第2話
18歳で、宮崎市内にある小さな高校を卒業したあと、早稲田大学に進学した。
宮崎の街は、湿気と山から吹き降ろす風に包まれている。空気はどこか土っぽく、雨が降るたびにアスファルトの匂いを押しのけて、緑の匂いが立ち込めた。高校時代、周囲はひたすら静かで、車が通る音とカエルの鳴き声だけが日常のBGMだった。
テレビも民放は2局しか映らず放課後に友達と集まるのは決まってイオンモール。新しいショップがオープンしたときだけ、街全体が小さな賑わいを見せた。でもそれも、次第に興味を失うほど単調な日々の繰り返しだった。
宮崎の、いやどこの地方も同じなのかもしれないけれど、周囲の人から聞く都会の情報は偏見で埋め尽くされていた。
地方の人々は都会を恐れ、悪く言う。
歩いていると襲われる、薬漬けされて犯される、タバコと排気ガスで肺がんになりやすい、人の住めたところではない、など漠然としていて、誰も行ったこともないのに、どこから仕入れたかなぜか具体的なエピソードが、宮崎の人を東京から遠ざけていた。
雨の日、傘を忘れて逃げ込んだ民家のガレージで、タオルで髪についた水滴を拭いながら暗く濁った空を見上げた。どこに行く当てもない自分と、一生曇りのままかもとすら思わせる梅雨の街並みが重なって見えた。
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