第3話 命令
「遅かったか……」
「みんなやられてしまったみたいっすね」
二人の前には多くの死体が横たわっていた。それと同じくらいの軍用ドローンの
「敵も全滅ってことなのか?」
「たぶん……」
二人は警戒しながらも生存者がいないか手分けして探す。コンクリートの建物の外にも中にも生きている人間、稼働可能な敵の兵器ともに見つからなかった。
「先輩、ここって原子力発電所っすよね」
「ああ、この国の最先端技術が
「でも、発電所って……」
「人工知能のやつらが欲しいもの。喉から手が出るかどうかは知らんが、それは電力だ。ある程度までは人間さまのトップがこいつを交渉材料に連中を
二人は
「もしかして……、やっぱり俺達もうお花見は無理なんすかね……」
若者が何かを
「ん? どうした、そんな暗い顔をして?」
「だって、あれでしょ。この原発ごと爆破して、
「おおっ、知らねえ内にちゃんと自分でものを考えられるようになってんじゃねえか。感心、感心」
「はあ……」
歩きながらため息をつく若者をにこにこして見ている男。
「そうなんだよ。上からはその通り、人類の未来のために
「えっ? どういうことっすか?」
中央管理室と書かれたプレートの
「げっ!? それって、
「いやいや、レプリカだって。本物の目玉なんて気持ち悪くてポケットにいれてられっかよ。それに
「ああ、なんだ……」
「ここは
男がその
「そうそう、これこれ」
「何すか?」
「ただの回線コンセント」
「へっ?」
「まあ、この施設で唯一のだけどな。緊急用で使ってねえが、奴らはこのすぐそこまで触手を伸ばしてやがる。で、こいつを」
男はさっきのレプリカの眼球を再び取り出すと、その背面をいじる。カチャッと音がしてプラグが現れた。男はそのプラグをコンセントに差し込む。
「ふふっ、これで逆転勝利だぜ」
「何を……」
「こいつは先生の最高傑作だ。ああ、先生は俺の大学の
「逆転勝利って?」
「いたって単純。ウィルスさ。もともとはウェブ上を
「もう、終わりなんすか? これで、世界は救われたとか……」
「ああ、何か? 人類もウィルスには苦しめられたろ? やつらは世界規模のパンデミックは経験してないし、どう頑張って対応したところで計算上こっちが最悪でも一手差で勝つぜ」
「い、いえ……。ならいいんです……本当に……良かった」
「そうだ、ここに来る途中で桜の木らしいのが見えたんだ。春の花見のためにちょっと確認にいかねえか?」
「あっ、は、はい! 喜んで!」
「あとは酒だな」
「ああ、それなら実家が酒屋だったんで、バレないように隠してるのがあるっす!」
「おっ、そりゃいいねえ」
二人は立ち上がると楽しそうに肩を組んで廊下を引き返していくのだった。
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