第7話 危機と禁忌

国王が続けるはずだった言葉を継いだのも、誰でもない者であった。どこからともなく現れた、ヘイグターレの3人にとって誰もが見覚えの無い、一組の男女。全身黒ずくめの格好と溶け合うような黒髪、2m近い長身と鋭く光る薄緑の眼、やや褐色の肌の男。その男から頭二つ分ほど下だが、女性にしてはとても高い身長、同じく黒ずくめだが、燃えるような緋色の髪と瞳を併せ持つ色白の女。そんな彼らに対して一つ。確実に言えること。───明らかに城内、ましてやヘイグターレの関係者ではない。門兵も、守衛も、使用人も、そして彼らでさえも。誰一人その存在に気付くことが出来なかった。いや、させなかったのであろう。明らかに分かる、異常な脅威。その圧倒的なまでに異質な、危険予知の文字が、本能が、直接脳を揺さぶるような強者の雰囲気に、テレンツィオとタバロが咄嗟とっさに魔法陣を展開、臨戦態勢に入ろうと本能で感じ取った───ときには既に、彼らは座っていた各々の椅子に縛り付けられていた。もちろん身体は言うことを聞かなくなっていた。―――何故だ、いや何時いつだ?拘束魔法がかけられていることに気付き、憔悴しょうすいする二人に、男の方が声を発した。


 「手荒な真似をしてすまない。だが抵抗しなければ危害を加えるつもりは毛頭無い」


 無表情はおろか、言葉こそ聞こえたが口すらも動いたか怪しいほど、男に動きはない。ただそこに立ったままの男女。使用人たちが駆けつけて来ないということは恐らく彼らも等しくこの拘束魔法をかけられていることだろう。しかし拘束魔法というのは、


 「拘束魔法、すなわち聖属性魔法が使える者がいるとは信じられない───そんな顔をしているな、タバロ・ウェルデミフ、テレンツィオ・ドアミュール。まあ、そちらにとっては由々ゆゆしき事態なのかも知れんな。だが我々にとっては些末さまつなこと」


 今度は女が口を開く。冷徹とはまさにこのこと、発せられただけで空気が冷えるような無機質な声。髪と対極にあるような、蒼白みのある肌。切れ長の目が一層細められる。この一瞬の出来事に、唯一拘束魔法をかけられていない国王は、目こそ見開いたが、努めて平静と沈黙を保つ。わずかな沈黙の後、女が続ける。


 「とはいえ、このような真似をしておいて名乗らぬのは無礼に当たるだろうからな。先に名乗るべきはこちらか。……私の名はナヴァ・レヴゾーラ。今は多くは語れないし、信じてもらえるとは思っていないが、少なくとも貴殿方の敵ではないとだけ名言しておこう。隣の大男の名はエーカム・ヌルミネンだ」


 男は目だけを動かし国王を一瞥いちべつしたが、尚も押し黙ったままだ。国王はやや冷静を取り戻したのか、ゆっくりと、噛み締めるように言葉を発した。


 「わしの家名すらも知っている理由は後で聞いてやるとしよう……お主らの装いを見る限り、グラモニッドからの差し金と見受けられるのう。何が望みじゃ。金か?為政いせいの権力か?わしの命か?」

 「どれでもない。加えるなら一方的に要求を飲めという話でもない。……我々が求めるのは情報交換だ」

 「情報交換……?」


 ナヴァの光の無い真っ直ぐな視線と変わらない表情に、国王は少し面食らう。


 「我々はそちら側が間違いなく欲する情報をいくつか持っている。それを提供する代わりに、こちらが欲しい情報を素直に答えて欲しい。ただそれだけの話だ」


 情報。それは魔法が全ての基礎、魔法適性が人生を左右すると言っても過言ではないこの世界で、魔法と同等、若しくはそれ以上の価値を持つものである。6つの国が入り交じり、その中でもヘイグターレとグラモニッド、2つの大国が互いを牽制けんせいし、滅ぼさんと長い時に渡りいがみ合ってきたアプロニア大陸。その二国がここ数十年、膠着こうちゃく状態を続けているのは、互いが互いに攻め手に欠いているからに他ならない。もし今侵攻を開始した場合、敵の勢力は。軍の練度は。相手への打撃はどの程度か。こちらの損失は。他国の介入は。勝算は。情勢を判断するに足る情報が無いことが沈黙の均衡きんこうつかの間の平和をもたらしていることは間違いない。


 「分かっている。国王ともなれば情報の価値は誰よりも知っている。信頼できぬ者とは挨拶も交わしたくない心持ちであろう。……しかし我々には時間がないのだ。だからこのような手荒な真似をしてでも対話の機会が欲しかった」


