第4話 ありがとう

ある小さな村に、心優しい魔法使いのエリオットが住んでいました。彼は普段から村人たちを助け、悩みを聞いたり、病気を治したりしていました。エリオットには、特別な力がありました。それは「命を操る魔法」。命を助けることができる一方で、それを使うには大きな代償が伴うのです。


ある冬の日、エリオットは村の広場で一人の少年、アレンと出会いました。アレンは小柄で、病弱な体を持っていました。彼の父親は村の鍛冶屋で、母親は長い間病気で寝込んでいるため、アレンは一人で過ごすことが多かったのです。


その日、アレンは村の外れで倒れているのを見つけられました。彼の体は冷たく、顔色も悪かった。村の人々は助けようとしましたが、アレンの病気はすでに進行しており、手遅れの状態でした。


エリオットは、アレンの命を救うために魔法を使う決意をしました。しかし、エリオットも知っていたのです。命を救うためには、その代償として別の命を差し出さなければならないということを。


「君の命を救うために、私の命を使おう」と、エリオットは静かに言いました。


アレンは驚き、涙を浮かべて彼を見上げました。「そんなこと、できません!あなたは、私の命を助けてくれたんだから、何も犠牲にしないでください!」


エリオットは微笑んで言いました。「君にはまだ未来がある。君の命を救うことで、少しでも世界が良くなるのなら、それは私にとって価値のあることだ。」


エリオットは魔法の呪文を唱え、アレンの病を取り除きました。だがその瞬間、エリオットの体はどんどん透明になり、消え始めました。彼の命はアレンに注がれ、エリオットの姿はとうとう完全に消えてしまったのです。


アレンはその後、元気を取り戻し、成長していきました。彼は村のために尽力し、エリオットの犠牲を無駄にしないよう、日々精一杯生きました。エリオットのことを忘れることはありませんでした。心の中で、彼に感謝し続けたのです。


時折、夜空に輝く星々の中に、エリオットの姿を見たような気がして、アレンは静かに呟くのでした。


「ありがとう、エリオット。」


そして、彼は力強く生き続けました。



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