第5回戦『愛を囁き、囁き、囁かれ 上』

「ワォゥーーン!では、盛り上がって行くわんーー!」

「ミャーーォゥゥン!では、行くのニャー!にゃんにゃん!」

そう言って、小春先輩と南先輩が『ニャーニャー』とか『ワンワン』とか言いながら、南先輩が小春先輩を押し倒して本当の犬と猫の様に、おもむろに戯れ始める。

「せ、先輩方?!あ、明日、保健所の人来てまいますから、鳴き声、程々でお願いします……!」

「た、確かに、雪乃言う通りだにゃ……」

「ごめんだわん……。反省するわん……」

「……こ、こほん。で、では、気を取り直しまして、王様ゲーム第2巡目、スタートなのニャ!さぁ、果たして、王様は誰かにゃ……?!王様は……」

そう言って、クジを引いていく。

「にゃ、にゃんと!わ、私だニャー!お題は”これ”を使うのニャ!」

そう言って、小春先輩が取り出したモノ、それは、かなりデカめの、子供位のサイズだろうかーーーーーー、首に大きな赤色のリボンがついた、可愛らしいデザインのクマの人形だった。

「クマ、ちゃん……?」

「人形を精一杯、ですること、なのにゃん!あ、1番目の人が恋人を甘やかす彼女って感じで、2番目の人がツンデレさんなのにゃ!3番目はヤンデレムーブかますのにゃ!」

「1番目は……ウチ、やな」

「2番目は、ボクだワン!」

「3番目は、私、ですね……」

「じゃあ、雪乃からなのにゃ!」

「こ、こほん。じゃあ、行くで」

そして、雪乃先輩は更に熊ちゃん人形の頬を確かめる様になぞりながら、更に言う。

「君が毎日努力してるの、ウチは知ってんで。だから……さ、私の前で位、弱音吐いても、ええんやで。え、なに?疲れているから甘えてさせて欲しい、って?あーもう!そういう所も、可愛ええんやから!君は!ハァ……しゃーなし。ほら、おいで。撫で撫で、したるから……。な?」

そう言って、クマちゃん人形を傾けたと思ったらクマちゃん人形の頭を、太腿の上に置いて、クマちゃん人形の頭を優しく何度か撫でた。

なっ⁈これは、謂わゆる、膝枕という奴ではありませんか⁈えっ、しかも、ちょっとツン目の彼女ムーブからの、膝枕!最高過ぎる!クマちゃん人形が羨ましい!ちょっと場所変わって貰っても良いですかー?!

そして、膝枕をしたまま、雪乃先輩はクマの人形の手を取りつつ言った。

「あのさ、……き、すき……だいすき、やで。あ、愛してる、から……」

そう言って、クマちゃん人形の頬にチュッ、とキスを堕とした。

はぁぅぅぅぅっっっ?!顔と耳が真ッ赤からの、「……き、好き、大好き、愛してる」からのキス、ですとぉぉぉ?!てっいうか、方言がモロ出てるし!普段、「スンッ……」ってしてる人の、顔赤面真ッ赤からの「……き、好き、大好き、愛してる」からのキス、だとっ!?その効果たるや!言葉と行動自体は至ってシンプルであるものの、それ故に効果は絶大……!嗚呼!クマちゃん人形が羨ましすぎる!熊ちゃん、今だけで良いから、そこ変わって貰っても良いですかッ?

「あはははははっ!もう、耐えきえられないのだ、わん!人形に愛を囁いてるっていう、状況が……!しかも相手は熊ちゃん人形っていう……!あの雪乃が……!面白すぎるなのだ、わん!!」

「……むむ。南先輩も今から、同じ事するんッスよ……」

「分かってるだわん!」

「さぁ、二番手!南選手なのにゃん!」

「えー?なになにー。ふむふむー。ボ、ボクのこと、好きだ、愛している……だって?もー。ボ、ボクの事褒めても何も出ないんだから、ね?!もー、でも、そーゆーの、べ、別に、嬉しくない訳じゃないし?!なッ、そんなツンな所も可愛いだって?!ふ〜ん。そこまで言うなら、し、仕方ないなぁー。あ、甘やかしてあげなくもなくもなくもなくもなくも……ないんだからね?!」

そう言って、クマちゃん人形の腕をギュッ、と握ったと思ったら、人形の肩にストッ、と頭を寄せ、南先輩は熊ちゃん人形の耳元で囁いた。

「ほ、ほら。ボ、ボクの事、な、何でも、す、好きにしなよ……」

なっ?!これは……ツンデレムーブからの、肩トン&『な、何でも、好きにしなよ』(究極の甘々デレ)だとっ?!何だ、この可愛いとエチチの融合体はっ……!?というか、先輩何でもって、言いましたね、今?!言質は取りましたからねッッ……!?というか、熊ちゃん人形、そこの隣変わって……?!

