第3話 風呂キャンは首絞め
『想真:今何してますか?』
彼からのいきなりの連絡があり驚いた。
時間は深夜を回っている。
何もどうも、寝ようとしている最中で、私は少しだるそうにしながらアプリを開いた。
『想真:今何していますか?もし時間や都合がよろしければ通話しませんか?』
丁寧に綴られた言葉に乗せられた、私と話したいという気持ちに私は心が少し綻んだ。
でもしかし、時間は深夜だ。睡眠薬も飲んでしまったしできることなら寝ておきたい。
『私:寝ようとしていました。でも、良いですよ!通話しましょう。』
八方美人な私は、何も考えずに送っていた。
そして、電話に切り替わると、思っていたよりも少しかすれた低い声が聞こえた。
「もしもし、初めまして。想真です。」
「初めまして、なぎです。よろしくお願いします。」
何から話していいか分からず、数秒の沈黙が私たちを包んだ。
「もしよろしければ、一度お会いしませんか?」
相手からの提案に私は二つ返事で承諾した。
寂しいから、1人は嫌だから、誰かと一緒にいたいから、そんな寂しさを埋めたいと思う私には願ってもない提案だ。
「いつお会いしますか?」
今度は私からの質問だ。これは、私の性格上、早めにスケジュールを知っておかないと不安になるからだ。
彼は、少し黙りながら考えているようだった。
「…今からとかダメですか?」
「え?????」
私は素っ頓狂な声を出して、聞き返してしまった。
今からというと深夜の3時で新聞配達の人が動き出す時間になりそうだ。
すっぴんでお風呂もキャンセルしていた私は、脳内でガリレオのテーマを流して時間を計算した。
「今から会って何するんですか?」
オーケー自分、冷静になろう、今は深夜だ。それに相手は初対面だ。どうする…。
「日の出を見に行きませんか?」
わーお、なんて素敵でロマンティックな回答だこと。
ひとり寂しく、次の日に何もすることがない私にはいい機会だと思い、行きますとだけ伝えて人生で一番素早い速度でお風呂を終わらせた。
メイクは濃いめ、パウダーパタパタ、シャドウマシマシで。
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