こそ、人事の仕事はどうなの?」
由梨枝の最初の配属は本部人財部。我が社は人材を人財と呼んでいて、どこか"ちゃんと頑張ってますよ"感がしてむず痒い気持ちになるし、就職活動のときに、会社にエントリーシートを出すときによく書き間違えたのを思い出す。
人財部にも、新卒採用担当、社内の人事担当、給与担当などさまざまな部署があるが、由梨枝は纏っているオーラを武器に、人財部の新卒採用担当として、説明会の運営やリクルーターの活動の他、採用SNSなんかの運用も任されているそうだ。たまに社内報やYouTubeで司会などしている姿は、東京人そのものだった。
「仕事はとても楽しいよ。まだバリューを出せているかは分からないけど、この前も提案した人事の広報戦略が採用されて、実施したらPVが1.3倍くらいになって、とてもいい経験になったんだよね。もちろん、提案を実行するまでがめちゃくちゃ大変だったんだけど。」
東京は高知の3倍くらいの速さで時間が進んでいるのだろうか。同期なのに、かたやお茶汲みで1日が始まる私とは成長速度がまるで違うように思う。
「今度高知に遊びに行くよ、日本酒がとっても美味しいし、実は行ったことないんだよね」
出来れば、高知に来て欲しくなかった。
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