第7話 裏切りの体育倉庫
「あのさぁ…」
俺は体育倉庫の汚れた鏡の前でため息をついた。
「鏡が管理局の裏口って、マジでこの展開ありきたりすぎない?」
鏡の表面が波紋を描き、怒ったような合成音声が響いた。
『若造が何を!このレトロ感こそが職人の技だぞ』
『最近の管理局はクラウド移行とか言ってロストテクノロジーを…ブチッ』
突然音声が途切れ、鏡が真っ暗になった。背後でガサガサと音がし、振り向くと綾が段ボール箱を抱えて立っていた。
「ねえ悠人くん、着替え用に買ってきた!」
箱を開けると中から出てきたのは、黒猫の着ぐるみとタコのパジャマ。
「お前のセンスいつも生死の境をさまよってるよ」
文句を言いつつタコパジャマに袖を通すと、鏡が再び光りだした。
『生体認証完了』
『死神見習いNo.1074、付き人1匹。臨時アクセスを許可』
「1匹って…!」
抗議する間もなく、鏡が渦に変わって俺たちを飲み込んだ。
管理局内部は、廃墟となったショッピングモールを思わせる奇妙な空間だった。崩れた看板の間を、蝶の仮面をつけた職員たちがゾンビのように歩いていた。
綾がそっと耳打ちする。
「管理局の本質は《記憶の墓場》。人々が忘れたもの、消したいものだけが集まるの」
ふと見上げた看板が目を刺す。『高坂家 1998-2010』——確かに父が失踪した年の表示だ。
「…おい綾」
喉が渇いた。「ここにあるもの全部、誰かの…」
「捨てられた過去よ」
彼女の手が微かに震えていた。「私もここに捨てられるはずだった」
その時、狂ったような笑い声が響いた。
「ようやく来たねェ!」
天井から逆さまに現れたのは、ピエロメイクの少女死神だった。右手に持ったハサミが不気味に光る。
「先輩…!」
綾の顔から血の気が引く。
「1074号ちゃんが反逆者だなんて♪」
ピエロ死神が舌なめずりした。「管理局のみんな、貴方の《過去》で遊びたがってるわよ?」
彼女がハサミを振り下ろした先に、俺の家族写真が浮かび上がっていた。
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