第2話
「悪を決して野放しにさせない、許さないというミリナ様の強い想いは相変わらずだな」
「そんなお方だからこそ、私は少しでも力になりたいと常日頃思っています」
「お前のミリナ様に対する熱い想いも変わらずだな」
「ちょ!?団長!からかわないでください!」
「ははははは!若いってのはいいな!で、ここからは真面目な話だが、お前はこれからハデスルノアと繋がりのある人間を片っ端から調べろ。あの殺害現場で怪しく感じたことがあれば徹底して調べ尽くせ。どんな細かいことでも逐一報告しろ。細かな情報も寄せ集めたら真実に近づく大きな一歩になり得ることがあるからな」
「了解です。団長はこの後どうされるんですか?」
「俺は独自のルートでハデスルノアを調べてみる」
「では自分もこれから調べに行ってきます」
「頼んだぞ」
■
シュラークはこれからどう調査を進めて行こうかと考えながら町を散策していると、裏路地でうつ伏せに倒れている男の子を見つけて駆け寄った。
この国の貧富の差は激しく、生活が困窮している国民は裏路地に集まっている傾向にあり、スラムと化していた。
スラム街に足を踏み入れたら、死体が転がっていることなど珍しくない光景だった。
餓死、殺害などで死体が転がっても、スラム街と化した裏路地にはあまり人が近付かず、死体を発見し通報するような人は、そもそも治安などというものが存在しないスラム街には住んでいないのが実情だった。
だが、シュラークは倒れている男の子に駆け寄り、上体を起こして容体を確認する。
男の子はすでに呼吸をしておらず、死んでいることが確認できた。
死因を確認しようと体に刺し傷などがないか確認しようとしたところで後ろから声がかかった。
「お兄さん、その子の死んだ理由を知りたいんですか?」
急に声をかけられ後ろを振り返るシュラーク。
そこには今抱きかかえている男の子と同じ年齢くらいの男の子がいた。
だが体はボロボロであちこちに傷があり出血している。
「君、大丈夫か!?」
「大丈夫……とは言えないですけど、お兄さんはその子の死んだ理由が知りたいんじゃないんですか?そうじゃないなら今すぐここを離れた方がいいです。これから僕を殺しにとどめを刺そうと追手がくるので」
「なら余計にこの場を離れられないな」
「いたぞ!」
男の子との会話に粗野な声が割って入る。
3人の男がそれぞれ剣、拳銃、斧を抱えていた。
シュラークは抱えていた少年をに声をかけながら地面にそっと置いた。
「ごめんね、少し待ってて」
傷を負った少年の前に立ち、3人組の男に剣を構える。
「見るからにあんたは騎士だな?邪魔だ、殺すぞ。騎士だからって俺らは容赦しないからな」
「君たちに負けるつもりはない。君たちこそ、ここは引いてくれないか?」
「は?引くわけないだろ。こっちは3人であんたは戦力にならないガキと2人。勝てるわけないだろ!バカか!ははははは!」
3人組は相当腕に自信があるのか声高らかに笑っている。
「君、行って。ここにいると危ない」
「あいつらに勝てるほどお兄さん強いの?」
「少なくとも弱くはないよ。僕の心配はいいから逃げるんだ」
「わ、分かりました」
シュラークの鬼気迫る物言いに少し驚いた少年は走って行った。
「逃がすか!」
拳銃を持った男が逃げた少年に発砲した。
だが、シュラークは発砲された弾丸の軌道上に立ちふさがり、剣で弾く。
「投降するんだ。これが最後のチャンスだ。これ以上は君たちの命がないぞ」
「調子に乗んなよ、バカが!」
剣と斧を持った男2人がシュラークに迫り、剣を持った男がシュラークに斬りかかる。
シュラークは手にした剣で受け止め、華麗にいなしてはじき返す。
男の剣は弾き飛ばされ手元から宙へ飛んでいき、がら空きになった男に斬りかかろうとシェラークは構えるが、すかさず斧を持った男がシェラークに迫り斧を振り落とした。
シュラークは後方に飛び、斧は地面にめり込み小さな隕石でも追突したかのようなクレータが出来た。
男が斧を引き抜こうと振り上げようとしたところで、シュラークは素早く男の胸元に刺突の一閃を入れ、男の胸元を剣が貫通した。
「う……ごほっ…」
斧を持った男の口から血が吹き出たところで拳銃を持った男が何発も発砲するが、シュラークは剣に刺さっている斧を持っていた男を盾のようにして防ぎ、盾となった男の背中に銃弾が何発も食い込んでいく。
拳銃の弾倉に弾がなくなり、空撃ちになったところで剣に刺さっている男を拳銃の男に向かって投げ飛ばした。
拳銃を持った男は盾となった男の死体の下敷きになり、シェラークが止めを刺すために斬りかかろうと踏み込んだ時、剣を持った男が思い切りシュラークに向けて剣を槍のように投げた。
止めを刺す構えになっていたシュラークは想定外の攻撃であり、尚且つ弾丸のような急激な速度で迫る投擲と化した剣を弾くことは不可能と思われたが、シュラークは体を回転させたその勢いに乗せて迫る剣を横薙ぎに払いのけ、自身に投げ飛ばされた剣を弾いた。
そして剣をもっていた男にシュラークは迫り、武器がなくなった男はあまりの強さに後ろ髪を引かれるように後退りした。
「お、お前何は者だ……」
「この国の騎士だ」
一言放った後に、シュラークは頭上から剣を振り下ろし、剣を持っていた男を絶命させた。
そして、残りの拳銃を持っていた男の方を向くとそこには斧の男の死体しかなく、止めを刺す前に逃亡されたようだった。
追手が全ていなくなったことを確認した少年が隠れていた物陰から出てきたのを視界に入れたシュラークは、少年に死体となった男の子や追手について詳細を聞こうとする。
「大丈夫か?」
「は、はい。お兄さん強いんですね」
「まぁな。俺はシュラーク。君の名前は?」
「僕はコリー」
「コリー、色々と聞きたいことはあるから場所を移そう」
頷いたコリーを連れて、目の前が池で周りがピンクの花びらが咲いている木に囲まれた広場のベンチに座る。
シュラークは両手に露店で買ってきた飲み物を2つ持ってベンチに座っているコリーに1つを渡す。
「ほら、飲みな」
「あ、ありがとうございます」
遠慮がちに受け取るコリーの隣にシュラークは腰を下ろした。
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