 仮面のように表情を変えることのなかったナヴァの表情が初めて僅かに曇ったように見えた。先代の父、その更に先代の祖父から常々教えられ、人を見る眼を学んだ国王はそれを見逃さなかった。なにか後ろめたいことが彼らにはある。そこに彼らの付け入る隙があるかもしれない。そう踏んで言葉を継ごうとした国王に先んじて、ナヴァに代わり、ずっと押し黙っていたエーカムが遂に口を開いた。


 「……手荒な真似と侵入の詫びとして一つ、先に情報を出してやろう」


 こちらも感情一つ読み取れない抑揚のないやや低めの声。彼のその次の言葉に、国王以下、誰もが刮目かつもくし絶句した。ヘイグターレが喉から手が出るほど欲しい情報を、どうしても得られずもどかしさ極まりなかった情報を。エーカムは容易く目の前に放り投げてみせた。


 「そうだな、まず一つ。ヘイグターレ魔法軍第一部隊隊長、ディアゲラ・フィスドナークは……生きている」


 

■■■■■


 

 何が起きているのか。これから何が起ころうとしているのか。理解などする余裕は微塵もない。ただ、己の身と、抱き抱えた少女の安全を祈り、息を切らせてもなお走る。


 「はあ……。はあ……。ここまで……来れば大丈夫だろ……」


 長期間家業から離れていたせいか、体重が落ちていたせいか。思ったより体力は落ちていた。それでも人ひとりを抱えたまま、起伏の絶えない天然の迷路を10分は駆け抜けていたであろうサルカーノは、尚も目覚めないままのミリーナを地表に露出した大木の太い根に座らせた。ロアに言い付けられたままひたすら逃げ続けていたら突如地面が揺れ出し、背中の方で見たこともない火柱が上がっていた。それを見て泣きたくなる気持ちを必死に押さえ、死にたくない、何がなんでも逃げようと決意したところまでは覚えている。そこからは方角も分からずとかく走ってきた。


 「ミリーナさん……どうして……」


 まるで眠っているかのように意識の戻らないミリーナ。わずかに胸が上下しているのを見る限り、呼吸はしているようだ。サルカーノもここに来るまでも何度も呼び掛けたが、一切の返事はない。


 「……ん?もしかして、これのせいか?」


 木にもたれ掛からせたミリーナを見て、ルカはふと気になるものを見つけた。ミリーナの左肩と、首の左側。黒い槍のような謎の魔法がかすめた位置。衣服と共に肌が黒く変色している。それだけでない。変色した位置に、弱々しいが青く光る不思議な模様があったのだ。首元にも同じ変色、同じ模様があり───


 「……っ!」


 突如ルカはミリーナから顔を背ける。女性の首を、鎖骨をまじまじと見つめる自分。模様に興味を示したことは間違いないが、女物の整髪料であろう特有の甘い髪の匂いで引き寄せられたのか首の変色部分を触ろうとしていた自分に気付き、恥ずかしさを覚えたからだ。気を失っている異常事態だとしても、見ず知らずの無防備の女性に触れることをルカはすんでのところで我慢した。弟妹が幼い頃であればお風呂の世話をしてやったりなどもあったが、それも久しい昔の話。ライナが大きくなってからは女姉弟の水回りの世話は女同士でさせていた。それゆえ同年代の異性の素肌を至近距離で見つめることなどまず無かったルカには少々刺激が強く、優しすぎるその奥手な性格が羞恥心に拍車をかける。無意識に持ち上がっていた右手を降ろし、弱々しくため息をつき途方に暮れる。どうすればミリーナが意識を取り戻すのか。ルカには皆目かいもく検討がつかない。治癒魔法の存在は知っているが、術式、使い方などまるで分からない。かといって触れるのも躊躇ためらわれる。一体どうすれば。……ん?風の音?あの開けた空間からはだいぶ離れているというのに風なんて


 「こんなところでどうしたの貴方達」

 「ああああああああああああああああああああああああ」


 突如現れたヴェジルに、サルカーノは魂の限り絶叫してしまった。飛音遷ファドミアーノの数倍の速さと言われる移動魔法、刹層滑ガウダ・ギエーナで飛んできて、その途中に偶然ここを通りかかったのだ。もちろんサルカーノは使えもしないし見たこともない。腰を抜かしてわなわなと震えるサルカーノ。それにしばし呆気に取られていたヴェジルだが、サルカーノの手からこぼれ落ちたオーブ、そして何より木の根にもたれ掛かって眠るミリーナを見て我に返る。そういえばキドロア・セルエイクのチームメイトはこの二人だったか、そんなことを思い出しながら。眉一つ動かさずに冗談を交えながら、事態の経緯いきさつへ思考を巡らせる。


