第7話

「おねえさん。」


「なんだい大学院生君。」


「おねえさんはこれまでその瞬間移動能力を何回使いましたか?」


「えーっと、3回かな。」


・大学院生君の研究室に飛んで一回

・大学院生君と公園に飛んで一回

・永井さんのもとに飛んで一回


「おねえさん。」


「なんだい大学院生君。」


「別におねえさんを疑っているわけではないのですが、一つ僕の推理を聞いてくれませんか。」


「疑っているときしか発さないセリフだね。」


「おねえさんが瞬間移動をする度に、代償としておねえさんの身の回りのものがランダムに一つ吹き飛ぶんですよね。」


「君やっぱり意識会ったんだろう。気絶しておいたふりしてさ。」


「気のせいですよ。」


「まあ嘘ついてもしょうがないな。そうだよ、吹き飛ぶよ。」


「なんで代償がそういう内容なのかはあとで佐藤さんとやらに聞くとして。まず3回の瞬間移動の代償のひとつは、おねえさんのブランコ端末だと思うのですが。おそらく僕と一緒に公園へ飛んでいったときに。」


「なるほど、名推理だね。」


「そうとしか考えられませんよ。」


「まあぶっちゃけ私も代償のせいだろうなとは薄々思ってたね。」


「そして次が重要なのですが、僕の研究ノートも代償として吹き飛んだんじゃないかと思うのですが。」


「それはないよ。」


「だって、今日、僕と初めて会うとき、研究室へ瞬間移動したんですよね?僕の知らないときに。」


「それはそうだが。」


「おねえさんが研究室へやってきた時間くらいにちょうどノートがなくなったんですよ。そうとしか考えられませんよ。」


「落ち着きたまえ大学院生君。」


「どう責任とってくれるんですか。」


「落ち着きたまえ大学院生君。」


「僕のこれまでの研究は。論文は。卒業は。」


「落ち着きたまえ大学院生君。」


「もしそうだとしたらおねえさんを嫌いになってしまいそうですよ。」


「おおおお、おおおお、おお、おち、、、、、つきいいいい、たまあああ、えええええええええええ、だ、だ、だ、だ、だいいいい、がくがくがくがくがくがくいいいいいいiiiiiiiんんせいくうううううううんん。」


「落ち着いてくださいおねえさん。」


「失礼、取り乱したね。しかし大学院生君。私のブランコ端末が吹き飛んだのはほぼ瞬間移動のせいで濃厚だが、君の研究ノートは違うよ。」


「どうしてそう言い切れるんですか。」


「だって瞬間移動で吹き飛ぶのは『私の身の回りのもの』だよ。ノートは君の私物じゃないか。」


「まあ、確かに。」


「それに『がっちりきんこ』くんの『き』と『ち』を入れ替えたのは誰だい。それに関しては絶対に瞬間移動のせいじゃないよ。」


「それも確かにそうですね。」


「だから、君のノートに関しては必ず別の犯人がいるよ。きみの下半身ブレインを侮辱した非礼極まりないやつが。」


「そうですね。こんな事態なもので、僕も落ち着かなくて。ついお姉さんを疑ってしまいました。」


「ははは。」

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神様は素行不良 トンケル @Tonkeru

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