episode03:ピンクのリボンの祝福

「楓くんの居場所もここ」


 念を押すように繰り返す。彼女が満たされていればそれで良いと思っていた。

 だけど彼女に受け入れられ、求められている。この状況に心臓がぎゅっと締め付けられる感覚に陥った。

 彼女の方へ向きを変えるために、拘束するように添えられた手を剥がし、握る。

 引っ張るように手を繋ぐことは何度があったがこうして意識して握るのは初めてだった。手のひらで感じるの彼女の手は小さくて、温かい。


「……っ」


 体を翻し、彼女へと向き変える。手を握ったまま。

 振り返ると彼女は頬を真っ赤に染め、口をぎゅっと噛みしめていた。

 予想外の表情に「え?」と言葉が飛び出す。


「すぐに顔を見るのはマナー違反です」

「え? あ、はい……」


 と言われてもどうしたらいいか分からず、とりあえず視線を横にずらす。これで彼女が満足するか分からないが、何も言わないので今回は正しい行いができたかもしれない。


「嫌じゃなかったですか?」

「え?」

「後ろから、抱き着かれて」

「……別に。君ならいい」


 そっか、と彼女は小さく呟く。それから「あのね」と気まずそうに口を開く。


「あの時、てっきり告白されたものだと思っていました」


 ちょっと自信過剰だったかな、と彼女は自身の判断の誤りに笑う。

 でも奥手な楓くんが接近するんだもん、もしかしたらって思っちゃうのも無理はないよね? とその考えに至った理由を述べている。話すうちにいつものペースを取り返したのか、声色は明るくなっていた。視線を元に戻すと頬周りの赤みも引いていた。


「勘違いさせるなんて本当、楓くんはわるい人」

「勘違いじゃない。僕は――」


 僕の言葉を遮るように強い風が吹きつける。

 いつも彼女の髪を結んでいるピンク色のリボンが、僕たちを祝福するように飛び去る。

 この機を逃したら、もう言う機会がないかもしれない。そう信じて関係を進めるのに躊躇する僕の背中を押す。

 目の前の好きな人を見つめ、口を開いた。


「好きだよ、

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