「くぅっ……!みなみが、可愛いのにゃ!」

「は、恥ずかしい……の、だわん……」

そう言う、南先輩の耳は赤面していた。

「最期は綾ちゃんだにゃん!はい、包丁なのにゃー!」

「エッ?!何で、包丁なんか、持ち歩いてるんですか?」

「だ、大丈夫なのにゃ!150円ショップで売ってる、玩具なのにゃん!」

慌てて、小春先輩が、包丁をシャコシャコと言わせながら、言い直した。

「そ、そうですか……。あ、安心しました……?」

私は、包丁を背中に隠しつつ、熊ちゃん人形に向かい直す。

「ねぇ。なんで……?なんでなんでなんでなんで?そんなににスマホばっかり、見てるの。ほら。私のこと、ちゃんと見て?あ、もしかして……。私と居るの、そんなに、楽しく無い?あー。私の事、嫌いになっちゃった?私はこんなにも、あなたの事が好きなのに、大好きなのに、愛しているのに……。あっ、今、私の事面倒臭い女だと思ったでしょ?え。そんな事無い、君の事好きだよ、って?へぇー。ホント、かなー?あはっ。……だったらさぁ、身体で証明して?」

私はいつしか、クマちゃん人形を押し倒して、馬乗りになり、熊ちゃん人形の頭部の近くに、玩具の包丁を突き刺していた。しゃこり、と包丁が音をたてる。

「ほら、私の事好きなんだよね?ねぇ。……き、好きなの、大好きなの、愛してる、愛している、の……アナタの事!私、アナタが居ないと生きられない。アナタが離れたい、って言っても離れない!離す気なんて無いの!だから、さ……。ちょっと、アナタの身体に私の刻印シルシを刻ませて?良いよね?誰が見てもだって、分かる様に。だから。だから、さ。……ちょっとだけ痛いかも知れないけど、ちょっとの間だけ我慢して……。ね?……?」

そう言って、私は、熊ちゃん人形に対して、玩具の包丁を振り上げていた。しゃこり、とまたもや、包丁が音をたてた。

「ヒュー。綾ちゃん、やるねぇ……」

「す、凄ッ!めっちゃ、迫力あったのだわん!」

「す、素晴らしい……のですにゃん!『面倒臭い女だと思ったよね、今?』というテンプレセリフからの、押し倒してエチチな雰囲気になったと思ったら、実はそうじゃなくて、今度は『包丁でアナタに刻印シルシを刻ませて……』宣言!なんてッ!なんてッ、素晴らしいのだにゃん!」

「はーい、こはるん。気持ちは分かるけど一旦ストップだわん。後、こはるんが今日で一番実況ぽっい事してるんだわん……」

「あ……。ゲームに集中し過ぎて、忘れてたのにゃ……」

「実況は一旦置いておくとして……。小春先輩、ホントにヤンデレ好きっすよねぇー」

「うん、大好き!あ。でも、普通にデレデレちゃんも大好き!あ。……なのにゃん!綾ちゃん、ヤンデレやってくれてありがと、なのにゃん!」

「いえいえ……。とういうか、むしろヤンデレ上手く出来てるか、不安で……」

「上手く出来てたにゃん!あ、綾ちゃん、屈んでもらってもいいのにゃん?」

「は、はぁ……」

そう言って、私が屈むと小春先輩の手がポンッと私の頭に乗って、そのまま頭を優しく撫で撫でされる。

「ご褒美だにゃー。撫で撫でーなのにゃー」

「あっ、ありがとうございます……!?」

「あっ、綾ちゃん、ズルいだわん!ボクもに、撫で撫でされるんだわん!」

「綾ちゃん、これは、ちょいと頂けへんなぁ……。小春先輩の撫で撫では至高、いいや、最早ご褒美に等しいんやで……。あ、小春先輩。是非、ウチにも、お願いします……!」

「ああっ!ちょっと、二人共⁈わ、私の手は二つしか無いのにゃ……!」

それから暫くの間、三人共が代わり番こで、小春先輩に『撫で撫で』されてしまった。


ーーーー  

「さて、撫で撫でも堪能した事ですし……。先輩方、6回目、といきましょうか」

「雪乃、望む所だわん!」

「の、望む所だにゃん!ではでは、第6回目の王様は……」

そう言って、全員がクジを引いていく。

「あっ、王様はボクだわん!お題は……『愛してるゲーム』だわん!ルールは簡単で『愛してる』って、言い合って先に照れた方が負けだワン!後、台詞も行動も、何やってもOKだわん!」

斯くして、南先輩の鶴の一声により、「愛してるゲーム」が開始される運びとなったのだ!

           

   (次回『愛を、囁きたいッッ!! 下  (愛してるゲームですかっっ?!)』続く)

         

     次回は2月16日(日)の11:58更新です!お楽しみにーー!

               

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