 「ちちちちち違うんです!ぼぼぼ僕は!僕は断じて!ミリーナさんを!そんな!何も!」

 「童貞なのね、あなた」

 「どどどどどどどどど童貞!……童貞です……はい」

 「大丈夫よ。貴方にこれほどの魔法が使えるとは思ってないわ」

 「はい……。あ、あの……試験官の少尉の───」

 「ヴェジルでいいわ、ヴェジル少尉で。それにしても……何も得してないわねあなた」


 大いに含蓄のある言い回しに留めてサルカーノにあわれみの言葉を投げかけたヴェジルはミリーナの首元と左肩を交互に触り、眉間にしわを寄せる。ヴェジルにはこの変色と青暗く発光する模様から闇属性魔法であることは分かったが、負傷の痕跡こんせきだけで魔法の種類を推察するのは困難だ。だが、彼がチームメイトにこれほどの危害を加えることはまず考えられない。もっとも加えるメリットが無い。間違いなく第三者、外部の人間の介入と見て間違いない。そしてヴェジルが見上げた方角。激しく炎が立ち上る方向。十中八九その先に彼と、はいる。


 「オーブを持った状態でメンバーを一人置き去りにして別行動している、本来のルールであれば失格なのだけれど……。最早今はそれどころじゃないわね。彼に逃げろとでも言われたんでしょ?」


 サルカーノはコクコクと強く頷き、口をアワアワと動かしながらどうにか言葉を紡ぐ。


 「急に、僕ぐらいの身長の男の子が現れて、ミリーナさんめがけて魔法を撃ってきたんです。咄嗟にキドロア君がミリーナさんを押したから肩をかすめただけで済んだみたいですけど……。でも、それでもミリーナさんは動かなくなっちゃって……!そしたら、死にたくなければ逃げろ、って言われて……ミリーナさんを抱えて逃げて……途中で噴火みたいな爆音がして、ここまで走って来て……何度も呼び掛けても起きなくて……」


 最後の方は声が弱々しくなりあまり聞こえなかったがヴェジルは確信した。やはりあの炎、キドロア・セルエイクによるものだと。そしてこの闇魔法を使ったのはキドロアと敵対している何者かであることも。奇襲をかけるような敵であるならあれほどの派手な魔法で周囲に己の存在を知らしめるような真似をするとは考えにくいからだ。しかしあの青年、これほどまでの力を秘めていたとは───ヴェジルは魔法適性、才能の差をひしひしと感じる。とはいえ、この緊急事態をどうにかして解決するのは試験官の使命だ。ヴェジルは迷わず意を決した。ひときわ真面目な表情でサルカーノに向き合い話し始める。


 「分かったわ、貴方はここにいて。ミリーナを、彼女を守ってあげて。そしてここに今日の試験補佐をしてた人間を呼ぶわ。先輩魔法士の彼らの指示に従って本部に戻ること。今回の仮実習、あなたたちは免除にするから。もし、試験監督のガオニ中尉がいたら"ヴェジルは現場に着きました"と伝えてもらえるかしら」


 ヴェジルの語気と表情に気圧されて、サルカーノはまたコクコクと頷いた。それを見届けるとヴェジルは穏やかな顔に変わり、サルカーノに少し微笑みかけた。サルカーノの表情が僅かに緩んだがヴェジルはそれを見届けることなく、再び刹層滑ガウダ・ギエーナで火の柱へ駆けていく。


 「廈劫炮爛燄ゲオ・ローザス……書物で見たことしかないけど、実際はこんな感じなのね……どちらも無事でいる可能性は低そうね」


 なんの根拠もないが、ヴェジルは何となくそんな予感がした。近づくにつれ次第に何かが焼けたような、焦げた灰の臭いが強まる。だんだんと周囲の気温が高くなり、酸素が薄くなるのを感じた。廈劫炮爛燄ゲオ・ローザスの影響であることはすぐに分かった。刹層滑ガウダ・ギエーナの出力を高める。キドロア青年は、見えざる敵はすぐそこだ。

 

■■■■■



 「でもここまでシャトが苦戦するとは……さすがは噂通りの逸材だ」


 黒緑髪の男は依然としてシャトと呼ばれた異彩眼オッドアイの少年の腕を掴んだまま、穏やかな声で一人ごちた。朦朧とする意識の中、ロアはその姿を眼に焼き付けようと二人を睨むような形相で見上げる。またしても敵か。これはもう打つ手がない、しかしこの姿だけは覚えておこう。そう思ったからだ。


 「恐ろしい目付きだね……。色々と話したいこととかあるんだけど、まずは怪我の治療が先みたいだ」


 そういって男は少年からぱっと手を離し、ロアの元へ歩み寄って、あろうことか治癒魔法の展開を始めた。面食らったロアの警戒が一瞬薄れる。少年は自由になったであろうにも関わらず、一歩も動こうとしない。───否。動けないのだ。


 「ああ、シャトには拘束魔法をかけたよ。聖属性魔法なんて見たこと無いかもしれないね。いやまあそもそも見えないんだけど……えっと、今から君には治癒魔法を施すから。話し半分でも良い、聞いててくれ」


