東京人になりたい私

カワウソランド

第1話

「「まだ東京以外には住めない〜」とか言ってるの?」

ワイングラスを揺らす由梨枝の声に、小さな棘が胸に刺さった。言葉にはしないが、その棘は意外と深かった。

「そんなことないけど」とつぶやき、赤ワインを飲み干して誤魔化した。ムッとした自分を必死に隠そうとするけれど、つい表情が引きつっていたのがわかる。


私はずっと「東京人」でありたかった。自己紹介ではいつも「東京出身」と嘘をつき、喉奥に滲む後ろめたさを押し殺し続けてきた。でも、その嘘こそが、私を「自由」にしてくれると信じていた。


大都会東京、日本の中心。そこで日々漂うように呼吸する。それが私の全てであり、唯一残されたもの。

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