第10話 鉄砲鍛冶への旅立ち

専属軍人たちが着実に力をつけていく中、信長は新たな課題に取り組んでいた。それは、専属軍人たちに持たせる武器の選定だった。


ある日のこと、信長は一真を城の一室に呼び出し、問いかけた。

「一真、俺の軍をさらに強化するにはどうすればいい?」


一真はAIを起動し、信長の問いを入力した。しばらくの静寂の後、AIが冷静な声で応答を始めた。

「現時点で尾張軍を飛躍的に強化する方法は、新たな武器の導入です。その候補として、鉄砲が最適です。」


「鉄砲だと?」

信長はその言葉に興味を示しながらも、訝しげな表情を浮かべた。

「俺も噂は聞いたことがあるが、どれほどの力を持つものなのか。」


AIは画面に鉄砲の特徴を映し出しながら、続けて説明を始めた。

「鉄砲の利点と欠点を以下に示します。」


鉄砲の利点

1. 高い攻撃力

鉄砲は弓や槍を凌駕する威力を持ち、甲冑を貫通する力を有します。

2. 遠距離攻撃が可能

弓よりも射程が長く、相手に接近される前に制圧できます。

3. 習得が容易

弓術に比べて短期間の訓練で扱えるため、多くの兵士に配備が可能です。


鉄砲の欠点

1. 雨や湿気に弱い

火薬が湿気を吸収すると発砲できなくなります。雨天では使用が困難です。

2. 装填速度が遅い

一発撃つごとに弾を装填する必要があり、連射ができません。

3. 高価で希少

日本国内では製造技術が発展途上のため、鉄砲は非常に高価で、入手が難しい武器です。


信長は画面を見つめながら顎に手を当て、思案するように言った。

「雨に弱いか……。尾張のように湿気の多い土地では、常に使えるとは限らないな。」


一真はその言葉に頷きつつも提案した。

「確かに雨天では使えませんが、晴天時の戦場では圧倒的な力を発揮します。また、適切な戦術を組み合わせれば、装填の遅さも補えるでしょう。」


信長の目が鋭く光った。

「なるほど。この鉄砲という武器を手に入れれば、俺たちの軍はさらに強くなるというわけか。」


鍛冶職人の選抜


信長は早速、鉄砲の製造技術を学ぶために、信頼できる鍛冶職人を派遣することを決めた。城下に腕利きの職人たちを集め、計画を説明する。


「鉄砲という武器を尾張で作るために、堺という町で技術を学ぶ必要がある。これに志願する者はいるか?」


職人たちは顔を見合わせていたが、その中の一人、村上弥三郎が前に出て声を上げた。

「お館様、私をお送りください。この新しい技術を学び、尾張の未来に貢献したいのです!」


信長は弥三郎の勇気を評価し、肩を叩いた。

「よく言った。その覚悟に応えよう。俺が支えるから、必ず技術を持ち帰れ。」


堺への旅立ち


弥三郎は信長から旅費と推薦状を受け取り、堺へと旅立った。堺は鉄砲鍛冶の中心地であり、ポルトガル人を通じて鉄砲の技術が伝わっていた場所だ。


堺に到着した弥三郎は、鉄砲鍛冶の親方の元を訪れた。親方は初めて見る訪問者に眉をひそめながらも、信長の推薦状を見ると態度を和らげた。

「信長殿の使いか。よかろう、技術を教えるが、簡単なものではないぞ。」


弥三郎は頭を下げ、学ぶ決意を示した。

「お手を煩わせますが、どうかご指導をお願いいたします。」


鉄砲鍛冶の試練


弥三郎は親方の指導のもと、鉄砲の製造工程を学び始めた。

• 銃身の鍛造

炎で鉄を熱し、細長い銃身に仕上げる工程は、緻密な作業が必要だった。

• 火縄と火薬の調整

火縄の燃焼速度や火薬の調合が、鉄砲の性能を大きく左右した。


「鉄砲はただ作ればいいものではない。銃身の精度や火薬の調整が命を分ける。」

親方の言葉に弥三郎は何度も頷きながら、その技術を吸収していった。


信長の準備


堺での技術習得が進む中、信長は尾張で鉄砲を導入する準備を進めていた。一真はAIを使い、鉄砲を効率的に運用するための戦術を提案した。

「鉄砲は雨天時に使用できないため、戦場での使用タイミングを選ぶ必要があります。また、複数の兵士が交互に発砲することで装填時間の弱点を補えます。」


信長は頷きながら、鉄砲隊の編成計画を練り始めた。

「雨が降れば槍や弓を使い、晴れた日は鉄砲で敵を圧倒する。こうすれば、どんな状況でも対応できる軍が作れる。」


新たな武器の到来


数ヶ月後、弥三郎が堺から尾張に戻ってきた。彼の手には鉄砲と設計図が握られていた。信長はそれを手に取り、満足げに言った。

「これが鉄砲か……。これで尾張を守り、攻める力が手に入る。」


未来を切り開く力


鉄砲の導入は、尾張の軍事力をさらに強化するものだった。しかし、この新しい武器をどう活用するかは信長の腕にかかっていた。


信長は鉄砲を手にしながら呟いた。

「これで未来が変わる。この鉄砲を使いこなせば、誰にも負けぬ軍が作れる。」

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