 男は左手に5つの魔法陣を同時展開した。よく見ると一つの指に対し一つの魔法陣が展開されている。ロアにも到底出来ない芸当だ。凄まじい魔法適性の高さと男の使う治癒魔法の脅威の回復力に、ロアは絶句する。


 「うーん、思ったより傷が深いな……。ちょっと時間かかりそうだなあ……。おっと、警戒心を解くにはあまりに自己紹介が遅れたね。俺の名前はサプタ・アルドゥアニ。そして君を危うく殺しかけた狂ってるあのガキの名前はシャト・メングアル。14歳とかだったかな。昔から一緒だから良く覚えてないけど。訳あって共に……あちこち旅してるんだ」


 サプタは慣れた手際で治癒を進めていく。この短時間での情報量が多すぎてロアは理解に時間を要した。

  聖属性魔法は6つある魔法の属性の中でも最も難易度が高いと言われる。その理由は聖属性魔法陣への魔素の変換効率の低さにある。同程度の魔法でも、他の属性と聖属性では魔素の使用量がまるで違う。加えて最大の特徴は、聖属性魔法は"魔法陣が存在しない"こと。厳密には展開されているが、他のどの属性とも違い、可視色を帯びない。無色透明な魔法陣になるのだが、それが途轍とてつもなく難しいのだ。闇魔法こそ文献などから見様見真似みようみまねで習得できたロアだが、聖属性に関してはロアの行動範囲では文献が手に入らなかった。加えて仮に知り得たとしてもそもそも見えないのだから、何が成功なのか、成功したかどうかも分からない。そのため一つも使えた試しがない。ところがサプタの手には五つの見える治癒系の魔法陣。そこに拘束魔法を使っているということらしいので、少なくとも6つの魔法を同時に操っていることになる。シャトと呼ばれた少年をも越える存在と言えるだろう。

 そしてあの少年、シャト・メングアル。サプタの話をそのまま当てはめるなら12歳……?あの異次元の強さを持ってしてわずか14歳前後らしい。ロアの中の常識が一つ、崩れ去る音がした。ロアが14歳だった頃、ディアゲラがまだ第一部隊の中堅、ディアゲラ大尉だった頃。当時のロアはおろか、ディアゲラですらこれほどまでの魔法は使えなかったように思う。この適性の高さは一体どこから来ているのか。ロアはサプタに治癒を施される中、シャトをいぶかしむような目で見る。


 「ねえサプタぁ……。いい加減解いてよこれ。別に僕もう暴れないってば」

 「何も反省してないなお前は。散々暴れてキドロア君を痛めつけた罰だ。今の俺たちにとって彼と戦う必要なんか微塵もないってのに。……それに目立つ行動はとるんじゃないって常々言ってるだろ。今日は何がなんでもお前のことは拘束したまま連れて帰るからな」


 サプタはロアには決してしなかった冷ややかな視線をシャトに刺すように向ける。シャトはまだ何やらぶつぶつと文句を垂れている。治癒が進むにつれてロアの意識もはっきりしてきた。流血も収まり、傷口も大方おおかた閉じてきた。少なくともサプタに敵意はないように見えるし、万一この状況で不意を突いて攻撃を仕掛けても勝てる相手とは思えない上、その不意の行動すら読まれてしまうような雰囲気さえある。力ずくで情報を引き出せるような相手ではない、下手な行動は起こすべきではないだろう。そう判断し、いくつか質問をサプタにぶつけてみることにした。

 

 「……どうして俺の名を?」

 「ああ、そこか。確かに見ず知らずの人間から名前を呼ばれたら気色悪いことこの上ないよね。すまない。……詳しいことは話せないんだけど、君は俺たちにとって大事なお客様の一人だからなんだ」

 「お客様……?近頃の旅人はこんなに軽率に人を殺そうとするのか?」


 ロアはあまりの不自然な言い回しに皮肉と憎悪を込めつつ、やや低めに声を荒げる。警戒心は十二分に保ったままに。


 「それについては大変申し訳ないことをしたと思っている。だが、そうだとも。お客様だ。とても、とても大事なね。なのにこいつはそのお客様をフルボッコにしやがって……いやまあ、シャトにこういう一面があることを知っておきながら管理を怠った俺にも責任があるんだが」


 サプタは治療の手を緩めることなくも、ロアに片膝をつき最敬礼をした。その最敬礼を寸隙すんげき見守ってから、頭を垂れたままのサプタと名乗る男に尚もロアは残りの疑問を投げ掛ける。


 「責任の所在など俺にとってはどうでもいい。それにこんな体でもはや抵抗も出来ん。……そんなことよりだ、そもそもただの旅人がこんな上級魔法を容易く、連続で使えるわけがないだろ。正直に言え。何者だ?目的はなんだ?」


