第2話 未来に
ここは、静かな町外れにある古びた孤児院。年老いた院長、数人の優しい保母さんたち、そしてたくさんの子供たちが住んでいる場所です。しかし、ここにはどこか寂しさが漂っていました。孤児院に住む子供たちの多くは、親を亡くしたり、行方不明になったりした過去を持っています。
物語の中心となるのは、7歳の小さな女の子、ミナ。彼女は物心ついた頃から孤児院で育ち、寂しさを感じながらも、院長や保母さんたちに愛されていました。しかし、ミナの心の中にはいつも大きな空虚がありました。彼女はずっと自分の両親がどこにいるのか、なぜ自分だけが孤児院にいるのかを知りたがっていました。
ある日、院長が古い机を整理していると、一通の古びた手紙を見つけます。その手紙は、まだ消えかけた文字で書かれており、宛名は「ミナちゃんへ」と書かれていました。院長はその手紙を見て驚き、少しの間黙っていましたが、やがてミナにその手紙を渡すことを決めます。
ミナはその手紙を手に取ると、震える手で封を開けました。手紙には、彼女の母親からのメッセージが書かれていました。「愛するミナへ。あなたがどれほど私の宝物だったか、知ってほしい。でも、私たちが一緒にいることができなくて、本当にごめんなさい。いつか、きっとまた会える日が来ることを願っています。」
ミナは手紙を読みながら涙がこぼれました。母親が自分を思っていたこと、そして別れなければならなかった理由が書かれていないことに、混乱と悲しみが湧き上がります。手紙の最後には、「いつかまた会おうね」という言葉だけが残されていましたが、その言葉がどれほど遠い未来を意味しているのか、ミナにはわかりませんでした。
その日から、ミナは毎日その手紙を大切に持ち歩きました。孤児院のどこかで、何かの拍子に母親が現れるのではないかと、心の中でいつも期待していたのです。しかし、月日が流れるにつれ、その希望は薄れていき、次第にミナは現実を受け入れるようになりました。
年が経ち、ミナは成長し、12歳になりました。ある日、再び院長が彼女に向かって言いました。「ミナ、あなたの母親について、もっと知っていることがある。」ミナは息を呑みました。院長が続けて話すには、母親がミナを手放さざるを得なかった理由は、病気で命が尽きる寸前だったからだということでした。ミナの母親は、手紙を書いた後にすぐに他界してしまったのです。
その事実を知ったミナは、心の中で何かが崩れ落ちるのを感じました。しかし、同時に、母親が最後まで自分を愛し、いつか会えることを信じてくれていたことを深く理解したのです。彼女の心の中に残る母親の温かい手紙は、永遠に彼女を支える力となりました。
そして、孤児院を出る日、ミナは大きな一歩を踏み出しました。涙を流しながらも、彼女は空を見上げました。母親がいつか、どこかで見守っていることを信じて、彼女は未来に向かって歩き出したのです。
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