第六話 題名未定

「え、本当に大丈夫なの?」



俺は黙って頷く。こんな超美少女に相手にしてもらえただけでも転生した甲斐があったってもんだよ。


『人生に満足するの早くないですか?まだ高1ですよ?』


うるせえ。



「まって。パン持ってるから。」



そう言って少女は、カバンの中を探り始める。やがて、袋に入った美味しそうなパンを差し出してきた。



「あ…ありがと…う。」


舞い上がってたから忘れてたけどそういやめちゃめちゃ死にかけなんだった……。1食抜いただけで死にかけるとかガチでどうかしてるだろ。


 そんなことを考えながら俺はパンをかじった。



「美味っ!?」


「そ…そう……?私の手づくりなんだけど。」



え…手づくり……?



『いちいちキショいですね。』


(つか急に敬語?)


『一応誠意を持って。』


(もう手遅れだぞ。)


出会って1日目で手づくりのパンを食わせてくれる少女……。


(まさか、俺と結ばれるヒロインでは!?)


『この少女がこんなクズと結ばれることなどありませんように!』


(お前も結構なクズだな。)



「あの、私、ユウ=ウィンと申します。えっと……。」


「ティア=ラーファスだよ。宜しく。それと、タメ口でいいよ?」


「……わかった。宜しくね、ティアっ……!」



え、かわよ。


『ほんとお前キショいな。』


(誠意どこ行った?)



「はい、今から入学式なんで、体育館に自由席で集合なー。」


「質問です!先生が担任ですか?」


「ああ、担任を務めるルイス=ランドだ。よろしくな。」



男みたいな口調の女の人……嫌いじゃないぜ。


『きっしょ。』


横を向くと、ユウがこちらを見ていた。



「どうした?」


「あの、まだ話したことのある人がティアだけだから隣で入学式出てくれないかなぁって。」


「え、いいのか?」



出会って一日で隣に座ってと言ってくる少女。やっぱり……。


『こんなクズに勘違いされて迷惑だろうなぁ。』


いつもなら真ん中の指を立てかねないところだが、今の俺はとても期限がいいから見逃してやろう。


 そうして俺たちは一緒に体育館に向かった。そして入学式のつまらないPTAの挨拶や、式辞

などはどんどん進んでいった。その間にユウは隣の人と仲良さそうに話していた。打ち解けるの早すぎだろ。さよなら、俺のラブコメ――。


(いやいやあきらめちゃ駄目だ。諦めたらそこで……。)


『乙。』


今とても俺は泣きそうだ。さよなら、俺のラブコメ――。


 と、思っていたところで入学式は終わった。


 俺、ラブコメできんのかな。女神にはああ言ったけども、なんか自信なくなってきたぞ。


『あれ、結局説明されてない気が。』


(え?)


『ほら、経験はもうすでに積んであるから俺はもう陰キャじゃないって。どこで経験積んだの?』


つかタメ口……。


(ほら、俺が目覚めるまでのティアの記憶だよ。)


『ふっ。所詮そんなもk……確かに!!』


こいつノリツッコミ上手そうだな。



「ティア!」



 名前を呼ばれたような気がしなくもなくて、後ろを振り向くとそこにはやっぱりユウがいた。そしてユウの後ろにもまたとんでもない美少女がいるのだった。


 髪はポニーテールで結んでいて、髪と瞳は綺麗な赤色をしていた。



「リラ=スレイよ。宜しく。」



いきなりタメ口でなかなかキツめな自己紹介だったが、こんなことで傷ついていてはラブコメなんかできまい。折れずに自己紹介を返さなければ……!



「えっと、ティア=ラーf……。」


「あなた、”辺境貧乏ド底辺貴族”のことは知ってるわ……っていうより、私の事憶えてないの?」



え?俺たち何処かで会ってたか?ていうか呼び方が酷すぎるだろ。



「ごめん、会ったことあるかな?」


「辺境貧乏ド底辺貴族は黙ってなさい。」



かなりキツくないか?え、なんかしたのかな?ていうか会ったことあるっけ……?


(でもキツめも意外とタイプだったりする。)


『キショって言われに来てる?』


ピンポンパンポーン。



〔えー。先ほどの入学式で新入生諸君に伝え忘れていた。今回の題名は未定だそうだ。コメント欄に題名案を作者が募集するらしいぞ。どんどん書いてくれ。〕



ピンポンパンポーン。


 ……クラスメイトの頭の上にハテナマークが何個も見えた。

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