【小さじ1】溜め息の理由
働き始めて何年か経った頃の話です。
仕事が終わった夜、ひょんな事から「心霊スポットに行こう」という話になりました。若い頃にはまぁまぁある話です。
当時住んでいた辺りにはいくつか有名な心霊スポットがあったのですが、同期が提案してきたのは、山合にある古いトンネルでした。
隣の市に繋がるトンネルでしたが、新しく広いトンネルが出来た為、当時でも既にほとんど使われていませんでした。
そこに「ずぶ濡れの女性が出る」という噂があったんです。
当時、私には半同棲している彼女がいました。私が帰るまで起きて待っている子だったので、電話で「ドライブに行くから少し遅くなる」とだけ伝えて、トンネルに向かいました。
同期の車に乗り込み、男三人、女の子一人でそれなりにギャーギャー騒いでトンネルを抜け、別の道からぐるりと回って帰りました。
ずぶ濡れの女性は勿論、心霊的な何かはありませんでした。
アパートに戻ると、部屋の電気が点いています。「起きて待っててくれたのか…悪い事したなぁ…」と思って玄関を開けると、彼女が眠そうに、そして不機嫌そうに立っていました。
「ごめん、遅くなって」と謝るより前に、彼女が口を開きました。
「あんまりさ、ああいうとこ行かない方が良いよ」
初めは意味が分かりませんでしたが、どうやら彼女は、私が心霊スポットに行った事を知ったようなのです。
…じゃあ、どうやって?
「え、なんで分かんの?」
逆にテンションが上がった私に向かって、彼女はベッドに潜りながら面倒そうに言いました。
「言っても信じないよ」
結局、彼女が私の動向を知った理由は、今も分からないままです。
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