プロローグ②
エゴンとランディはターゲットの屋敷正門にやってきていた。
「止まれ。何しに来た?」
正門の警備は5人おり、その内の2人がライフルを手にして近付いてくる。
残りの3人は正門の左右と、エゴンとランディに向かって来る2人の後ろに控えるような状態でこちらを見ている。
「おい、聞いているのか?答え…」
言葉を聞き終える前に、警備兵の首がはねられた。
首から下の体が地面に倒れ、切断された顔が離れたところで転がる。
「き、貴様ー!」
たった今絶命した警備兵の後ろにいた男が激情に駆られ、手にしていたライフルを発砲する。
三日月状の曲線を描く斧の切っ先に付着した血を払って肩に担いだ筋骨隆々の男は斧を円状に高速で振り回し、盾のようにして連射されるライフルの弾を防ぎ、銃弾はすべて地面にバラバラと落ちていった。
「ランディ、相変わらず手が速いぞ」
「何を言う!俺がやっていなければエゴンが先に首をはねていただろうに!ガハハハハ!」
冷静に落ち着いた様子のエゴンに対して、ゲラゲラと獣の咆哮に似たような野生味溢れる笑い方をするランディ。
その2人を見て、ライフルを発砲した警備兵だけでなく正門前にいた2人の警備兵も恐怖を覚える。
その内の1人が大急ぎで門の脇にある赤いボタンを押した。
正門の向こうの敷地内にサイレンの音が鳴り響く。
正門前の2人の警備兵も腰に装着してる銃を手にしようとボタンを押さなかった方の兵が腰に右手を伸ばすが右指に感触がない。
おかしい、確かに銃は肌身離さず腰に付けていたはずだった。
疑惑を払拭するために左脇の腰を見ると銃はある。
だが、そこにあるはずの右手がない。
足元に何かある違和感を感じ取った兵は足元を見やった。
そこには切断された右手が落ちていた。
「え?」
その瞬間、視界が急激に下がり地面に寝そべっているかのような視線になり、自分の首がない胴体を見て男は初めて首を斬られたのだと自覚し、その後絶命した。
側にはエゴンが立っており、どうやら先ほどまで居た場所から瞬間移動に近しい速さで距離を詰めていたようだ。
そして、もう1人の正門前の兵を見る。
「ひっ…」
声をあげることができず、やっとの思いで出せた最大限の悲鳴をあげ、尻餅をついて後退りする。
だがこの兵の本能は理解していた。
数秒後には自分は死んでいると。
エゴンは先端が二股に分かれている剣を片手に、兵の腹部に向けて刺し込む。
剣を抜くのではなく、まるで食材を切るナイフのように横に剣をスライドさせ、剣を腹部から抜くと兵の腹部がわずかな接合部分でのみ繋がる形となり、地面に倒れこみ絶命した。
残る1人の兵はランディと相対しているが、こちらも難なく勝敗は決することとなる。
ランディに向けて変わらずにライフルを発砲するも、斧を回して全弾防ぐランディは斧を回しながら兵に向かって歩き、距離を詰める。
「く、来るなー!!」
兵は叫びながら馬鹿の一つ覚えのように銃を放つことしかできない。
「こんなもんか」
ランディはつまらないといった顔して、瞬時に兵との距離を詰める。
一瞬にして眼前に現れたランディに理解が追いつかない兵は、一生理解することなくこの世との繋がりが消えた。
ランディは斧で兵の体を一撃で真っ二つにしていた。
これで正門前の兵は全員消えたかと思いきや、先ほどのサイレンを聞きつけた屋敷内の武装兵がぞろぞろと正門前にやってきた。
エゴンとランディは迎え討とうとしていたが背後から迫る何かに気付き、後ろを振り返る。
そこには屋敷の正門に向かって猛スピードで走ってくる車が見えた。
車は少し離れたところで止まり運転席からセリーナ、助手席からケイリンが現れた。
後部座席のドアが自動で上に開き、ムーアも降りる。
エゴンとランディはムーアの姿を見るや即座に片膝をつき、右腕を水平に胸元に持っていき頭を下げた。
「向こうから援軍が来てるぞ」
エゴンとランディの礼儀正しい佇まいを意に返さないかのように、ムーアはエゴンとランディを見て告げる。
「ただちに殲滅いたします」
「すぐに片付けてみせましょう!」
エゴンとランディはそれぞれムーアに返答した後すぐに後ろを振り返って正門を見た。
大勢の武装兵達がこちらへ走って向かっており、銃器を持っている者らが射撃し始めた。
エゴンとランディは手にしている武器で防ぎながら敵を迎え撃とうとしていたが、1発の銃弾が2人の間を抜けてムーアの元に飛来した。
ムーアは人差し指と中指で飛んでくる弾を挟み、傍へ放って防いだ。
だが、その光景を見たエゴンとランディは激昂な表情を浮かべ敵を見た。
「なんたる不遜、なんたる不敬な行いか!」
静かに、だが次第に言葉尻が強くなる物言いでエゴンは叫び、右目が青色に、左目が赤色へと変わった。
対してランディは普段とは打って変わり、言葉を発することはない。
一見するとムーアに銃弾が飛んで行ったことに何も感じていないように見えるが、ランディの斧を持つ腕に血管が次々と浮き出ており、力を入れていることが分かる。
そして、蟀谷辺りまで浮き出た筋が伸びた時、ランディの顔は今までの飄々とした感じは消え失せ、冷静に、そして確かなら殺意が込められた表情へと変わっていた。
エゴンに続いてランディもその巨躯からは想像できないほどのスピードで敵陣に攻め入った。
2人の勢いに気圧された兵達は、慌てて照準を合わせて発砲しようとするが、あまりの速さに銃口が追い付かない。
無闇矢鱈に発砲して偶然2人に目掛けて弾が飛んで行ったとしても、全て武器で弾かれる。
2人は次々と敵兵達の首を斬り、体を分断させるなどして斬り刻んでいき次々と敵はドミノ倒しのように倒れていく。
2人が駆けた後には死体の山ができあがっていく中、奥からガトリング砲を抱えた巨漢の男と、クナイのような小さな刃を持った細身の男が現れた。
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