 サプタがゆっくりと顔を上げる。先ほどまでの柔和そうな表情は立ち消え、やや目を細めロアを見返す。


 「まあそんな簡単な言い訳で納得してくれるほど甘くはないよねえ……。でもこれ以上は言えないんだ。今はね。というよりも、恐らく今話したとしても理解できないし信じてくれないと思う。それは君が俺達に対し信頼を持っていようといまいと関係ない程にね。だが、いずれ話せるときが来て、君が全てを理解出来る日が来る、ということは約束しよう。理解した上でその時、君がどういう行動を取るのか───楽しみにしているよ」


 サプタはそう告げるとロアの治癒に意識を戻す。結局彼らが何者であるかは分からない。目的も語ることはしなかった。情報と呼べるような言質げんちは何一つ取れていない。全てを語れる時が来るなどと言われても、初対面の人間の口約束なぞ到底信頼には足らない。多くを煙に巻いた物言いにロアは少しいきどおる。そのロアの様子に目もくれずサプタは治癒を進め、粗方あらかた完治させた。


 「……うん。これで外傷は完治させたかな。表皮の止血も完璧。もう少し休めば立てるようになるはずだ。ただ内部の損傷に関しては見えないし、俺も魔法医師ではないから分からないが……恐らく命に別条はない程度にまでは回復出来ているだろう」


 言われてみて体のあちこちを軽く動かしてみる。サプタの言う通り、外傷は全くもって無くなっていた。肉ごとえぐられ、流血というよりは噴出に近いほど出血していた四肢も見事に修復されており、見た目からはすこぶる健常だ。しかし肋骨や関節などの痛みや動作のぎこちなさは拭えておらず、なにより出血に伴う意識の低下は戻っていないため、すぐに動けるというわけにはいかないようだ。


 「礼はいらないよ。生死の淵を彷徨さまようほどに迷惑をかけたのはこちら、当然のことをしたまでだ」


 サプタはロアのそばから立ち上がり、膝についた草を手で払う。シャトがその様子を見て、再びサプタに話しかける。


 「さーぷーたー。遅いよー。てかこれ解いてよー。もうなにもしないってばー。後あの二人の合流を待って帰るだけでしょー?」

 「そうだな。後は縛ったまま、お前のその減らず口も塞ぐ魔法をかけたら帰るだけだな」


 サプタのシャトをたしなめる口上は緩む気配がない。自分とシャトへの対応の温度差に、ロアは表情に出るほどではないが、ほんの少しだけ笑いが込み上げてきた。しかしそれと同時に一つ、根本的な問題が脳裏に浮上してきた。ロアが口を開く。


 「なあ……サプタ」


 サプタがロアに向き直ったところで続ける。

 

 「シャトは俺の魔法士としての強いオーラが見えるだのと言っていた。本当かどうかは知らんが、確かにシャトは俺を追いかけて、居場所を突き止め、攻撃を仕掛けてきた。だがこれだけ広大で人口も多いヘイグターレで、これだけ入り組んだウレバの森で。どうして俺がいると分かったんだ?」


 シャト曰く、強者の魔法士のオーラが目視できると言っていた。しかし、いくらロアが才能溢れる逸材だといえど、ロアより腕の立つ魔法士はまだまだたくさんいる。最たる例が軍事総官のグアジェドや、部隊長のウォルザ等だ。評判もさることながら彼らの並々ならぬ覇気は一目見れば誰でも伝わる。だがロア並み、もしくはそれ以上の腕を持つ魔法士はヘイグターレに一定数いるだろう。仮にオーラなるものがあるとするならば、その人らのオーラの方が圧倒的に強く、大きいはずである。そんな中ロアのオーラだけを見つけ、位置を特定することは至難の業のように思える。なぜ見ず知らずのロアの元へ迷うこと無くたどり着けたのか。


 「……確かにね。ヘイグターレには君より強い魔法士がたくさんいるだろう。本来であればシャトの能力をもってしても何の手がかりもなしに見つけ出すのは不可能に近い。でも───」


 そこでサプタは僅かに笑みを浮かべる。君は特別なお客様だから教えてあげよう、とわざと少し言葉を区切り、ロアに告げる。


 「もし、我々が誰かの情報を元に君の行動を把握していたとしたら?」

 「……!」


 ロアは喫驚きっきょうした。サプタの言いぐさが事実だとすれば情報漏洩以外の何物でもないからだ。帝国軍、差し詰めこの仮実習に携わる者か。どこかにこの任務の存在を、この二人に知らしめたものがいると言うことだ。得体の知れない彼らに軍の行動を教えることは利敵行為、外患誘致、言語道断。死罪も検討される程の厳罰は免れない。誰だ?一体誰がこんなことを?ロアが思考を巡らす様子を表情から読み取ったのか、サプタが続けた。


 「君が今日、この時間にウレバの森に来ることを知っているのはえーと、仮実習?の存在を知っている人間だからヘイグターレに限る。が、あまりにも多数。絞るのは不可能だろう。でも一人だけいるんだよ。我々にも情報を与えてくれた人物がね───」

