最終話「終天の囚人」
▼登場人物▼
・廿六木熾雨(とどろきしう)
・天道局長
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「次に君はこう言いたいのだ。廿六木捜査官」
治安維持公共管理局の局長、天道局長と相対している。
僕は、勿勿耶の日記を複製した物と、収集した情報を武器に糾弾している。
「私が、この手記にあるxxxで。"Black Fairy"事件の黒幕だと」
「そうです」
「だが、亞曇ヒカリは1年前に亞曇邸と共に、焼け死んだ。まさか死人が蘇ったとでも?」
「遺骨を調べました。その組織情報は、この手記から採取した亞曇ヒカリの組織情報と一致しませんでした」
「墓荒らしなど…」
「両親が殺害された亞曇ヒカリの後見人となった人物は、天道局長、あなたです」
「そうだ、しかし彼女は焼身自殺してしまった」
「組織情報以外に、もう一つ」
「聞こう」
「黒木田マキの消された網膜記録を復元しました」
「…」
「映像を見ますか?」
僕は、天道局長にメモリを差し出す。
「その必要は無いだろう」
「では、認めるのですね」
「あの子にこんな古典な趣味があったとはな」
天道局長は、日記の複製物を机に叩きつけた。
だが、その表情はどこか穏やかに感じた。
「あの子に、ヒカリくんに関係する人物の中で、これらが可能な者は私しかいないだろう」
「なぜこんなことを…!あなたならこの復讐劇を止めることが出来たはずだ」
「必要なのだ、巨悪を捕えるシステムが。それを"Black Fairy"としただけに過ぎない」
「システム…?そんなもののために、勿勿耶や、それだけじゃない!多くの人を利用したのか!?」
「そうだ。」
「あなたこそが巨悪だッ…!ご同行、願います」
「私を犯罪者として糾弾するか、廿六木熾雨」
「そのためにおれはここに立っている!」
「では、問おう。罪とはなんだ?犯罪者をどう定義する」
「あなたの詭弁を聞くつもりは無い。だが…、法を侵犯した者が罪人だ。あなたのやり方は新しい罪人を産むだけだ」
「前提条件は定義したな、では今度は私の番だ」
「…」
「君が法に則った信念を持つならば、なぜヒカリくんが"Black Fairy"だと知りながら逃したのだ?」
「…」
こう来ることは想定していた。
だからおれは。
「議会の定めた法を遵守するというならば、君も立派な犯罪者だ。廿六木捜査官」
「…」
「君は"Black Fairy"を逃した。これは紛れもない真実。本当は君もこう思っているのだ。今の社会が正当性な効力を持っているのか、と」
「なんだと…」
「つまり、私と君は同じ意志を持っているわけだ」
「主義者なのか…?」
「主義者?それは少し異なるな。私は間違えて進んだ文明に憂いているだけだ。ならば、議会に手綱を握らせ続けている訳にはいかないのだ」
「…ッ」
おれは銃口を天道局長に突きつけた。
だが、天道局長は動じることなく続けた。
「そう、早まるな。君が自身を賭ける場所はここでは無い」
「天道局長、なぜあなたはアルファスリィに、いや僕に。"Black Fairy"の捜査と、"Black Fairy"の警護を命じたのですか?」
「…」
「この二つの指令は矛盾している、なぜこんなことを!」
「君を試したことは詫びよう」
「…」
「私は、君の出す答えが欲しかった。私と同じ運命を歩むに相応しいか」
「まんまと手のひらで踊らされていたわけですか…」
「私は君を高く評価している。いいや、この世界の誰よりもだ。君は"super special"だ。」
「今度はおれを利用するのか、次のシステムとして…。」
「それは違う。君は私と共に歩むべきだ」
「撃ちます。地獄で会いましょう」
「そんなおもちゃでは私は殺せんよ」
「…」
「君は世界を知らな過ぎる。どうしても私を裁きたいのならば、知見を広げることだな」
虚勢とは思えなかった。
「そうですか、さようなら」
銃弾は、天道局長の脳天に直撃した。
局長は地に伏した。
〜終天の囚人〜fin
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