作品背景

-超監視社会-


2030年

世界は崩れ、地上のほとんどは砂に埋もれてしまった。

時代と共に失われつつあった古代由来の神秘。

大きすぎる力は、持つ者の倫理が試された。

一人の少女は最愛の姉と袂を分ち、世界に神秘を行使した。

混沌の幕引きはそれほど時間を要さなかった。

世界に存在した神秘の力は、残さず断罪された。

たが、人々は震撼していた、

大きすぎる力の恐怖に。

残された一億に満たない人類は、砂に埋もれた地上と灰色に染まった地上の狭間に境界線を敷いた。

過去に蓋をするように。

内界と呼ばれる灰色の世界。

外界と呼ばれる砂の世界。


2045年

15年の月日では、人々の抱いた疑心は晴れることが無かった。

人の作る世は、灰濁に満ちていた。

再び秩序が叛逆されることを恐怖した

為政者たちは、人民を縛り付ける計画を立案した。

国民番号を認識するタグチップナノマシン。

ナノマシンは首から接続され、異物は遺伝子情報と混ざり合う。

街中に張り巡らされたセキュリティセンサーはナノマシンと反応し、不穏因子に対して有効とされた。

そして、眼球に埋め込まれたマイクロレンズにより視覚から得られる情報は、映像化され罪を糾弾するための証明と抑止力となる。

為政者たちは生き残った一億の人類に、監視・管理・干渉を強要した。


当然の如く、人民が納得することは無かった。

為政者たちは、反対勢力に対して軍事力を行使した。

再び多くの血が流れ、悲劇は繰り返されてしまった。

10年ほど2つの勢力の衝突は続いた。

こう着状態が続き疲弊した反対勢力は、折り合いを付ける条件を提示した。

反対勢力"さんかくかくめい"は砂の世界にエグゾダスすることを条件に、

灰色の世界に軍部解体することを要求した。

2つの勢力は、それぞれの世界に別れることで均衡を保つこととなった。

2055年終戦。


2059年

灰色の世界を生きる全ての人類は、人体に改造を施され社会に監視されながら生きていた。

新生児には、生後間も無く処置が施された。

やがて砂の世界から帰還する者も現れ始めた。

彼らは内界での出来事を一切記憶していなかった。

砂の世界に赴く前と比較して若返った者も居れば、酷く老けた者も居た。

このことから砂の世界には失われた神秘が残されていて、直接的時間軸が接続されていないと推察された。

帰還者には"f"の番号を埋め込まれ、厳重に監視された。

帰還者は灰色の世界では差別の対象ともなった。

真実を知らない者の目には、帰還者たちは2度世界を裏切ったように映るためだ。

砂の世界に神秘が残存していることを恐れた為政者たちは、境界線を神秘で塗り固めた。

神秘の防壁は何人たりとも、通行することを阻害した。

為政者たちは神秘を隠していたのだ。

最愛の妹を断罪した一人の少女に責任と神秘の力を押し付けることで。

砂の世界に反対勢力を封じ込めることに成功した

為政者たちは、"さんかくかくめい"との約束を反故にし、

治安維持公共管理局を設立した。

表向きは軍事力を保持していないとされているが、警察権と武力を有していたことから明白だった。

それに治安維持公共管理局の前身となった組織は、失業した軍人たちのリクルート先でもあったからだ。

支配する者とされる者の格差は広がり、信じる心を既に失っていた人類は、深淵へと堕ちてしまっていた。

為政者たちは超監視社会を創り上げ、犯罪の撲滅を掲げてはいたが、犯罪発生率は横ばいだった。



治安維持公共管理局の捜査官、廿六木熾雨は灰濁の社会で罪と対峙していた。

彼には特殊な能力があった。

"Eternal priod"

廿六木熾雨は揺らぎつつある社会の渦で、正義を持って罪人と相対する。

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