 「……サプタ。二人来る。一人はめちゃくちゃ速い」


 ぶすくれていたシャトが急に真顔に戻った。サプタはシャトの方を見やることなく、その声色だけで、あどけない少年の言葉がサプタの気を引くためだけのたわむれでないことを悟る。サプタの顔からも穏やかな笑みが立ち消え、鬼気迫るものへと変わる。


 「……分かった。すまない、キドロア・セルエイク君。どうやら話せるのはここまでのようだ」


 そう言ってサプタはロアから数歩離れると、縛り付けたままのシャトを抱えて、一つ木を選ぶと、その頂点に飛び移る。その瞬間、サプタのいた場所の草が裂け、地面ごと割れるほどの凄まじい爆風と轟音が発生した。ロアは辛うじて両腕を体の前で交差させ、両足で踏ん張って辛うじて風圧を耐ようとする。しかし絶命寸前だった体では踏ん張ることもままならず、押し倒されるように尻餅をつく。風が収まり腕を下ろした時───そこには国王に会うためシュトラメルグ城に向かったはずのグアジェドと、試験会場で合格者たちの帰還を待っているはずのヴェジルの姿があった。目まぐるしい展開の早さと予想だにしなかった人物の登場に、ロアは言葉を失っていた。ただ、驚いているのはロアだけではないようで───


 「ぐ、軍事総官!?どうしてこちらに───」

 「ん?おお、ヴェジルか。久しいな。いやなに、遠く離れた中心部からもこやつの炎と音を見聞きものでな。そして───」

 

 喋りながら首をくいっと曲げ、ロアの方を指すグアジェド。ヴェジルはグアジェドが向かっていることに気づかなかったようで、目を丸くして呆然と立ち尽くしている。グアジェドはヴェジルを刹那一瞥せつないちべつすると顔を上げ、樹木の天辺てっぺんに佇む《たたず》サプタとシャトを睨み付ける。サプタは先ほどロアに見せたような穏やかな表情でも、グアジェドの威圧に怯える様子でもなく、やや笑みを浮かべ飄々ひょうひょうと見下ろす。両者の対照的な表情に、空気は至極張り詰める。暴風の余韻になびいていた枝葉が落ち着いた頃、グアジェドが沈黙の均衡を破った。


 「貴様らか。グラモニッドからの侵入者とやらは」


 ロアすらも恐怖に似た感情を覚えるほど、低く響くどすの聞いた声が空気を裂く。対して問われた側のサプタは至って平常心を保っているようで、身振り一つ変えることなく立っている。サプタとシャトの服装は国王の言う通り、ヘイグターレではあまり見られないような柄と形状をしており、国交がかんばしくないグラモニッドの出の者という説は合点が行く。グアジェドの戦意剥き出しの威嚇行為に、サプタは飄々ひょうひょうとした態度で、あくまで会話のみで応じる。


「おっと、これはこれは……軍事総官もお目にかかれるとは。派手な歓迎をありがとうございます。一部始終をお分かり頂けるよう話せば長くなる故、単刀直入、手短に。今の状況をご覧いただいても説得力には欠けますが、我々とてこれ以上手荒な真似はしたくないんですよね。そちらも大事おおごとにしたくないのは同じだと思いますが」


 サプタの皮肉を交えた牽制けんせいは余裕の表れか、それともそう見せるための外連けれんか。下から見上げる角度では陽光の加減もあり、その表情も、真意も読み取ることはできない。ヴェジルは言葉こそ発しないものの、既に魔法陣をいつでも出せるよう左手を構えている。グアジェドも態度を崩さず険しい表情で、同じく魔法陣は展開しないが、右手をやや構えつつ答える。


 「手短に済ませたいという点においては同意見だ。が、手荒も何も貴様らを消し炭にする用意が出来ているから、大事にならんと思うがな」


 そういってグアジェドはヴェジルへちらっと目配せし、構えていた手の指先に5つの魔法陣を宿らせる。サプタに勝るとも劣らない申し分ない実力だ。いやはや大国の魔法軍の頂点に立つ者と比肩するサプタが異常なのだが。合図を受け取ったヴェジルもすぐさま魔法陣を展開。二人は臨戦態勢だ。一連の流れを眺望ちょうぼうしていたサプタはやれやれ、と嘆息し、空いた左手で魔法陣を展開しようと指先を開いたが次の瞬間、二人から視線を外して魔法陣を消し、険しい表情で左を流し見て舌打ちをした。シャトも大きな溜め息をつき、抱き抱えられたままサプタを見上げて、愚痴染みた口調でこぼす。


