第4話

 怪獣をたおすのなら、ミサイルだ。

 怪獣映画で見たのです。飛行機からミサイルを飛ばしていました。


 銀色の長細い、筒のようなものを描いて、よく飛んでいくように、最後の部分に赤い線を描きました。

 むくむくとふくれあがったミサイルを手に取って、怪獣に向かって投げつけました。


「当たれ!」

 ミサイルはねらいどおり、ビューンと飛んでいきました。怪獣にぶつかります。

「やった!」

 これでだいじょうぶ。怪獣は消えるはず。


 ところが、ミサイルはぼよーんとはじき返されてしまいました。

「なんでだよ!」

 ケントくんはたくさんミサイルを描いて、投げました。


 しかし、全部はじき飛ばされてしまいました。

 もう、どうしたらいいのかわかりません。ケントくんはがまんしていたのに、涙を流してしまいました。


 涙がぽたりぽたりと、道におちます。そこをピンクのネズミが走ってきました。

 ぬれた場所をふんだとたん、ころんと転びました。

 インクが溶けて、足がなくなったのです。


 これだ、と思ったケントくんは、水てっぽうを描きました。

 転がっているネズミに水をかけました。溶けてなくなり、ピンクのインクだけが残りました。


「よし!」

 思いどおりになりました。

 プールで見たことがある、大きな水てっぽうを描きました。

 それを肩に担いで、怪獣に向かっていきます。


 近づくのはとてもこわいけれど、離れていては、水があたりません。

 怪獣の迫力はすさまじく、足がすくみそうになります。

 ケントくんはがんばって足を踏み出しました。


 水がとどきそうなところまで近づいて、

「えい!」

 引き金を引きました。


 いきおいよく飛び出した水が、怪獣の足にとどいて、左足をどんどん溶かしていきます。

 バランスをくずして、怪獣が傾きました。このままではケントくんが下じきになってしまいます。


 ケントくんは怪獣の後ろに回りました。尻尾に水をかけていきます。

 支えをなくした怪獣は、ついにどーんと倒れました

 倒れてもなお、手を動かして進もうとします。

 ケントくんは水をかけ続けていきますが、全部を溶かすのはなかなか大変です。


 それでもケントくんはがんばりました。

 体を支えている左手を溶かすと、頭が地面に近づきました。

 すかさず、頭に水をかけていきます。


 怪獣が抵抗して、右手をふりかざしました。

 逃げる時間はありません。

 水てっぽうを、落ちてくる右手に向けます。


 水の当たったところから溶けていきます。ケントくんにぶつかる前にぜんぶ溶けるでしょうか。

 間に合わなければ、ケントくんは押しつぶされてしまいます。

 迫ってくる大きな手に、ケントくんは一歩足を引きました。


 こわいのです。逃げたくなったのです。

「わーーーー!」

 だけど、逃げませんでした。


 大きな声を上げて、自分をふるい立たせました。

 自分が退治する。強い気持ちで立ち向かいました。

 そんな時でした。


 ケントくんに迫っていた怪獣の手が、消えたのです。

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