第四章奪われた記憶
「この世界の住人は、全員が超能力者だ。ただし、そのことを誰も自覚していない。」
黒いスーツの男が淡々と告げた言葉は、透とヒカリの常識を根底から覆した。
「……どういうこと?」
「お前たちはすでに気づいているはずだ。自分たち以外にも能力者がいるのではないか、と。」
確かに、最近ヒカリは他のクラスメイトの心の声が微かに聞こえる気がしていた。透もまた、ヒカリと関わるようになってから、周囲の反応にわずかな違和感を覚えていた。
「そう、それは“共鳴”が広がっているからだ。」
男の声が重く響く。
「本来、人は皆、能力を持って生まれる。だがある人物が、“自分だけが能力を使える世界”を作るために、お前たちの記憶を消し去った。」
「記憶を……消した?」
透の胸に、不快なざわつきが広がる。
「そんなことが……あり得るのか?」
男は無表情のまま頷いた。
「そいつは、複数の能力を持っている。そして、その中の一つが“記憶を消す力”だ。」
透とヒカリは言葉を失った。
「つまり……私たちは、生まれたときから能力を持っていたのに、それを忘れさせられたってこと?」
ヒカリが震えた声で問いかける。
「そうだ。お前たちだけじゃない。この世界の人間すべてが、能力の存在を忘れさせられている。」
「……」
透は唇を噛んだ。
「……なら、俺の祖母はなぜ能力を知っていた?」
彼の祖母は未来視の能力を持ち、透の力についても教えてくれた。もし全員が記憶を消されているなら、彼女だけが覚えていた理由は?
男は一瞬だけ目を細め、低く呟いた。
「すべての人間が記憶を消されたわけではない。」
「……?」
「“例外”がいる。」
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