第2話シナリオ

第3話

翌日、朝目覚ましの音でリザは目覚める。そして自分が未だに前世の記憶を持っていることを確認する。思っていた異世界ライフとは違うなあと思うが今日も仕事はあるので仕方なく出社する。出社するとすぐ上司が駆け寄ってくる。そしてちょうどクライアントがきたところだから一緒においで、と会議室に連れて行かれるのだった。


 会議室に到着すると、中にはすでにクライアントがいるようで身構える。上司によるとクライアントは「冒険者用の魔法道具を作る会社」だそうだ。社名を聞くと「サクセス」という名前だそうだがリザは聞いたことがなかった。

 会議室に入ると、クライアントのおじさんたち3人は勢いよく立ち上がり、口々に「今日は何卒よろしくお願いします」とペコペコ頭をさげる。いやいや、そちらがお客さんなんですからそんなに恐縮なさらないで…と思うリザだが、なんだか訳ありのように感じる。

 詳しく話を聞くと「冒険者用の魔法道具」というのは老舗のお店が市場を独占しているそうで、サクセス社のような小さなお店はなかなか評判にも上がらず、だからと言って大きい会社のようにコマーシャルをたくさん打つことはできないため、非常に苦しい思いをしているという。どうにかいい方法はないかと、弊社にすがりついてきた、というわけだった。上司はこの面倒そうな案件のチーフをリザに任せてきたのだった。


 正直困ったな、と頭を抱えるリザだったが、どうしてそんな独占市場である魔法道具の会社を立ち上げたのか聞くと、おじさんのうち一人、サクセス社の社長が口を開いた。冒険者というのは子供達の憧れの職業No.1であり、どうしても子供達に希望を与えられる仕事がしたく魔法道具を作る会社を立ち上げたのだと言う。道具にはかなりこだわっていて、子供でも持ち上げられる素材を起用した子供用の練習用魔法道具だったり、初心者でも使いやすい魔法の発動率をあげた魔法道具だったり、プロ向けではなくアマチュア向けに道具を展開している、というのだった。(ちなみに子供はみな6歳の頃に冒険者ギルドで職業の適正検査をしてもらえるが、そこで表示されるのは、冒険者、賢者、と言った名高い職業ばかりであり、会社員など名前のつかない普通の職業は表示されない。現代でもよくある職業適性検査のような結果が出るもの)

 話を聞いたリザは、それではこれから有名冒険者を目指す若者に無償でサクセス社の魔法道具を使ってもらい、冒険者はそれぞれ自分の活動を流すチャンネルを持っているため、それに使っている姿を投稿してもらいましょう、と提案。サクセス社の人たちは涙を流しながらそれを了承する。


 そして、リザは早速冒険者ギルドに行き、これから依頼を引き受けようとしているDランクの冒険者を捕まえ、事情を話す。そんなよく知らない会社の道具なんか…と渋る冒険者だったが、実際に持たせてみると態度が一変、喜んで使うということだった。そしてその冒険者は無事ゴブリン退治のクエストを完遂し、約束通り自分のチャンネルにて宣伝をしてくれたのだった。そしてその冒険者はサクセス社の道具で少しずつ知名度をあげていき、全国放送されるCランク昇格試験にて大きく活躍をする。その様子が評判となり、サクセス社の道具はどんどん売れていくようになったのだった。


 お礼に来たサクセス社はリザに「子供達の未来への夢を応援することができ念願の夢が叶った」と告げる。それを聞いたリザは自分がなぜ広告代理店に入社したか思い出すのだった。その理由は「広告の力で人を笑顔にしたい」と思ったからだったのだ。リザは初心を取り戻し、明日からも仕事を頑張ろうと決意した。

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