第7話
「ムーア様、失礼致します。フラタニティへ向かうとお聞きしました。私と何人かでお供させて頂きたいのですが、よろしいでしょうか?」
「構わない」
「では何人か私の方で見繕います。ムーア様の方で誰か連れて行きたい者はおりますか?」
「リンを連れてこい」
「かしこまりました」
セリーナは立ち上がり一礼すると、振り返って玉座の間を出て、ムーアを待たせることがないよう急ぎ足でメンバー収集に向かう。
道中、セリーナは頭を最大限回転させてフラタニティでの戦闘を想定し、最適なメンバーは誰なのかを考える。
メンバーを脳内で決めたセリーナ急いで該当の者へ声を掛けに行く。
ムーアの出撃に付いていけるというのは、ここにいる者なら誰しもが憧れること。
急な出撃であろうと、断る者はこの場所には誰1人としていない。セリーナはそれぞれのメンバーに声を掛けに向かった。
◾️
ムーアは1人、足音が響く直線の長い通路を歩いていた。
突き当たりには大きな扉があり、左右にスライドして開いた扉の中は暗がりながらも広大な空間で、ムーアの視界を占める。
明かりがついているかのように、ひたすら歩くムーアがたどり着いた先には巨大な円筒型の飛行艇があった。
全長は400メートル、直径は40メートルほどあろうか、これほどの巨大な飛行艇が果たして本当に飛べるのか?初めて目にする者であれば誰もが考えるほど、圧巻の大きさであった。
その巨大な飛行艇に、わずかな明かりでパソコンを繋いでカタカタとキーボードを打って作業している男の姿があった。
いかにも研究者と一目で分かる白衣と目にメガネを身に付けた男は、タバコを吸いながらパソコンと睨めっこしているが、ムーアの姿に気付くとすぐに咥えていたタバコを携帯灰皿へとしまい、急いで立ち上がった。
「ムーア様!失礼しました!」
「すぐ使えるか?」
「はい。問題ございません。最終チェックも今しがた終えたところです。レムートも整備完了して中に積んであります」
ムーアは男の報告を聞き終え、その巨大な葉巻型飛行艇に乗り込もうとした時に、背後から声を掛けられる。
「ムーア様!お待たせいたしました!」
セリーナが大急ぎで走って来たのであろうことが予想に難くないほど、息を切らしていた。
セリーナの背後には、ハデスルノアを打倒した時に向かったエゴン以外のメンバーだけでなく、新たな者がいた。
「今回エゴンはターラの任務へと共に向かわせました」
セリーナはムーアがするであろう質問を予期して先に答えた。
新たなメンバーで目についたのは、銀色に近い白い長髪に2つの剣を背中に交差して携えている女と、黒髪のセミロングにパーマが少しかかっているかのような緩いながらもふわりとしたボリュームのある髪にセーラー服を身に纏っている女。
だか、セーラー服の女の頭の両脇から角が生えている。
ただの人間ではないことは一目瞭然だった。
「リン」
ムーアはセーラー服を着た鬼のような女を見て名前を言った。
「ムーア様、この度はご同行させていただきます。よろしくお願いします。」
ムーアに精一杯の敬意を込め、その場で片膝をついたリン。
ムーアはリンへと近付き、上から見下ろすような位置なった。
「リン、今回はお前の能力が活かせる場になるだろう。頼んだぞ」
「はい!ありがとうございます!」
一瞬顔を上げ、頬を染めたリンは改めて頭を下げて感謝の言葉をムーアに告げた。
そして、ムーアは背中に2つの剣を携えている女に顔を向けた。
「トワイラ」
「ムーア様、この度は私も同行させていただきます」
片膝をついて頭を下げて下げるトワイラ。
ムーアは、他にも共にくるメンバーがいることに気付いて顔を向ける。
そこには鎧で身を包み、顔部分は耳、目、鼻、口がのみが露出している兜を被っている二足歩行の猫がいた。
「ムーア様、私も今回同行させていただきます。よろしくお願いします」
「リボルもか」
二足歩行の鎧を身に付けた喋る猫リボルは、その小さな体格ながらもしっかりとお辞儀をした。
その姿には愛くるしさを感じる。
すると、ここが自分の出番だとでも思ったかのように、セリーナの肩にと小さいトカゲのような生物が現れた。
全身は紫色でクリクリと大きな黒目をしている。
「今回はリン、リボル、そしてこのデシとの3名を追加させていただきました」
セリーナが言い終えると、白衣姿の男の存在に気付いた。
「アルバール、いたのね。船の状態は問題なくて?」
「当たり前だろ。誰に言ってんだ」
先ほどの丁寧さは一切排除された態度でセリーナに答える。
問題なければ別に構わないわという表情で、アルバールとの会話は時間の無駄だとばかりに視線を外して巨大葉巻型飛行艇に視線を移し、その後にムーアを見た。
ムーアは巨大円筒型飛行艇に乗り込もうと歩き出す。
しかし、一歩進んだところで歩みを止めて振り返る。
「リン、デシ。お前らは先行して急ぎ向かえ」
名前を呼ばれたリンは、驚きながらも姿勢を正した。
デシは名前を呼ばれ、頭上にクエスチョンマークを浮かべたかのように顔を傾けていた。
「かしこまりました。私は何をすればよろしいでしょうか?」
ムーアがリンの側に行き、デシはリンの肩に乗った。
なぜリンとデシだけが先行して向かうのか?その狙いを話した。
聞き終えたリンは納得顔で答える。
デシも言葉は喋らないが、キュッキューと返事をしているかのような鳴き声をあげた。
「委細承知いたしました。それでは急いで向かいます」
リンと肩に乗ったデシは急いで別の小型の円盤型の飛行艇に乗り込み、足早に飛び立って向かって行った。
「俺達も行くぞ」
ムーアの言葉に、全員が一斉に同じ返答を発した。
「かしこまりました!」
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