 「サプタ……また来たよ。今度はが。ヘイグターレなら大丈夫だと思うってみんな言ってたけどやっぱダメなのかあ」


 サプタは険しい表情のまま僅かに頷いた。もう一度グアジェド達に正中で向き直ると、静かな口調で語り始めた。


 「大変残念なお知らせです。邪魔者が入ってきてますね……。我々としてはまだ話がしたかったのですが」


 そういうとサプタは着ているローブを少し正して、豪風踏ゼル・アヴェルを展開する。飛び去る直前、言い放った言葉は3人にとって到底現実とは思えなかったが、間隙もなく目の当たりにすることになる。


 「ヘイグターレの国民であるあなた方には信じがたいことでしょうが……今から鋼鉄の悪意が空を飛んできますよ」


 そう言うが早いか、サプタは既に南西の方角へ飛び去っていた。グアジェドが逃がすか、と怒鳴りつつ双巨輪炎イドゥ・グラノ・リメリアを撃ち放つ。同じ術とは言え、ロアのそれとは比肩するのも烏滸おこがましいほどはやく、強く、大きな火の玉が飛ぶ。周囲の焼け落ちた草木の灰塵かいじんが再び熱風にさらされ舞い上がる───しかも一つではない、5つ同じものが。五指それぞれに展開された魔法陣が一斉に放たれたのである。サプタを取り囲むようそれぞれ軌道を変え、彼らを飲み込まんとする巨大な火球。わずかに遅かったのか、サプタは体三つ分ほどの距離でそれらをかわした。グアジェドほどの威力、反応速度ではないがヴェジルも風属性魔法、吸層拳昇風ファルゴ・ニバスターを放つ。巻き上がる突風に乗って、5つの火球が猛烈な速度で回転し、熱気と火の手を広げていき、サプタらを飲み込むのではなく──—


 「なっ……!?」


 グアジェドもヴェジルも、ロアも何が起きたのか全く分からなかった。分からなかったが、恐らく炎に包まれたも分かっていないだろう。否。認識する能力を持ち合わせているかも怪しい。二人の展開した魔法が互いに作用し形成された火の渦は、正体不明の飛行体を何百、何千と飲み込んだ。大きさは烏ほど。水爬虫タガメのような爪が正面であろう部分に1対あり、後部には筒状の部品がこれまた1対突き出している。恐らく金属製と思われる表面は鈍く光り、駆動部らしき隙間が見て取れる。規則的に列を為したそれらは、サプタらを追いかける軌道で飛んでいたそれらはことごとくグアジェドが放った火炎に飛び込み、焼かれ、風圧にさらされ黒く変色し、やがて墜落する。数十秒の熱風が収まると、遅れて飛んできた故に被害をまぬかれた生き残りの数十機が、サプタの逃げた方角へ、不快な金属音を残して追いかけるように去っていく。見たことも聞いたこともない物体に、三人はただ呆然と見送ることしか出来なかった。どういう原理で空を飛んでいるのかは分からないが、ほぼ駆動音がしないということは恐らく魔法が関係しているのだろう。かすかに聞こえる金属の擦れる音と共に、サプタと飛行体が消えるまで立ち尽くした後、ハッと我に返ったヴェジルが口を開く。


 「ぐ、軍事総官。あれは……一体……」


 グアジェドは尚も同じ方向を見据えたまま"そうか"と三度呟いた。その後おもむろに振り返るとヴェジルとロアを交互に見やり、眉間にしわを寄せながら告げる。


 「すまない。仕留め損ねてしまったな。やつの力量を見くびった俺のミスだ。しかし……これは、これは厄介なことになったな。この件は至急国王陛下に報告する必要がある。だから悪いが俺はここで戻らせてもらう。ヴェジル。ロアと仮任務のことは任せる。ロア、くれぐれもこの事はこの場にいるやつ以外の誰にも話すんじゃないぞ」


 グアジェドは今一度襟えりを正すと、魔法陣を構える素振りすら見せることなく、王城の方角へ飛び去ってしまった。ロアが声をかけようとした時には既に姿も見えないほどに遠ざかっていた。数百メートルは見通せるほど焼け開いてしまったはずの森林を、被害の及ばなかった遥か先まで。今度はその様子を見ていたヴェジルが代わって口を開く。

 

 「キドロア君、まずは無事で何よりだわ。あれだけの魔法を使っておきながら全く外傷が無いと言うのはどういう訳なのかしら……」


 ヴェジルは尋ねているのかどうかわからない、一人言のように呟く。サプタに治癒魔法を施された、とはとてもじゃないが言えなかったのでロアは押し黙っていた。

 

  「まあとにかく命だけは無事でよかったわ。言うまでもないのかもしれないけど、私がその場に居合わせたとて手も足もでなかったでしょうね……まさか廈劫炮爛燄ゲオ・ローザスを書物ではなく生で見る日が来るとは想像もしてなかったし。さすがはフィスドナーク軍将の愛弟子、噂通りの実力ね」

