第2話 羽
「最悪だぜ……」
「ええ……。あれが
「ああ、そうだな」
既に三人の仲間を失っていた中年男と若者は、もう日が沈み月明かりだけが頼りとなった目的地への途中、
身長5メートルはある羽を背に生やしたその姿は、宗教画に多く登場する青い衣を
「本当に最悪だ。連中には宗教観の
「情報どおり指の数がおかしいっす……」
「いつの時代の生成イラストだよ。人間さまがいねえと自分で修正もできねえのか。それに聖母に
「先輩って、そんな信仰心の
「ああ、ふつうに家は仏教だったと思うが……。クリスマスも正月の
「はあ……。えっと、アレが何かいま
「そうだな。絶望の
「そうっすね。救われねえっす……」
「よし、見つけたぜ。あの地面を
若者と話しながら聖母の足元を
「りょ、了解っす!」
若者も聖母めがけて走り出す。
――ドウシテソノヨウナコトガアリエマショウカ、ワタシハオトコノヒトヲシリマセンノニ。
ぐるぐる同じ場所をまわりながら
――ワタシハシュノハシタメデス。オコトバドオリ、コノミニナリマスヨウニ。
若者がもうひとつ破壊した。
――ナゼコンナコトヲシテクレタノデスカ。ゴランナサイ。オトウサンモワタシモシンパイシテサガシテイタノデス。
男が最後のひとつを破壊して、
――ブドーシュガアリマセン。
「はあ!? 全部潰しただろうがよ!」
「こ、声がまだしてる! ヤバいっすよこれ!」
――ナンデモコノヒトノイウトオリニシテクダサイ。ガッ、ガガガ、ザーーーーッ。
「やべえモードチェンジだぞ。このあと衛星兵器からビームが降ってくるんだ」
「に、逃げなきゃ、先輩!」
「いや、無理だ半径数キロ圏内が灰になる……」
――ワタシノホカニカミガアッテハナラナイ。アナタノカミ、シュノナヲミダリニトナエテハナラナイ。
「おいおい、それはモーセの十戒だろうがよ。無茶苦茶じゃねえか! う、うわっ!」
20メートルほど先の
――シュノヒヲココロニトドメ、コレヲセイトセヨ。アナタノチチトハハヲウヤマエ。
「わああっ!」
背後にあった神社が吹き飛んだ。爆風で転がる若者。
――コロシテハナラナイ。カンインシテハナラナイ。
爆発音とともに大きな池の水がすべて蒸発した。
「見つけた! 上だ! あのホバリングしてるやつが発声機で通信機だ! 両手を組んで構えろ、そんで合図したら俺を跳ね上げろ!」
「は、はあ!? 何を? へっ?」
男は離れた位置にいる若者めがけて走り出す。その右足が若者の組んだ両手に乗る。
「いっけえ!」
「ぬうおーーっ!」
若者が
「羽なんか無くったって人間は飛べるんだああああっ!」
高く浮かんだ男は精一杯伸ばした右手で何かを
――ヌスンデハナラナイ。リンジンニ……、ガッ、ガガガ、ザーーーーッ。プツッ……。
二人は黙ったまま動かずにあたりを
「助かったな」
「ええ……。でも人間って
「おうよ! 何事も気合いで何とかなっちまうもんだ。まあ、連中には理解できないだろうけどよ」
「そうっすね。でも、俺にはちょっと無理っすね」
「そうか?」
二人は立ち上がると目的の場所を目指して再び歩き始めるのだった。
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