2.5話

▼登場人物▼

・廿六木熾雨(とどろきしう)

・秋羅剣(あきらつるぎ)




「廿六木先輩、班を空けて一体どうしてたんです?」


彼は秋羅剣。

治安維持公共管理局の捜査官の一人。

僕と秋羅くんは、捜査課α-III(アルファスリィ)班の一員だ。

といっても各班には、それぞれ2人しかいない。

規則として、捜査官は二人体制で捜査をしなければならないのだ。

単独行動は許されていない。


「単独捜査をしていました」

「規律違反じゃないすか」

「局長命令です」

「…」

「秋羅くん、これを…」


僕は勿勿耶の日記を秋羅くんに渡した。


「拝見します」


秋羅くんはページを開き黙々と読み進めた。

最後まで読み切り、ゆっくりと口を開いた。


「先輩…これはッ…」

「…」

「相当愛されてますね」

「はは…」

「先輩が規律違反してまで犯罪者とラブロマンスしてたとはね…」

「アルファスリィの班長失格ですね。僕を咎めますか?」

「それは先輩次第でしょ、彼女のことどうなんです?」

「君には敵いませんね、僕は勿勿耶を愛していますよ」

「どーせ、先輩のことだから。裏で糸を引いている存在の目星が付いているんでしょ?」

「ええ、状況から推察するに、彼しかいないでしょう」

「ということは、アルファスリィ出動ってことっすね」

「ええ、お待たせしました」

「しかし、この手記は…」


秋羅くんは言い淀んだ。


「当初、僕に与えられた任務は、勿勿…亞曇ヒカリの警護。しかし彼女は、アルファスリィの捜査対象、"Black Fairy"その者だった…」

「意図がわかりませんね…」

「最終的な着地点として、状況証拠しか掴めないでしょう。だから強行手段を取らざるを得ない…」

「いくらなんでも危険です!」

「だから…、君にこの日記を預けます。僕に何かあった時は…!」


緊張が走り、お互い口を閉ざしてしまった。

勿勿耶と出会ったこの場所ならと、秋羅くんには境界線付近まで来て貰った。

しかし。

超監視社会において、この会話も監視されている可能性がある。

決定的な発言は憚られた。

沈黙を破ったのは、秋羅くんだった。


「しかし、浮いた話が全くない廿六木先輩の鉄壁を崩すなんて、一体どんな人なんです?彼女」

「そうですね、彼岸花のような、薔薇のような、スノードロップのような…?」

「全然わかんないっす…あと、そこはクローバーじゃないんですね…」

「仕方がない、特別ですよ。似顔絵を描きます」


僕はその辺にあったペンと紙で勿勿耶を描いてみることにした。


うん。

我ながら中々良い出来だ。


「…」

「どうしたんですか秋羅くん、口が開いてますよ」

「いや…」

「ほらよく見て下さい。これが勿勿耶です。可愛いでしょう?」

「いや、いやいや!先輩、ホントに愛してんすか?」


〜fin〜


※時系列は「ゴーストランスミッション‼︎」の後となります。

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