廈劫炮爛燄ゲオ・ローザスをご存知なのですか」

「ええ、在隊歴はあまり長い方ではないけれど、教官という立場上、図書館などで書物の取り扱いに関する権限を他の隊員より多く持たされてるの。その時に禁止魔法について調べたことがあるわ」

「なるほど……でもさすがに禁止魔法の文献を取り扱うのは職権濫用に該当しないんですか」

「いやな言い方するわね。認められてるから触れるんですもの。有効活用と言ってちょうだい」


 そう言いつつもその間ヴェジルはしきりに何かを考えているようだった。この一連の事後処理か、もしくはグアジェドの言及したことか、あるいはサプタたちのことか。その全部を考えているかもしれない。


 「気になることが多すぎるけれど、まずは先に中尉のところに戻らせてもらうわね。最優先事項として、今の私はこの仮実習の試験官だから」


 ヴェジルもグアジェドに続いて飛び去る体勢に入る。さすがにグアジェドのような陣形の錬成速度ではないが、刹層滑ガウダ・ギエーナが使えるのは一流の魔法士の証だ。


 「私心で言えば、また近いうちに会って色々聞かせてほしいところだけど……とりあえずあなた達の試験は免除、こちら側の不手際で特別合格とする旨を中尉に相談しておく。あの人なら軍事総官の名前を出せばおそらく二つ返事で快諾するでしょうね。あなたはゆっくりのんびりでもいいから周りの生徒に怪しまれないように帰ってきたらいいわ」


 ヴェジルはそう告げて運営本部の方角へと飛んで行った。ロアに目立った外傷がないことから自力で帰れると判断したのだろうか。ロアは試しに魔法陣を展開してみる。サプタは内傷に関しては分からないと言っていたので、内臓や骨の損傷の程度によっては高速移動系の魔法は傷を広げることになりかねない。試しに追風タービルの一段階上、進隼マウベトゥスを試してみる。


 「……ぐっ!!!」


  数十メートル進んだところで魔法を中止した。シャトに抉られた左脇腹と右肩に激痛が走る。左手で陣を錬成したため気づかなかったが右腕はほぼ動かないと言っていい。


 「こりゃそうとうな重傷だな……母さんと違って入院レベルかもしれんな」


 ロアは苦笑しつつ歯を食いしばって一人ごちると、魔法を乗風サジャーヌに切り替え、ゆっくりとウレバの森の中を進む。その間にこの仮実習で起きた一連の出来事を整理することにした。


 まずはあのシャトという少年。おそらくロアよりは5,6歳は年下と見受けられる体躯だった。にも関わらずロアすらも遥かに凌ぐ魔法の実力をまざまざと見せつけてきた。もちろん上には上がいることなど百も承知だが、子供相手に死を覚悟することなど想像だにしなかった。サプタが駆けつけていなければ本当にあの場で死んでいたかもしれない。そしてそのサプタはシャトを完全に制御し、恐怖させるほどであった。不可視の聖属性魔法、指先単位で同時に操られる大量の治癒魔法。どれもが信じがたい練度であった。もしかするとグアジェドに比肩するレベルなのかもしれない。疑問としてはシャトとサプタの行動理念が全く持って逆だということ。そしてその二人が何故か行動を共にしていること。何が目的なのかはほとんどはぐらかされてしまったが、いずれ全てが分かる日が来るとも言っていた。手がかりもない上、現状この体ではどうすることも出来ないのでジタバタせず回復に専念するべきだろう。

そして最も驚いたこと。謎の飛翔する金属体だ。大陸において、鳥類と魔法士以外で空中を移動する物体など存在しない、見たことなどなかったからだ。業者などで空路運輸などはあるが、それも対象物を魔法士が浮かせているだけに過ぎない。人間の手を借りず、単体で飛べるなど前代未聞だった。しかもそれらは一糸乱れぬ動きで隊列まで組んでサプタ達を追いかけていた。これについても何一つわからないが、サプタ達がそれを恐れていることだけは分かる。そして―――


 「いや……そろそろやめるか」


 先の魔法の被害の及ばない、陽光をさえぎるほど鬱蒼うっそうと生い茂った木々の先にエクスリア外壁が見えてきたところでロアは思考を止めた。朦朧もうろうとしていた意識はだいぶ戻りつつあるが、これ以上脳みそを使うと意識が途切れそうな予感がした。目を閉じ、一つ深呼吸をして、思考を帰路の選定に切り替える。今が試験開始から何時間経過したのかわからなかったが、陽光に相応の角度が付いてきたことと、周囲に人間の動作らしき音は一切しないことから、終了時刻が迫っているだろうと判断することにした。小さく受付のテントと受付の広場の目印になっていた大木が見える。ヴェジルが一足先に戻った本部はもうすぐだ。


 「……いつか分かる日が来る、か。もし本当にその時が来て分かったとして、俺は何をすればいいんだろうか」

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