赤い羽根

@1232123

赤い羽根

 僕の学校では赤い羽根募金が話題だった――正確には、赤い羽根を使ったゲームが流行っていた。


 羽根を相手に渡せば、代わりに命令を受ける。

 その命令は「絶対」。どんなものでもだ。


 僕らの小さな学校には、遊ぶ場所も限られていた。クラスメイトも少なく、僕らはこの奇妙なゲームに夢中になっていた。


 最初は軽い罰ゲーム――「誰々に告白しろ」「先生にちょっとしたいたずらをしろ」――といった他愛のないものだった。


 けれど、それは次第に過激になっていった。

 命令の内容はエスカレートし、羽根を渡すたびに、理性という歯止めが消えていった。


 不思議なことに、命令を受ける相手はいつも決まっていた。そして、僕が選ばれることが増えていった。


「虫を食え」

「裸で校内を走れ」


 命令はどんどんエグくなっていく。言葉にできないような内容もあった。


 それでも、僕は誰にも命令をしなかった。

 ただ羽根を持ち続けた。


 僕を除けば、羽根は10本。クラス全員分。

 僕は静かに考えていた――どんな命令をしようか、と。


 その考えだけが、妙に心を躍らせた。

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