第二章 学園ライフ

第五話 一目惚れって実際あんまなくね?

(一目惚れって実際あんまなくね?)


『急だな、おい。』


(ていうか最近お前の態度が悪くなってきてる気がするんだけど。)


『ペットは飼い主に似るんだよ。』


(ペット……ねぇ。)


『あ?誰がペットだって?』


(お前が言い出したんだろうが。)


本当に最近こいつの態度が悪すぎるんだよなぁ。


(女神にこいつって言ってるお前も大概だけどな。)


なんか親と話してる時もマザコンとか茶化してくるし……。そして最近あんま役にたってない。ただの茶化してくるお邪魔虫状態だよ……。


(それはそうとして一目惚れの件なんだが。)


『うっせぇ黙れ。』


〇ね。


『それはそうとお前自分の中身は前世と変わってないの分かってんのか。』


(え?)


『ティアとしてのお前になったところで中身は根暗陰キャのままなんだぞ。ラブコメなんて夢

のまた夢だろ。』


(ふっふっふ……。前世の俺の陰キャという性格は前世の俺の経験が作り上げた性格だ。で、経験はそこからも増え続けるから性格も変わり続けるハズだ。)


『でも、経験を積むには多くの時間が必要だろ?そんな時間はない。』


(いや、もう積んである。)


『は?』


(それは……。)


コンコンコン。


 ドアをノックする音が聞こえる。



「ティア、入学式、遅刻するわよ。早く家、出ちゃいなさい。」


『「え?」』



いやまてまてまて。確か入学式は明日、日曜日だったはず。今日は土曜日だぞ?



「今日は土曜日だろ?」


「何言ってんのよ。今日は日曜日よ。昨日の夜、ゲームで土曜限定のイベントがあるからって部屋に引きこもってたでしょ?」



確かにそうだった。






――昨晩。



「ティア~。そろそろご飯できr……。」


「土曜限定ガチャ回せるまであと少しだから食べてて~。」


「……もう。」





っていうのが昨日の話。確かに今日は日曜日のはずだ。でもスマホの表示が土曜日だったような……。


 そう思い、スマホを見る。きちんと、「Sunday」と表示されている。


『あ。』


(どうした?)


『てめぇのスマホの曜日表示って英語じゃん?もしかしての話だけど、SundayをSaturdayって見間違えちゃったんじゃね?』


……なるほど。



「ティア……今何時だと思う?」



確か入学式は9時からだけど……。


 俺は素早くスマホの時計に目を落とす。画面に現在時刻8:40と、はっきりと映っていた。


 え、普通にやべぇ。



「ちょ、もう行ってくる!」


「ご飯は!?」


「いらねぇや!」



『警告。朝ご飯を食べないと、体のエネルギーが不足し、日中の活動に支障が……。』


こういうときだけ真面目なのクソうぜぇな。





キーンコーンカーンコーン――。


 ギリギリ間に合った……。


(お前が道中で朝ご飯キャンセルしたときの支障について解説してなければもっと余裕だったんだがな。)


『うっせぇ黙れ。』


それお前の口癖なん?


 奇跡的に先生が遅刻してきたおかげで一日目から説教はなかった。第一印象が大事だからな。


『一目惚れって実際あんまなくね、とか言ってた奴がよく言うな。』


(うっせぇ黙れ。)


『それお前の口癖なん?』


 ……朝ご飯を抜いたダメージは大きいな。なかなか、スイッチが入らないぞ。ていうかなんか怠いし……。



「う……うう、ん……う……。」



やば。なんでこんな一食抜いただけでつらいんだよ。


『それは、この国のご飯には基本的にドーパミン的なのが入ってるからです。それに慣れてしまっているため、なくなったときにつらくなります。』


そうか。この俺の体は昔からここのご飯を食べてるから……。


『ちなみに一食抜いただけで倒れる人もいます。』


やべぇじゃん。


『過去には死に至った例も……。』


こいつ、俺の不安を仰ごうとしてないか……?


『ふふふっ……。』


嬉しそうにしやがって。サイコパスかよ。



「……あのー、大丈夫ですか?」



ああ、天の声が聞こえる……。



「えっと……名前……ティア……さーん?」



はーい……。俺、死ぬのか?



「え?本当に大丈夫ですかー!?」



慌ててる……。天の人って女神様かな……?え?女神?あいつの元か?じゃあ違うな……。優しいワケがない。てことは、現実の声……?



「目!目を開けてください!大丈夫ですか!?」



俺はやっとの思いで目を開ける。



「……よかったぁ。」



そこには、ロングヘアの超が付く程の美少女がいた。


(……かわよ。)


『一目惚れって実際あんまなくね、とか言ってた奴がよぉ。』










 ……いやだってこれ小説だもん。実際の世界じゃねぇじゃん。

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